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4・可愛いお友達がたくさんできました

「か、可愛い……っ!」


 数にして十体ほどだろうか。


 現れた子熊はジャイアントベアのクーちゃんと比べて、随分と小さい。私でも楽に両手で抱え切れるくらいのサイズだ。


ぬし様―、そいつ誰―?』

『もしかして人間!? 怖いよー』

『食べられちゃう』


 小さい熊さんみたいな魔物(?)が、わちゃわちゃと騒いでいる。


 魔物さんから見たら、私たち人間の方が怖いのかなー?


「食べないって。私は悪い人間じゃないですよー」

『わっ! この人間、僕たちの言葉が分かるの!?』

『人間って、そういうものだっけー?』


 さらに騒ぎ出すみんな。


「クーちゃん、この可愛い熊さんたちは?」

『ジャイアントベアの子どもです。一応、この森のジャイアントベアは俺が統率してますんで』


 クーちゃんは意外とお偉いさんだった。


 ジャイアントベア……いや、これだけ小さかったら『ジャイアント』って言うのも変だね。差し詰め、ミニマムベアといったところか。ミニクーちゃんだね。


『こらこら、あまり騒ぐんじゃない。クラリスの姉御の人柄は俺が保証する。みんな、怖がらなくていいぞ』

『『『はーい』』』


 ミニクーちゃんたちは一斉に手を挙げる。


 みんな、ぬいぐるみみたいで可愛いっ!


