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冬の訪れ春の道を拓く

作者: ぴー

0:雪が降る中公園のベンチで1人座る女子高生


ハル:うーっ…さむっ。ココア飲んで温まろっと


0:缶のホットココアを開けて一口飲む


ハル:…ふーっ。温まる…。アキちゃんまだかなぁ


0:気配もなく彼女に近寄る男性


フユ:あれ?キミこんな時間に何やってるの?今日学校だよね?


ハル:…何ですかオジサン?ナンパですか?


フユ:いや、そうじゃなくて…


ハル:もしかして…!私そういう事はお断りなので消えて下さい!しつこいなら警察呼びますよ!


フユ:ちょ、ちょっと待ってくれよ!オレはキミがサボってるんじゃないかって思ってさ!


ハル:テスト期間なので学校が早く終わっただけです!


フユ:それなら良かった…。じゃあ今は何してるの?



ハル:知り合いを待ってます。これで満足ですか?


フユ:そっか…。キミ…今悩んでる事あるよね?良かったら話聞くよ…


0:スマホに映る110をフユに向けるハル


ハル:警察。呼びますよ?


フユ:あぁ。それでも構わない。スマホはずっとその画面で構わないから話相手になってくれないか?


ハル:…分かりました。ならそっち端に座ってください


フユ:ありがとう


0:フユは同じベンチの反対端に座る


ハル:で?話って何ですか?


フユ:何について悩んでるのかな?って思ってさ


ハル:悩む?私がですか?私の事よく知らないくせに


フユ:そうだね。オレはキミの事よく知らない。でもオレは元高校教師だ。力になれると思う


ハル:元?今は違うんですか?


フユ:…あぁ。辞めた。というより辞めざるを得なかった


ハル:どうしてですか?


フユ:大切なもの…、家族を守る為にやらなきゃダメな事があったんだ。だから仕事を辞めた


ハル:…そうなんですね。今…そのご家族は?


フユ:二人とも元気…だと思う


ハル:一緒に住んでないんですか?連絡は?


フユ:残念ながらね


ハル:仲悪いんですか?


フユ:別に悪くないぞ?まぁケンカはよくしてたけどな


ハル:そうなんですね…それなのに私の悩み聞く余裕あるんですね


フユ:まぁ…それとこれとは別だからな

フユ:ムリにとは言わないけど見知らぬ人間相手だからこそ言える事もあると思うぞ?


ハル:…分かりました


0:ハルはココアを一口飲んで話し出す


ハル:進路について悩んでます。もうすぐ自分の進路を決めて科目選択とかしなきゃならないので


フユ:なるほどな…。2年生になったら選ぶ事が増えるしな…


ハル:えぇ…


フユ:ちなみにキミが進みたい道は?


ハル:医療系に…叶うなら助産師になりたいと思ってます


フユ:アキくんと同じ道か…良い夢だね


ハル:アキくん?もしかして私の知り合いと同じ人ですか?


フユ:あ…いや…


ハル:そんなワケないですよね…珍しい名前でもないですし…


フユ:どうしてその道をためらうんだい?


ハル:単純にお金がかかるからです…ウチ片親で、私が生まれる時に父親亡くなってしまって…だからお金がかかる選択は出来ないかな…って


フユ:…そうか。お母さんはこの事は知ってるのかい?


ハル:はい…。でも大変な仕事だからアナタに務まるはずがないって…正直うっとうしい位、過保護だし

ハル:あと生まれて来れなかったお兄ちゃんかお姉ちゃんの為にもっと頑張ってって押し付けてくるし…


フユ:そっか…相変わらず心配性なんだな…


ハル:オジサン、ママを知ってるんですか?


フユ:あ、あぁ…。昔だけどな、それなりに仲良くしてたよ


ハル:…元彼とかですか?


フユ:まぁ…そんな所だ。ちなみに今は相手いるのかい?


ハル:いないと思います。毎日仕事で忙しそうなので


フユ:…そうか。それは嬉しいような悲しいような…


ハル:元彼なら複雑ですよね。あ、言っときますけど私はオジサンを父親として受け入れるつもりはないので


フユ:それは手厳しいなぁ、まぁ仕方ないかもしれないけどな


ハル:話戻しますけど、だからママを納得させる為に知り合いの助産師さんの話も聞いて説得したいって思ってまして…


フユ:だったらその道を選びなさい


ハル:え?


フユ:きっとお父さんだってキミの幸せを願ってるよ。夢に向かって進んで欲しいって思ってるよ


ハル:…そうですか?


フユ:あぁ。オレが父親なら間違いなく言うね!だって大切な一人娘だからな


ハル:オジサン…。ありがとうございます


フユ:別にお礼なんていらないさ。キミが少しでも前を向いてくれたら嬉しいからな


ハル:私…実はもう一つ夢があって


フユ:なんだい?


ハル:私…小説家にもなりたい。ラノベだけど、ネットで小説書いて上げてるの!小さな賞も貰ったことだってあって!


