雪解け
ねぇ大丈夫?
なんで泣いてるの?
あの二人が綺麗で眩しくて泣いちゃったんだ
君の両親だったのか
仲が良いんだね
彼女と奴が幸せそうに生きてる
そんなに泣いたらお顔とけちゃうよ
でもねー泣きたいときには目一杯泣くのがいいんだって
おとーさんが言ってた
それは俺が奴に言った言葉
彼女の訃報が届いたとき
奴はそれでも泣かなかった
俺の前では
訃報を聞いて俺も涙を浮かべていたから
二人でがむしゃらに働いた
張り詰めた糸が切れないように
立太子の儀をおえて
奴はいなくなった
俺を支える人をありったけ増やして
その代わり奴はいない
私は泣かなかった
重責を背負い
前を向かなきゃならなかったから
私は探さなかった
奴は戻ってこないから
見つけても糸の切れた奴を
俺の親友を説得できる気がしなかったから
今度は彼の訃報を私一人で聞いた
泣けなかった
泣いていいんだと言ってくれるはずの奴がいないから
そこから暫くは記憶がない
世界にあの二人がいないのが信じられなかった
どこかで信じていた糸がきれてしまったから
ふと彼女が好きだった金木犀の香りがした
顔を上げたらモノクロの世界の中に私一人だった
それでも私には責務がある
モノクロの世界を支える責務が
立太子から十年たった
おしどり夫婦の美味しいパン屋の話しを聞いた
今はほとんど街にでていない
もう街に出れる機会もなくなる
最後にいいかと思って街に出た
そこかしこに三人の思い出があった
変わってしまった店もある
それでも三人で過ごした思い出は残っている
その中に一人だけだとという哀しさを受け止められなくなってきた頃パン屋を見つけた
やっとやっと泣けた
目が溶けるほど
あいつらに知らせるのは今度にしよう
今は心配してくれる可愛いお嬢さんにだけ
ジャンル迷子です。
ローファンタジーにいれていいものか童話なのか…?