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リビングデッド ~生活保護を悪用してお気楽な無敵生活~  作者: nandemoE
オムニバスパート

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統失ツイフェミ女(8)

・入院しても生活扶助の基準額は下がる

・生活保護でも返還金等を求められることがある


 安岡と加奈子が市役所に戻ると、ちょうど備前が正面入り口から歩いて出てくるところに出くわした。


「うん? 安岡君に小娘とは珍しい組み合わせだな」


「実は、ちょうど今、例の統失女を入院させてきたんです。備前さんは何か御用があって市役所に?」


「あぁ、たった今、新しい養分の申請を済ませて帰るところだ」


「これ自席に戻ったら仕事が積まれてるやつだ……」


 安岡は肩を落とした。


「で? 安岡君のほうは上手くいったのか?」


「いえ、まぁ……」


 手柄を立てた加奈子の手前、歯切れの悪い安岡を押しこくるように加奈子が前に出る。


「聞いてよパパ! 安岡さん、全然役に立たないの! 酒匂さんを怒らせて家から締め出されちゃって! 代わりにアタシが連れ出したんだよ~?」


 それを聞いて軽快に笑う備前。


「ははは、ダメじゃないか、安岡君。こんな小娘にいいように言われちゃあ」


 安岡はさらに肩を落とした。


「でも実際あれは笹石さんだったから連れ出せたんだと思います。笹石さんは特に相手の懐に潜り込む能力がケタ違いに高すぎるんですよ……」


「ほう? 詐欺師に向いてそうな能力だな。アホじゃなきゃ、だが」


「ひっど! パパ酷い!」


「そうですよ! 今回だって笹石さん、本当は備前さんのために俺に協力してくれたんですからね?」


「あ、いいよ安岡さん。そういうの言わなくても……」


 安岡を加奈子が止めたが、すでに備前は首を傾げていた。


「俺のため?」


「ええ。笹石さんの本当の目的はSNSで炎上した備前さんの名誉挽回だったんです」


「どういうことだ?」


 首を傾げる備前の顔を見て、恥ずかしそうに酒匂のスマホを取り出して見せる加奈子。


「あのね、これ、あいつのスマホ。これであいつのアカウントを乗っ取って、あいつ自身にパパが本当は悪くなかったって言わせるんだ。本人になりすまして間違いを認めれば炎上も収まるかと思って……」


「そうか……」


 備前は少し呆気に取られた顔をしたあと、珍しく頬を緩めて加奈子の頭に手を置いた。


「まったく……俺ならノーダメージと言ったのにお前は……だが、無頓着な俺に代わってくれたのか。どうやら世話になっちまったみたいだな、礼を言う」


 備前はいつものように頭をグシャグシャと撫でず、加奈子も少し嬉しそうに頬を赤らめた。そんな二人の様子を安岡は微笑ましそうに見ていた。


「なんかそうしてると、お二人は本当に親子みたいですね」


「なに言ってんだ安岡君」


「いやぁ。実はさっき帰りの車の中で笹石さんから備前さんの弱みを聞こうとしましたらね、見事に断られちゃいました。それをこうして親子みたいに見せつけられると、ああ。ここからは崩せそうもないな、と実感したわけですよ」


「なんだ安岡君。まだ俺の財産探しを諦めてなかったのか?」


「当たり前じゃないですか。不正は絶対に許さない。そう備前さんに教わりましたからね!」


「ははは、頼もしい教え子たちだよ」


 備前は笑った。


「ま、いつかお前らが手を組んで俺を出し抜こうってんなら、そのときは俺も素直に倒されてやってもいいかな?」


「ダーメ! そしたらパパ、絶対変なこと言い出すからダメ! そんなのアタシが許さないから! 蹴るから!」


「ははは。もう十分にお二人の信頼関係は伝わりましたよ」


 安岡は微笑ましそうに言った。


「それで、笹石さんはこのあとどうします? 一度、窓口で今後の話でもしようと思っていましたが、ちょうど備前さんも一緒になったところで、今日のところはともに帰宅されますか?」


