表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/28

23.自爆は浪漫ですよね?「やめてください」

23.自爆は浪漫ですよね?「やめてください」


 ヒヒイロカネでできた仮面は魔を封じる魔方陣が描かれているので、審議官は泥人形ゴーレムの視覚や聴覚を惑わされることがない。


 ザイザルと同じく平凡な審議官ルドマルドにも一つの才があった。


 鼻が効くのだ。


 香りというのは物質なので、そこに香りをはなつ物質があれば消えることはない。光や音といった消えてしまうものとは違う。


 だからこそそこに慢心があった。


(違う!)


 ただ、気づくのが遅かった。




開け胡麻(オープンセサミ)


 ルドマルドが術にまっていた。


 用心していなかったといえば嘘になる。十二分に対応していたつもりだった。


 リヴャンテリ邸の天井には見たこともない美しくも気高いそれでいておぼろげな朱色の陣が描かれていた。


 青いレンズの色眼鏡サングラスをかけた異国の魔術師ウィザードがそこにいた。


(声が……)


 ルドマルドの身体が〝コカトリス〟に睨まれたように硬直していた。


(リヴャンテリのコカトリス! ――違う! もう一つはザイザルが……)


 ザイザルのほうを見ようとするが顔が目が動かない。


(護衛!)


 イザルト人形が土に還った。


(本人ではない? そんなバカな!)


 ルドマルドが動けない身体で、頭を回転させた。


(ザイザルが裏切った? そうなのか? 違う!〈異邦人エトランジェ〉!)


 コンジレイティオの額から汗が流れていた。


(氷の女が……)


異邦人エトランジェ〉とコンジレイティオの二人が何かを話していたが、聞こえなかった。


 二人の口の動きを見ようとするが、それもできない。


(意識が……)


 ルドマルドの感覚は、邸ではなくリヴャンテリ宮殿だけにあるらしい。


 それは奇妙な話だった。


 貴族は二重思考ダブルシンクができるように訓練されている。


 本人も泥人形ゴーレムも両方に意識があり感覚がある。


異邦人エトランジェ〉の魔術は不可解だった。泥人形ゴーレムに術をかけても、本人まで影響しない。


 泥人形ゴーレムは本人ではないので、手を切られようが首を落とされようが(感覚はあっても接続を切ればいいし)本人が傷つくことはない。


 それが〈異邦人エトランジェ〉の〈呪詛返じゅそがえし〉は本人まで影響する。


 貴族は自分より以下の位のものの言うことなど聞く訳がない。そのための身分だし、それだけの責務がある。


 平凡と言われようと、変態とののしられようと気にしない審議官ルドマルドだが、他の誰にも譲れないものがあった。


 そうしたことになるなら、最後の手段を選ぶのが貴族だ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