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 こちらからはデリアたちは互角に戦っていると見ていたが、実際応援に駆けつけてみると大苦戦だった。


 他の三人に守られているカルフこそはそうでもなかったが、他は全員血まみれだった。それも明らかに返り血よりは負傷しての出血が多い。


 正直、クルト()も頭に血が昇った。よくもデリアをこんな目に遭わせてくれたな。もちろんミルマもハルパも大事だが、デリアは別格だ。


 (スピア)を手に突撃せんとしたまさにその時、隣から声がした。


「(てめえら。ハルパ相手に随分とやってくれたじゃねえかっ!)」


 クルト()より先にハタルが突撃。瞬く間に三人の野盗に一撃を加えた。


 ならばクルト()は「治癒(キュア)」「治癒(キュア)」「治癒(キュア)」「治癒(キュア)」「治癒(キュア)」「治癒(キュア)


 持っているだけの治癒(キュア)魔法(マジック)をデリア・ハルパ・ミルマにかける。


「クルト君っ!」


「デリア。遅くなって悪かったね。後はクルト()が代わるよ」


「だって、クルト君だって背中に直りきってない深い傷が」


「デリア。まだ治癒(キュア)魔法(マジック)は持っている? それをかけてよ」


「うん。敵が強くて、鉄の杖を使っての応戦で精一杯で治癒(キュア)魔法(マジック)は全然使っていない。かけるよ」


「(お願い……ミルマ……遅くなって……ごめん……いつもので……いくよ)」


「(うん)」


 ミルマは頷く。クルト()(スピア)の柄の鉄芯で思い切り二人の野盗に一撃を加える。敵がふらついたところをミルマが(スピア)の穂先で心臓を突いて仕留める。もう一人のふらついた野盗はクルト()が心臓を刺す。


 ハタルが一撃を加えた三人はハタルとハルパが一人ずつ頭蓋を叩き割る。


 最後の一人はパニックになり逃げようとするが、デリアが鉄の杖で後頭部を一撃。ふらついたところをミルマが心臓を刺した。


「(これで終わったか? クルト)」


「(これで……終わった)」


 この言葉と共にクルト()とハタルは大の字になってその場に倒れ込む。


 そして、倒れたままハタルはクルト()に声をかけてくる。


「(クルト。おめえはよ。本当に強えよなあ)」


「(何言ってんの……ハタルの方が……強いよ)」


「(いやあ、クルト。おめえも強えって)」


 ハタルは大の字になったままクルト()の方に右手を伸ばしてきたので、クルト()はそれを左手で握り返す。


「(あっきれた)」


 見ていたハルパから声がかかる。


「(あれだけ人間(ニューマン)は信用出来ないの、汚い本性を出したら、すぐ殺してやるの言っていて、この光景は何よ? え? ハタル)」


「(うるせえな。ハルパ。女に男の友情が分かってたまるかよ。なあ、クルト)」


 いや、そう言われてもクルト()もデリアと付き合っているし、そうそう同意も出来ないんだけど……


「(あー、そういうこと言うんだ。ならさあ、こっちはこっちで仲良くしちゃうもんね。デリア、カルフおいで)」


 ハルパは右腕でデリア、左腕でカルフを抱え込んでにっこり。カルフは笑っているが、デリアはやはり当惑気味だ。


「(おおっ、そういうことなら、ハタル()はクルトとこれからコンビを組むぜ。クルトにだったら背中を預けられるからな)」


「(ちょっと待ってよ。ハタル兄さんっ!)」


 ハタルの言葉に慌てて駆けつけるミルマ。


「(もともとクルトはミルマ()とコンビを組んでいたんだ。クルトを取らないでよっ!)」


「(があっはっは。そうかそうか)」


 その言葉に豪快に笑うハタル。


「(なら、ハタル()とクルトとミルマのトリオでチームを組もう。こいつあちょっと強いチームだぜ。その辺の奴には負けないぜ)」


 立ち上がったハタルは右腕でクルト()を、左腕でミルマを抱え込んだ。何だか男女対抗戦みたいになってきたな。


「(まあ、ともかく)」


 ハルパはデリアとカルフを抱え込んだまま笑顔で言う。


「(ドワーフだ人間(ヒューマン)だなんて関係ないんだよ。いいチームが出来たね)」


「(おおよっ! もう目的地のノルデイッヒもすぐそこに見えているしな。勇躍乗り込むぜ。クルトッ!)」


 あ、やっぱりそういう話になるよね。ここはきっちり話しておかないと。


「(ハタル……ゴメン……ノルデイッヒに……勇躍乗り込むことは……できない)」


「(ん? 何でだ? クルト)」


「(デリアの弟に……渡すはずのお金を……豪遊で使い込んだ……人間(ヒューマン)がいた……クルト()は許せなくて……殺そうと……したんだ)」


「(!)」


「(その人間が……身分が高くて……クルト()は……お尋ね者に……なった……昔の仲間たちが……クルト()を……死んだことにして……逃がしてくれたんだ)」


「(!!)」


「(だからクルト()は……ノルデイッヒに……勇躍乗り込むことは……出来ない……夜陰に紛れて……乗り込むことに……なる)」


「(……クルト。おまえって奴は……)」 


 うーん。さすがのハタルも、クルト()のこの過去には引くか。


 バシンッ

 ハタルはクルト()の左肩を思い切り右手のひらで叩いた。

「(何て凄い奴だ。同じ人間(ヒューマン)で、偉い奴でも汚い奴には容赦しない。しかも、てめえの彼女の弟の金を使い込んだ奴をぶちのめす。ますます気に入ったぜ)」


 あ、引かれた訳じゃないみたい。良かった。


「(こいつあ面白くなってきた。かくなる上はクルトと一緒に行動して、砂漠に城が建つくらい稼いでやるぜっ!)」


 大きく出たね。ハタル。さすがにそれは大きく出すぎかも。でも、目標は大きい方がいいか。

読んでいただきありがとうございます。

第三部はただいま執筆中です。

もうしばらくお待ちください。

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― 新着の感想 ―
第二部完結おめでとうございます(遅) 汚い奴には容赦しないのは偉いね!! 続きも期待しております (`・ω・´)ゞ
第二部完結おめでとうございます! 第三部を全裸待機しております!
第二部完結お疲れ様です! 続きも楽しみにしておりますゆえ〜。
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