フユ:それはスゴイな!


ハル:あっ…タメ口でごめんなさい


フユ:気にしないから話しやすい言葉で話して欲しいな?


ハル:ありがとうございます


ハル:だから両方やりたいって思うけど…両方中途半端になりそうで怖いの…


フユ:良いじゃん。両方中途半端でも


ハル:え?どうして?


フユ:まだ分からないだろ?それに両方上手くいくかもしれない


ハル:でも…それはただの理想だよ…


フユ:理想上等!妄想承知!

フユ:若者は成功する未来だけ見ておけ!


ハル:あははははっ!オジサン、本当に元教師なの?テキトー過ぎでしょ!


フユ:それで良いんだよ。ダメそうなら親を頼れば問題ない


ハル:でも…ママは…


フユ:大丈夫だから。ママはキミを命懸けで守ってくれただろ?だから…必ず力になってくれる

フユ:それにパパだって見守ってくれてるさ


ハル:オジサン…。ありがとう、少し元気出た!


フユ:おう!それなら良かった!


0:突風が吹き2人は一瞬身を凍らせる


ハル:さむっ…!ホントにアキちゃん遅いなぁ…


フユ:きっちりしてるようで抜けてる所あるもんなぁ


ハル:だよね!それでいて結構厳しいの!この前、練乳そのまま吸おうとしたら、めっちゃ怒られた!


フユ:それは分かってないよな!練乳はあのチューブで吸うから美味いんだよな!


ハル:オジサン分かってるね!初めてオジサンさんの事見直したよ!


フユ:あれ?さっきの言葉では見直してくれなかった感じ?


ハル:当たり前じゃん!元教師ってのも信じてないからね?


フユ:マジかよ…

フユ:じゃあさ納豆ご飯に練乳かける?


ハル:かけるかける!あのネバネバと練乳の甘さがたまらないよね!

ハル:…この前やってるのバレてママに超怒られたけど


フユ:やっぱり怒られたか!オレも何回も怒られて練乳禁止令出された時は絶望したわ!


ハル:それはオジサンが悪いよ!パパも超甘党って言ってたしママは甘党の人と付き合う事が多かったんだね!


フユ:そうかもな!



フユ:なぁ…最後に名前…聞いても良いか?下の名前だけで構わない


ハル:仕方ないなぁ。特別に教えてあげる


ハル:私はハルキ。春にのぞみで春希


フユ:春希か…良い名前だな


ハル:でしょ?パパが最期に付けてくれた名前なの


フユ:そうか…。名前の意味とかあるのか?


ハル:名前の意味は…『冬から、夏につむぐ春の希望』だってさ。パパ、意外とロマンチストだったみたい


フユ:…そっか


フユ:そうだ!ならこの出会いにタイトル付けてくれよ!小説家らしくさ!


ハル:ムチャぶりだなぁ…そんなすぐに思いつくワケないじゃん!


フユ:…だな。なら次会った時にでも聞かせてもらうよ、未来の人気作家さん


ハル:そうだね!あ、アキちゃんから連絡来た!じゃ私そろそろ行くね!


フユ:…あぁ。頑張ってな



ハル:そうだ…オジサンの名前って?


フユ:オレかい?オレは…冬樹


ハル:冬樹さん…ね。パパと同じ名前だったんだ


フユ:…あぁ。春希?最後にママに伝え貰えるかな?


ハル:え?何を?


フユ:オレはあっちでもう1人の子供と元気にやってるよ…って


ハル:え?何言ってるのオジサン?


フユ:夢はいつか覚める。でも掴んだ夢は覚めることはない


ハル:ってか…何でそんなに私たちの事知ってるの…?

ハル:まさか…


フユ:だからまっすぐ進め…愛しい娘よ…


0:再び突風が吹き冬樹の姿は消えていった



ハル:え?何なの?そんなコトってあるの…?ウソだよね…?



フユ:(あぁ…世の中には不思議な事が沢山ある。だから立ち止まる暇なんてないぞ?)



ハル:こんな事誰にも言えないじゃん…。でも小説のネタとしては面白いかもね…


フユ:(あぁ!だから素晴らしい小説期待してるぞ!天才小説家!)


0:春希はゆっくり歩いて公園を出る


ハル:あっ!良い小説思い付いた!


フユ:(どんな小説なんだ?)


ハル:主人公は大学受験間近の女子高生で、父親が異世界転生出来るように勉強しながら異世界に通じるゲートを探す話!


フユ:(中々奇抜な発想だな!さすがだな!…ってオレを異世界転生させたいのか!?)


ハル:…んで父親も娘をサポートして娘を成功に導く感じにして


フユ:(まるで今日の出来事みたいだな)


ハル:…で…タイトルは…


ハル:『冬の訪れ春の道を拓く』


フユ:(…いいタイトルだな)


0:ハルは公園の方を振り向き静かに呟く


ハル:どう?少しは小説家らしいタイトル付けられたかな?…パパ

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