『姉御、すいやせん。後で言って聞かせときますんで。ですが、姉御を危ない目には遭わせないので安心してください』

「うん、ありがと」


 うーん、クーちゃんって紳士。


 でも、ミニクーちゃんもこんなに可愛いのに、私が危ない目に遭うことなんてあるのかな? だけど一応魔物なんだし、それくらい考えた方がいいのかもしれない。


『おい、お前ら。今からこの姉御のために、棲家を作るぞ! みんなで力を合わせて、人間の家を作るんだ!』

『『『はーい』』』


 再び手を挙げるミニクーちゃんたち。

 短い手を一生懸命伸ばすものだから、それがまた愛おしい。



 こうして私の家づくりが始まった。



 クーちゃんたちが森の木を切って、家を組み立てていく。

 ミニクーちゃんも、とっても力持ちみたいであっという間に家は組み上がっていった。


「みんな、私のために働いてくれてありがとね」

『礼には及びません。誰かのために働くことは、魔物として当然のことなのですから』


 と喋っている間にも、クーちゃんは大木を片手で三本担いでいる。


『クラリスよ、汝は働かなくていいんだぞ?』

『そうです。姉御は休んでおいてください』


 ペット……もとい神様のルーシーと、クーちゃんが同時に声を上げる。


 しかしそれに私は手を振って、


「いいの。なんにもしてないのも悪い気がするからね。邪魔しない程度には働くよ」


 と丁寧に言った。


 実家では掃除や洗濯など、寝る間も与えられず雑用ばっかりやってたせいで、動かないのもむずむずするのだ。

 とはいえ、私はクーちゃんたちみたいに力持ちじゃない。小物を作ったりすることくらいしか出来ないけど、ちょっとでも役に立ちたかった。


「それに私、体力だけには自信があるからね。ほら、まだまだ働け──」


 と力こぶを作ったら。

 急にふらあっと立ちくらみがしてしまう。


『クラリス!』

『姉御!』


 ルーシーとクーちゃんの声が遠く聞こえる。

 そのまま私の体が倒れていき……。



『クラリス! やってきたよ!』



 と、その時。


 私の体を緑色の光が包んだ。

 同時に立ちくらみもなくなって、倒れずに済んだ。


『クラリス、大丈夫か? どうやら疲労が溜まっていたようだな。気付けなくて、申し訳ない』

「平気だよ、ルーシー。そんなことより今の声は……」


 と視線を彷徨わせてみると、いつの間にか私の周りに緑色の光がぽつんぽつんと灯っていた。


『もーう、クラリスは頑張り屋さんなんだから!』

『そうだよ! あの家にいた頃から思ってたけど、クラリスはもっとちゃんと休まないと!』

『でも大丈夫。僕たちがクラリスに治癒魔法を施したから!』


 どうやら、この声はたくさんある緑色の小さな光から発せられているらしい。

 それに先ほどから体にあった怠さがなくなっている。

 気分爽快だ。


「こ、この声は……」

『精霊だな』

「せ、精霊!?」


 と私は驚きの声を上げてしまう。


 精霊とは、万物に宿ると呼ばれる存在である。昔から、精霊は小さな神様みたいなものだと教えられてきた。

 さらに魔法の生みの親とも言われ、人間は彼らを研究することによって自分たちでも魔法を使えるようにした。


「私、精霊さんの声も聞けるの?」

『なにを今更。我……神の声が聞こえる時点で、分かりそうなものを』

「そりゃそうだけど……今まで聞こえなかったし」

『クラリスは実家でも精霊と喋っていたぞ。やはり、気が付いていなかったか』

「へ?」


 もしかして、花とか草に喋りかけていたと思ってたけど、あれに精霊さんが宿っていたの?

 私は植物の声を聞いていると思ってたけど、実は精霊さんの声だったと。


 よく思い出してみたら、花や草の周りにこんな緑色の光がぽやぽやと光って見える時があった。

 今の声もあの時と同じのものに思えるし……私、知らず知らずのうちに精霊さんと喋ってた……ってこと?


「【聞き上手】ってすごいスキルじゃん!」

『何度も言ってるだろうに』


 むふーっと鼻で息をするルーシー。


『姉御はすごいですね。普通、精霊といったら俺ら魔物以上に人見知りです。それなのにこうして喋っているとは……』


 とジャイアントベアのクーちゃんも驚いた様子。


「みんなは、ウィンチェスター家のお屋敷にいた精霊さんたちなの?」

『そうだよー』

『クラリスがいなくなったから、出てきちゃった!』

『ふふふ、出ていく時にちょっとした()()もしたけどね!』


 精霊さんたちは楽しそうに笑う。


「悪戯?」

『うん。あの家にいた人間たちにちょっと……ね』

『でもクラリスはそんなこと気にしなくていいよー。あんな家のこと、思い出さなくていいんだから!』

『せいしんえいせいじょう? によろしくない!』


 あの家にいた人間……というと、お父様と妹のことだよね。


『ここにいる皆も、人間界に干渉するのがあまりいけないとされている。しかしそれでも、あの家にいた人間どもの行いには腹に据えかねていたのだろう。こうして付いてきたのも、クラリスの人柄あってのことだ』

「そうなのかな?」

『そうだ。それに……』


 とルーシーが言葉を続けようとした時、周りに変化が訪れる。


 殺風景な森の中だったけど、地面から花が咲き誇り、あっという間に周りがお花畑みたいに変わったのだ。


「わあ、キレイ!」


 私は思わず声を上げてしまう。


『精霊の加護だな。他にも精霊が棲むうところには、幸運が訪れると言われている。精霊が出ていくことにより、あの家の加護がなくなるわけだから……これから先、どうなるか分かるよな?』


 ニヤリとルーシーが笑う。


 うーん、今頃あの家が酷いことになってそうだけど……あまり深く考えない方がいいよね。

 そう、精神衛生上よろしくないのだ!


「そんなことより、精霊さんたち。みんなもここに来てくれて嬉しいよ。そうだ、ミニクーちゃんたち……他のミニマムベアちゃんにもみんなを紹介しないと。いいかな?」

『もっちろんだよ!』


 と精霊さんたちが返事をする。


 これから先、さらに楽しく暮らせそうだ。


 私は精霊さんたちとクーちゃんたちのところに行きながら、あらためてそう思うのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 基本的に精霊は結構残忍ですからね… ちょっとしたイタズラがちょっとじゃ無い事の方が…(笑)
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