「うん! そうしよっかな。あいつのことはもう安岡さんだけでもなんとかなるでしょ?」


「ええ。一番の難関、入院はおかげさまでクリアしましたので、あとの事務仕事は俺のほうでやっておきますよ」


「一応、このあとの簡単な流れを聞いておいてもいーい?」


「ええ、いいですよ。今後の見込みですと、酒匂さんはまず生活保護受給が決定されると思います」


「まぁ、財産も収入もゼロだろうからね~」


「ですが、将来的に生活保護ではなくなると思います」


「えー!? どうして~?」


「備前さんが最初におっしゃったとおりに、あのあと色々調べてみたんですが、なんと酒匂さんも約十年前のアウトリーチに遡って初診日が認められることがわかったんです!」


「つまり、通常は初診日から一年六カ月以上経過していないと障害者年金の申請ができないけど、初診日が十年前ってことになればすぐに申請できるってことなんだね?」


「はい。しかも直近では年金も未納でしたから本来なら受給権は得られなかったところですが、十年前を基準にしたところ、なんとまだ元気だった頃の父親が代わりに年金を払っていてくれていたので障害年金が貰えそうなんです!」


「すごっ! よかったじゃん! ……でも障害年金って生活保護を脱却できるほどたくさんもらえるの?」


「いやぁ、実際は障害年金だけではギリギリってところなんです。障害年金って一級と二級があって、年間の支給金額は一級が約99万円、二級が約79万円、月あたりだとそれぞれ八万円と六万数千円になりますから、それだけだと生活保護になる場合が多いです」


「じゃあ、どうして酒匂さんは生活保護を抜ける見込みなの?」


「入院したからですよ」


「あ! そうか、入院基準に下がるんだ!」


「そうです。酒匂さんは仮に退院しても持ち家で家賃がかからないので、主に生活扶助費と比べて収入が多いか少ないかですよね? 障害加算なども考えますと、要否判定ではざっくり月に収入が十万円より多いか少ないかになります。なので普通なら障害年金だけでは足りずに生活保護になるんですが……」


 そこで安岡は加奈子を試すように見る。


「入院基準は月額2万3000円ぐらいに下がる。障害等を考えても要否判定ではざっくり五万円より多いか少ないかに変更されるんだ! これなら障害年金でも余裕で基準額をオーバーしてることになって生活保護が要らなくなる!」


「そういうことです! ちゃんと貰うべき年金をもらって、然るべき病院や施設に入って、ちゃんと金銭を管理してもらえれば生活保護を必要としない人も多いんですよ」


「そうか……同じように施設入所したキモオジママのケースだと、そもそも無収入だから要否判定の基準がいくら下がっても生活保護のままだけど、こうやって状況を変えてやることで生活保護を抜けさせられる人もいるんだ!」


「独立を促していくのも俺たちCW(ケースワーカー)の仕事ですからね。なかには『人権ガー』とか『自由な暮らしガー』なんて文句を言う人もいますけど」


「あっは! 生活保護者の分際でホザいてんじゃねぇぞって感じ?」


「そ、そこまでは言ってないんですけどね……?」


 加奈子はケラケラと笑い、安岡は苦笑いをした。


「それじゃあ今回は、生活保護費も一時的な支出で済むことになるんだね!」


 そう加奈子が言ったときだった。


「それはどうかな?」


 それまで黙っていた備前が口を出した。


「え? パパ、それはどういうこと?」


「そろそろ小娘にも教えておいてやるか。……実はCW(ケースワーカー)の仕事はなにも生活保護費を渡すだけじゃねえってことを」


「ななな、なんだって!?」


「ただでさえ少ねぇ生活保護費から、少しずつ福祉事務所に金を返してる保護者もたくさんいるんだよ」


「せ、生活保護費を返すの!?」


「ああ。生活保護者にとっては嫌なもの……これを返還金または徴収金という」


「ど、どうしてそんなことに……」


「例えば今回のケースでは、ちゃんと十年前から受給権のある障害年金を貰っていれば、最初から生活保護は不要だったことになるよな? それなのに、それを怠っていたから生活保護を貰ったことになる」


