CASE.0 天寿症
突発性睡眠時心機能停止障害。
世界中で突如発生したこの奇病が、世間を大いに騒がせた。
前兆なく首を一周する痣が現れ、そこから数えて7日後、耐え難い睡魔に襲われ眠りについた時、心機能が停止し二度と起きることはない。
この病が知られた時こそ、死の病と恐れられ、原因や治療法を模索されたが、未だに判明の糸口さえ掴めないでいた。
数多くの医療従事者や研究者の研究の結果分かったことは、
・他者に感染する可能性は0に等しい。
・発症するのは20歳以上の人間だけであり、僅かながら高齢になるとほど発症率が上がる。
・死の直前まで痣以外の自覚症状はなく、命を落とす際も痛み等は全く感じない。
ということのみ。
突発性睡眠時心機能停止障害が発見されてから十余年。発症者の割合は100万人に1人かそれ以下であることも判明し、亡くなる時は安らかな顔で、眠っているようにしか見えなかったという遺族の証言も多数報告されていることもあり、死の病という呼ばれ方をすることは減り、いつしか『天寿症』と呼ばれるようになっていった。
そのような背景から、終活や天寿症に絡めた保険などがその需要を増やし、特に終活においてはそのビジネスモデルが多様化を極めていた。