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リビングデッド ~生活保護を悪用してお気楽な無敵生活~  作者: nandemoE
前章

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ピンハネ


 その日、備前と加奈子がI市福祉事務所を訪ねたのは二人の保護費初回支給日だったからだ。


 現金をエサに窓口まで呼び、手渡しと同時に生活保護に関するルール等の説明が行われる。


 決してタダでお金を貰えるだけの制度ではなく、制限もまた義務づけられる。


 基本的に車の所有や運転は認められにくいとか、収入があればその申告をしなければならないとか、そんなルールだ。


 もちろん制限が嫌なら申請をしなければいいだけの話である。


「うわぁ〜! やったぁ! アタシもお金貰えたぁ!」


 加奈子は嬉しそうに現金が入った封筒を掲げた。


「よし小娘、今日は焼き肉にでも行くか。俺の奢りだ」


「うおおっ! 焼き肉ぅ! まぢパパ愛してるぅっ!」


「保護費で食う焼き肉はきっと美味いぞぉ?」


「ヒャッハー! お肉は焼却だぁ!」


 生活保護の相談窓口はとても明るい雰囲気だ。


「焼き肉はいいとしても……備前さん、最近ちょっとやり過ぎじゃないですか?」


 CWの安岡がげんなりした顔で言う。


「この間の親子のケースですけど、家の価値とか確認したら、たぶん親子がわざわざ引っ越しをしなくても、そのまま保護になるケースでしたよ……? 二人とも無収入なんですから」


 だが備前は笑って答える。


「だろうねぇ」


「やっぱり、わざとだったんですね……」


「あのまま申請をしたら二人世帯になるうえ家賃がないので住宅扶助が貰えないだろう?」


「二人一世帯で貰うより、一人ずつ二世帯に分けたほうが貰える総額が多くなる。しかも持ち家じゃないからそれぞれに家賃分の住宅扶助が出る。そしてその上限いっぱいに設定した住宅扶助を受け取るのは備前さんの関係者で、今回も限界まで入居費用を請求って訳ですか……」


 全ては搾取する備前に利するようになっている。売却する家にしても、たとえ二束三文で売っても手数料を得る備前だけは得になる。


「しかもそれぞれ契約を済ませたあとなので、申請するときにはすでに市から何も言えない状態になっている……本当に酷いものです」


「偶然とは恐いものだね安岡君」


 備前はいけしゃあしゃあと言う。


「でも、まだまだウチのアパートには空きがあるからね。これからもガンガン頼むよ」


 安岡は肩を落とした。


「それで、備前さんはみんなから幾らピンハネするつもりなんですか?」


「そんなの真面目に答える訳ないだろう? 答えたら収入認定されてしまうからね」


「それは虚偽の報告ですよ?」


「おっと、今、心を入れ替えたよ。やはりピンハネは良くない。もう悪いことは一切しないと神に誓うよ」


「またウソばっかり言って……」


「ははは。まぁ、やるとしてもちゃんと現金で足がつかないようにやるから安岡君たちの仕事は増やさないよ。安心してほしい」


「ちょっとは手加減してくださいよ〜……」


 安岡は心底げんなりした表情だった。




 市役所を出たところで、備前は加奈子が嬉しそうに掲げる封筒を奪い取った。


「わっ! パパなにっ!? ひどっ!」


「貸してた分は初回保護費から返してもらう約束だっただろ。忘れないうちに差っ引くからな」


「そーだったぁ……あうぅ……ちょっとしか残らないぃ……」


「生活保護者の分際で贅沢を言うな」


「そーだけどぉ……」


 加奈子は寂しそうな顔をしつつ、思い出したように言う。


「でも、こないだキモオジ脅してたときの条件に比べれば、アタシのは全然マシかも……」


「そうだな」


「それに亜人からも結構ピンハネする予定なんでしょ〜?」


「俺を殴った罪は重いからな」


「アタシ、これでもマシな扱いなのかなぁ?」


「俺の初めての養分だったからな……今にして思えば少し甘すぎたか……」


「うわっ! やだよっ!? あとから条件出すの禁止っ!」


「ははは。どうしようかなぁ?」


「や〜め〜ろ〜!」


 加奈子は備前の肩をポカポカと殴る。


「ははは。まぁ、小娘には色々助けられもしたからな、特別に許してやることにするか」


「も〜! パパ、人が悪いよぉ!」


 そう言って備前を小突きつつ、加奈子は思いついたように手を打った。


「そうだ! だったらアタシも養分をゲットすればいいんだ!」


 それを聞いた備前は鼻で笑う。


「お前がか? 何も知らんのにできるのかよ」


「たしかにアタシはバカだし何も知らないけど〜……」


 加奈子は少し上目遣いで備前を見る。


「パパのお手伝いならできるかも……?」


「ほう? 小娘にどんな手伝いができるって?」


「例えばネットで困ってる人を探すとか……そういうの、試してみよっかな〜って」


 するとことのほか備前は関心を示した。


「それは面白そうだな……養分の幅が広がるかも知れん」


「だろだろん? そしたらアタシにも少し養分を分けてもらいたいな〜ってさ」


「ふむ……それがどんなもんになるかはわからんが、もし可能なら検討してみてもいい」


「ホントっ!? やったぁ! んじゃあアタシ、メッチャ頑張っちゃうよん!」


 そう言って、加奈子は嬉しそうに備前の前でクルクルと回って見せた。


「類は友を呼ぶってゆーから、たぶんアタシ、バカを集めるの得意なんだ〜」


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