「そういえばそうだね~」


「だからそのぶんは金が出たときに返せって話になるんだ。それまで支払った保護費の総額と、貰った年金等のいずれか少ないほうの金額をな」


「え? ってことは、最悪だと支給された年金を全部返せって言われることになるの?」


「そうだ。特に年金なんて数年遡って支給されることもザラにあるからな。軽く百万円を超える返還金を請求されることも多くあるんだ」


「そんなの生活保護者に払えるわけないじゃん!」


「いやいや笹石さん、そこは返還金請求の前にまとまって年金が入金されるんですから、それをそのまま福祉事務所にスライドさせるだけなんですよ」


「な、なぁんだそれなら……」


「だが一方で、やっぱり生活保護者はつくづく人間じゃねぇんだと思う奴らが出てくる」


「うえっ!?」


「そのまとまった金を返さなかったり、逃げたり、パーッと使っちまったりする奴もいる……ほれ、小娘も何かそういうクズに心当たりがあるんじゃねーのか?」


「そうだ、そうだった……生活保護者が基本クズだっての、アタシもポチの件で思い知ってたはずなのに……」


「そういう奴らには毎月の保護費からいくらずつ返済しますって念書みたいなものを一筆書かせて、毎月の生活保護費から天引きしていたりするんだ」


「生活保護費が減るけど、それって自業自得じゃん!」


「そうだな。ほかにも隠していた収入が見つかったり、福祉事務所がミスって過大に支給してたり、様々な理由で返還金等が発生するんだが、生活保護法ではそれが大まかに悪質かどうかで区別されていて、普通のケースが第63条返還金、悪質なケースが第78条徴収金と言われている」


「ちなみに悪質な第78条徴収金のほうになると、本来の金額にプラスαが加算されて徴収される可能性もあるんですよ。だから備前さんや笹石さんのように悪いことばっかりやっていると、バレたときにぃ……」


「ひいぃ~! パ、パパぁ~!」


 加奈子は慄いて備前にしがみつくが、備前は軽く笑い飛ばしていた。


「ははは、安岡君。そういうのは悪事を見つけてから言うもんだ。大丈夫。俺はそっちの手の内をすべて知ってるからな。見つからんよ」


「そんなことを堂々と言わないでくださいよぉ……」


 安岡は肩を落とした。


「ははは。ま、話をまとめるとだな。酒匂はあとで生活保護費を返すことになるから、言ってみれば福祉事務所は一時費用を建て替えただけで、実質保護費の負担はないってことになるんだよ」


「はえぇ~。そう考えると本当に生活保護って、手を尽くしたあとの最後の手段ってことになるんだね」


 加奈子は深く納得する。


「しかし今回は備前さんに助言をもらって正解でした。この障害年金の存在を見落としていたら、この先数十年も彼女に生活保護費を払い続けることになっていたんですから……酒匂さんはまだ四十代ですし、あと四十年は生きるとして、毎年の生活保護費を医療費込みでザックリ二百万円くらいだと仮定すれば、それだけで約8000万円の公費をムダに垂れ流してたことになりますもんね」


「ははは。ならその浮いた8000万円を俺が貰ってやってもいいんだぞ?」


「ヒャッハー! パパ! とりま今日から毎日焼き肉行っとく?」


「ほら! そういうとこなんですよ! 笹石さんが真似をするから、備前さんはそういうの本当にやめてくださいよ~……」


 安岡はまた肩を落としたのだった。



 いつもお読みいただきありがとうございます。


 さて、この「統失ツイフェミ女」で作品の評価が落ちました。

 しかも私のほかの作品も巻き込んで・・・ほかのはアイタタタ・・・。

 最初から何度も繰り返してますが、この作品は私自身の主義・主張ではありませんよ~。


 元々この作品は評価度外視なので構わないのですが、むしろ逆に、この現象が作品内容の外側、リアルの面白さをプラスしてくれてるな〜と思ったので報告です(笑)

 そういうトコなんです(笑)


 とはいえ特定の属性を叩く目的はないので、次はちゃんと平等に男を叩きますね!(笑)


 ここで一句、男女平等川柳を残してみましょうか。

「キモヲタに こどおじチー牛 弱男かな」

 男女共同参画などのキャッチフレーズなどにも是非ご活用ください!


 あ! もうひとつ!

 昨日わたくし、別の作品をキンドル出版しました。

 このページ下部のランキングタグ欄にもリンク貼っておきますのでよろしくお願いします!

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