表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/28

21.光学異性体はどうですか?「変身はできません」

21.光学異性体はどうですか?「変身はできません」


 ぼくはベイヴィルに〈異邦人エトランジェ魔術師ウィザード〉の泥人形ゴーレムを複数体つくってもらった。年齢や性別を変えて。もはや等身大フィギュアである。


 意識を泥人形ゴーレムに移して、ぼく本人も動く。


「あのお……」


「なあに?」


夜の営み(プレイ)に使うんですか?」


 咳き込んだ。


「しないよ」


 巨乳の美しいぼくの泥人形ゴーレムが女性の声で答えた。


 ベイヴィルの作品はザイザルのソースコードを変えたものだ。


 読書の休憩がてら、僕自身も造ってみた。ベイヴィルの女泥人形ゴーレムをコピーしてペーストした。


 胸を控えめに変えて、やわらかな表情にする。


 何度か女装したことがあるが、アレより楽だった。


 ぼく本人が、ぼく女人形の胸をもんだ。


 やや硬い。ザイザルがロリータコンプレックスなだけに、胸の造詣が浅いのだろう。


 子供とプレイして何が楽しいのかぼくにはさっぱり分からない。


 そうした性癖は知っているが、理解に値しない。


 土の魔法で服を造ったが、やや違和感があった。これが審議官の仮面の正体の謎だった。


(それで人間味が少なかったのか)


 畏怖が効果的に作用するよう造形を変えているらしい。


(小役人ぽいバカらしさだ)


 全裸の女人形で人間の限界を超えて動かした。


 一一〇%レベル。


 動く。違和感はない。


 一三〇%。ダメだった。着地のときにショックを全身で吸収できず、踵から崩れてしまった。


 そのまま上から糸で吊るしたように、再生しながら立ち上がる。


「なるほど」


 安全なレベルは一一八%だった。


 ベイヴィルが造ってくれた少年・青年・老人をそれぞれ男女ずつ計六体とぼくの一体を同時に動かした。


「ウッ!」


 すぐに頭が痛くなった。冷たいものを急に食べたときの痛みに似ていた。ふだん使わない箇所だ。


「確かに二体が限界ですね」


 それ以上は情報過多だ。


 精密に動かそうとすると、一体でもままならない。


「動いた」


 交代したベイヴィルが、男三体のぼく人形を同時に操っていた。こればかりは才能なのだろう。


「夜に使うなよ」


 忠告はした。




 ベイヴィルの魔法の場合、火が強く土がまあまあで、水が弱い。


五行ごぎょうみたいですね」


 中国の五行思想だ。木、火、土、金、水それぞれが組み合わさり力となる。


 たとえば、火で燃えたものはちりとなり土にかえる。


 火は水で消えてしまう。


 頭の中で術式を変えてみたが、力の変化はなかった。


 床にチョークで書き起こしたが、無意味だった。


 そもそもぼくは物理法則で物事を理解している。こちらの世界とは、事象に対して心象が異なる。


 図書館の本にあった火の魔法にしても、僕自身が反応兵器を理解していることで発動できる。




 いろいろ試したけれど、やはりぼくが使える人形は二体までだった。


(もしかして……)


 泥人形ゴーレムとなる土そのものを細かくしてみた。


「粘土ではなく、粉体ふんたいレベルで……」


 ソースコードで土の大きさを微細に変化させた。


 途端に、形が維持できなくなり元の土に還ってしまう。液体のように流れてしまうが、中央部分だけが砂山になった。


 より小さく設定した。水のように周囲に広がった。


「いっそ水で造ってしまえば?」


 井戸の水で一体つくった。


 造形物として成立していたが、透明の水のままだった。光学迷彩の情報で色をつけてやる(必要な色を反射させてやる)と、まったく違和感がなかった。


 ただ、こちらも二体が限界だった。根本的な問題なのだろう。


(これはこれで使えますか)


 読書に戻った。


 ベイヴィルはどうあっても水人形の扱いはできなかった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