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リビングデッド ~生活保護を悪用してお気楽な無敵生活~  作者: nandemoE
前章

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ひとン家の夕食


「うっま! マヂうっま! なにこれパパ天才かっ!?」


 備前の部屋の食卓の前で加奈子が言った。


「ったく、ひとン()の夕食にたかりやがって」


「だってアタシお金ないも~ん。生活保護費が支給される前に死んじゃうよ~」


「チッ……こんなことなら社協の貸付でも受けさせるんだった」


「しゃきょ~のかしつけ?」


「小娘は知らんでいい」


「はぁい……マヂうっめぇなコレ」


 加奈子はまったく気にした様子もなくおかずに箸を伸ばす。


「しっかしパパ。本当にお料理が上手なんだね。意外っ!」


「食事中は黙って食えと両親に教わらなかったのか?」


「ん~? あんまり覚えてない」


「そうか。まぁいい黙って食え」


「うっわ~。なにその話の切り方。興味なさげ~」


「ねぇよ。大体予想はつく。ゴミを産むのはゴミ親なんだろ」


「ひっど! アタシはともかく両親までゴミ扱いかよ~。ウケるわ~」


「俺ぁもう何十、何百とゴミを見てきたからな。もうわかってんだ」


「でもザンネーン! 私の両親はふたりとも公務員で~す。ゴミじゃありませ~ん」


 すると備前は少し驚いた顔をした。


「てっきり親との関係が悪いもんだと思っていたが、意外とかばうんだな」


「そりゃあ……まぁ。アタシだって両親のことは嫌いじゃないよ」


「家出までしてんのに変なケースもあるもんだ。ま、どうでもいいがな」


「興味ない感じ?」


「ねぇな。黙って食え」


「はぁい」


 ふたりは黙々と食事を続けた。


「そうだ」


 沈黙を裂いて備前が言った。


「先ほどの発言を訂正しておく。両親が公務員だってのは、ゴミであることを否定するほどのもんじゃねぇ」


「え? なんで? おかたい職業だよ?」


「だからなんだ? 俺みたいな奴もいるんだよ」


「あ~……良く解るたとえでワロタ」


「小娘もクズには気をつけろよ? 類は友を呼ぶからな」


「パパみたいなこと言っててワロタ」


「チッ……人がせっかく忠告してやりゃあ……まぁいい黙って食え」


「さっきはパパから話しかけてきたよ?」


「口答えするな」


「はぁい」


 ふたりは再び黙々と食卓に向かった。


「さて、と。タダメシを食らった以上はあと片づけくらいはしてくれるんだろうな?」


「え~っ!? アタシがやるのぉ~っ!?」


「働かざるもの食うべからずだ」


「それパパが言うのかよ~……もう、しょうがないなぁ」


 加奈子は文句を言いつつも食器を集めてシンクへ運んだ。


「ね~? パパって家庭でもそうやって威張り散らしてたの?」


「……さぁな」


 背を向けてテレビを見ながら備前は答えた。


「だから離婚しちゃったとか」


「……黙れ」


 そう言う備前の背中を見ながら加奈子はふたり分の食器を水洗いして水切りカゴに入れた。


 そして無言のまま備前の隣に座る。三人掛けのソファの真ん中を空けて、微妙な距離感のふたりであった。


「さみしい?」


 加奈子が聞いた。


「誰が」


「パパがだよ」


「んなわけあるか」


「そっかぁ」


「疑ってんのか」


「ん~ん? これはたぶん、アタシが寂しいから思ったんだろうな~」


 一瞬、会話が止まった。


「そうか」


 備前は淡々と言った。


「それだけ!?」


「悪いか?」


「悪いっ!」


 加奈子は言い切った。


「そろそろ私のこと聞きなよ~」


「興味ない。メシ食ったらとっとと自分の部屋に帰れ」


「ヤダよぉ~」


「あ?」


「だって、なんかアタシ寂しいもん」


「だったら実家に帰れ」


「それもヤダ」


「あ? お前どうする気だ?」


 備前が呆れた顔で言うと加奈子は少し身を捩った。


「あのね? ……変な意味じゃないよ? アタシ、こっちで寝てもいい?」


「ダメだ」


「えぇ~っ!? なんで~? フツーこんな可愛い子が一緒にいたいって言うの、断るぅ!?」


「邪魔なんだよ」


「ひっど!」


「酷くねぇ。なんのためにお前に部屋を与えたと思ってる」


「でもオバケとか恐いぢゃんっ!」


「小娘よぉ。お前いったい今いくつだよ?」


「アタシだって他のとこなら平気だよ!? でも、だって、ここ……じ、事故物件ぢぁん!?」


「なにもお前の部屋で死んでた訳じゃねぇと言っただろ」


「でも恐いんだよぉ~……」


「はぁぁ……くそウゼェ……とんだガキを拾っちまったもんだよ」


「見捨てないでよぉ」


「クソガキめ……今日だけだからな?」


「ホントっ!? やったぁ~!」


「言っておくが、福祉事務所に同一世帯とみなされることだけは避けねばならん。ひとりずつ別世帯で貰うほうが保護費を多く貰えるしな」


「うん。良くわからないけど、わかった」


「わかったらそっちの部屋に閉じこもってろ。俺の生活の邪魔をするな」


「え~っ!? もう少しお話しようよ~」


「俺はそれが嫌だって言ってんだ。締め出すぞ」


「わかった! わかったよぅ。すみっこで大人しくしてるからぁ……」


「ったく」


 備前は呆れた顔でテレビに視線を切った。


「パパ? なにかお手伝いできることない?」


 部屋の隅から加奈子が言った。


「ねぇよ」


「はぁい」


 少しいびつなリビングルームの雰囲気だった。


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