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リビングデッド ~生活保護を悪用してお気楽な無敵生活~  作者: nandemoE
オムニバスパート

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見つかりにくい口座


「は~い! パパしつもーん!」


 備前による講義中、加奈子が大きく手を挙げて言った。


「なんだ?」


「収入を隠すにはどうしたらいい?」


「お前、クズだな」


「パパの弟子です」


「いい顔つきになったな」


「イェア!」


「前にも言ったが、まぁリアルな話、現金のやり取りならほぼバレん。逆に口座を通すとほぼバレる。あとは現金だからといっても給与とかだと源泉徴収票など他のところからバレる」


「バレるとどうなるの?」


「次の保護費から引かれたり、生活保護法第63条返還金として請求されたり、悪質だと第78条徴収金として最悪は得た額より多めに徴収される。そして繰り返すと口頭指導、文書指導となり、やがて聴聞会に呼び出された挙句、生活保護を廃止にされることもある」


「こわっ!」


「そもそも収入があれば生活保護者には申告する義務があるし、正直にやらにゃあならん。嘘がバレた時点で死刑でもいいと俺は思っているがな」


「そりゃあわかるけどさ~。でもパパだって隠してるんでしょ? ズルくない? どうやってんの?」


「別に特別な知識なんか必要ねーよ? 一般的に多くの人が知っている情報を組み合わせるだけだし、それができる奴だけ知ってりゃいいだろ」


「え~! 教えてよ~!」


「ふむ……あまり頭の悪い奴らに知れ渡るのも色々と問題がありそうだからな。必要なパーツだけ教えてやるか。逆に言えば、これで理解できなきゃ諦めろ」


「が、がんばるよ」


「それから、もしわかってもあまり積極的に人に言うな。法律で禁止されてることじゃねーが良くねぇことだから」


「わかったよ」


「さて、じゃあ見つからないよう口座を作るには、相手がどうやってこちらの情報を探してくるかを考えていくわけだが……小娘ならどうする?」


「う~ん……銀行に聞く?」


「なんて聞くんだ?」


「この人の口座はありますか~? って。一番最初にパパが安岡さんに言ってた。第29条の調査権を使って調べてみろって」


「……良く覚えてんなお前。逆に気持ちわりぃくれぇだ」


「言い方酷過ぎワロタ」


「まぁいい。じゃあ、その『この人』とやらはどうやって指定するんだ?」


「どこどこの誰々……って、そうか! 住所と氏名だ!」


「本当にそれだけで特定できるか? 近所で同じ名前の奴がいたらどうすんだ?」


「う~ん……じゃあほかに生年月日とか? お役所なら知ってるでしょ?」


「ふむ……あえて正解かどうかは言わんが、これで調査側がどうやってこちらの情報を探ってくるかが見えてきたな。言っておくが、こんな情報は調査側はもちろん、調査される銀行に勤めてる人間だって当然知っている。当たり前に浸透している一般的な情報、というか、考えればわかる情報だな。これがひとつ目だ」


「ふむふむ」


「二つ目。口座を作るために必要なものは何だ?」


「なんだろ……? 身分証明書? でもさ、免許証とか住民票とか、公的な身分証明書を使うなら調査する側にも履歴情報とかでバレちゃうんじゃないの?」


「まぁ、そんなことは誰でも知ってるわな」


 備前は鼻で笑った。


「三つ目。免許証は電気やガスの公共料金支払がおおよそ3ヶ月程度続いていれば、その納付書等に記載された情報を元に住所変更ができる。これも一般的な情報だ」


「はぁ……でもそれが?」


「以上の情報で十分だな」


「うぇ!?」


「今の情報でピンとこない奴は残念だが理解力が足らん。諦めろ」


「そ、そんなぁ」


「小娘なら大丈夫だ。少し落ち着いて情報を整理してみろ」


「う、うん……」


「一応、他にも組み合わせできる情報をいくつか教えておいてやろう。住民票の名前の読み仮名は簡単に変更ができる」


「どゆこと?」


「例えば加奈子と漢字で書いて、オタンコナスとかのフリ仮名にすることも可能なんだ」


「そ、そんな名前やだよっ!」


「あくまで一例だ。……もちろんこれも一般的な情報なんだぞ」


「さっきから一般的な情報って言ってばっかり」


「しかしこれで生年月日しか一致してねぇ口座ができてしまったなぁ……ま、これで本人口座からの直接送金とか給与や年金の受け取り口座にしない限り、まず見つかんねーよ。スタンドアローンで使いにくいが、使い方を間違えなきゃあ安心だ」


「わ、悪いヤツだっ!」


「さらに自治体からの預金照会に対し高い手数料を取る金融機関もあるらしい……真偽は知らんが、もし本当なら、自治体としてはあるかどうかも解らない口座を探してそんな金融機関に調査はかけにくいよなぁ……?」


「サイアクー!」


「ま、こうやって自分とは縁もゆかりもない地方の口座を作っておけば、下手な運用をしない限り、見つかる可能性はほとんどねーのよ」


「ひ、ひどいぃ……」


「だがな、いずれマイナンバーとの紐付けが強制されればそれも全部ムダになっちまう」


「ドロー! マイナンバーカード、オープン! パパにダイレクトアタックだ!」


「うっせぇ黙って聞け!」


「いったぁい! ……カウンタートラップめぇ」


 加奈子はゲンコツが落ちた頭頂部を抑えながら恨めしそうに備前を見上げた。


「なんでお前はそんなゲームみてぇなことを知ってんだ」


「昔、近所のお兄ちゃんたちが遊んでたの見てた」


「そうか」


 備前は興味なさそうに鼻を鳴らした。


「ま、犯罪以外の方法でそんな口座が欲しいなら早めに作っておけ。あ、そうそう。法務省から戸籍にフリ仮名を記載するようになるなんて話が出てるから、いつかはそういったこともできなくなるかもな」


「ア、アタシは別にいいや……隠しておくような財産もないしね」


「それでいい。作るやつのほうが稀だ」


「うん! 良くわかんないけど、わかった!」


 加奈子はケラケラと笑っていたが、やがて一つ思い出したかのように手を打った。


「あ! じゃあさ、もしかしてアタシと初めて会ったときにパパが大阪にいたのって……」


「フン、小娘にしては勘がいいな。一応、俺の人生の中では一度も大阪と関わりがねぇからな。だが小娘、それ以上余計な詮索をするなよ?」


 備前はギロリと加奈子を睥睨する。


「う、うん……。アタシはパパと出会ってない、アタシはパパと出会ってない……」


「良し、いい子だ」


 備前は加奈子の頭の上に手を置いた。



 いつもお読みいただきありがとうございます。


 言い忘れましたが、オムニバスパートではストーリーより、生活保護を中心にお役に立つ情報の提供に重点をおいていくつもりです。


 現時点で取り扱いたい題目は、破産、税金滞納、車、障害者、高齢者、外国人、統合失調症、要介護認定、入院基準、施設入所……などですかね。


 就労支援系は……必要かな? 給付金あたり。


 政治的な問題など、なろう規約に抵触しそうなものは書けませんが、何か良い題材があれば教えていただけますと幸いです。


 一人でも多くの氷河期世代で大変な思いをされている方に有益な情報をお届けしたいですね!

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