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聖女だけど、偽物にされたので隣国を栄えさせて見返します  作者: 陽炎氷柱
第三章

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59.国王の指輪

 クロヴィスの何かに気づいたような反応に、つい肩に力が入る。

 しかしそんな私の緊張感を裏切るように、ずいぶんと気の抜けた言葉が帰ってきた。



「私にはただの傷にしか見えないが……コハクはこの傷跡と似ている模様を見たことがあるのかい?」

「え?ただの傷って、こんなツタっぽいものが偶然できるのかしら」

「ツタ……?」


 困惑した様子にクロヴィスが嘘をついているようには見えない。その隣で指輪を渡されたジェラルドも慎重に確認した後、似たような空気を漂わせて眉を下げた。

 装飾品には詳しくないから、このツタのような模様はよくあるデザインなのかもしれない。私が知らないだけで、この世界の人にとっては疑問視するものではなかった可能性もある。

 しかし二人の反応を見るに、どうやらツタそのものに気が付いていない様子だった。



「ほら、この辺りよ。欠けちゃっているけど、ここに花とツタみたいな模様ない?」



 クロヴィスの手に戻った指輪の裏側を指してそう言えば、クロヴィスは難しい顔をする。

 芳しくない反応に頭を抱えそうになったところで、休んでいたミハイルがこちらに寄ってきた。そして指輪を手に取って眺めたかと思えば、何か呪文のようなものを唱えた。



「ミハイル殿!?何を――」

「指輪に幻術がかかってたんだよ。こういった精神に作用する魔法は術者より魔力が低いと見破れないのさ」



 おそらく幻術を破ったのだろう、ミハイルはそれだけ言うとポイっと指輪をクロヴィスに投げ返した。

 クロヴィスは難なく指輪を受け取ったが、ミハイルの雑な行動にジェラルドが目を吊り上げる。


「……いや、だとしてもこれは重要証拠品だ!協力には感謝するが、やる前に許可を取ってくれ」

「えぇー、ぼくが言ったところで信じないでしょ?」

「以前の貴殿なら聞くに値しないと突っぱねていただろうが、今は同じ船に乗った仲間だ。……なにより、己の命を顧みずコハク殿を助けた姿には感心した」



 これまでミハイルへの当たりが強かったこともあり、ジェラルドの肯定的な反応に驚く。

 ミハイルも予想外だったようで、変なものでも見るような眼差しで後ずさった。うーん、そういうところがダメなのでは。



「きみ、あっさり騙されそうだね」

「せっかく見直したっていうのになんて奴だ。前言撤回、やっぱり貴様はろくな人間じゃない!」



 二人が言い争いを始めかけたところで、クロヴィスがジェラルドを呼び止めた。

 張り詰めた雰囲気を感じ取って、ジェラルドはサッと表情を消してクロヴィスに向き直る。



「ジェラルド、見てくれ。この薔薇とツタの紋章、森で私たちを襲った集団と同じじゃないか」

「……はい、彼らの短刀に同じ模様がありました。騎士団の方に彼らから押収した担当を預けておりますの、すぐに確認いたします」

「いや、それは指輪を調べ終わってからでいい。もし紋章が同じなら、そのままどんな奴らか調べ上げて」

「はっ!」



 クロヴィスたちの話に、思わずミハイルと顔を見合わせる。

 偶然にしてはちょっとタイミングが合いすぎだと思う。クロヴィスたちが迷いの森に来たことなんて、一部の人たちしか知らないって話しだったはず。何かの要因で情報が洩れて襲撃されたってところに、国王の指輪に同じ模様があったら……関連を疑わずにはいられないだろう。

 私ですら思い浮かぶ可能性を他の三人が思いつかないはずもなく、部屋の空気が一気に重くなった。



「俺には魔法の才能がありませんが、殿下は我が国でも3本指に入るほどの魔法使いだ。そんな殿下の目すら誤魔化すレベルの幻術の使い手となれば、相手もそれなりの勢力があると考えるべきだろう」

「そうだね。裏切りも視野に入れて、慎重に調べた方が良さそうだね。ジェラルド、頼めるかな」


 クロヴィスは指輪を見つめながら、静かに目を細めた。

 穏やかな笑みを浮かべていても、瞳の奥は冷え切っている。王族として幾度も陰謀を見てきた人間の顔だ。



「はっ、承知いたしました」



 ジェラルドは指輪を受け取り一礼すると、すぐさま部屋を出ようと扉へ向かう。

 だが勢いよく扉を開けた次の瞬間、白銀の影が突風のように飛び込んできた。――私に。



「わっ⁉」

『コハク!!』



 見慣れた大きなもふもふが、一直線に私へ飛びついてくる。



「ふ、フブキ⁉」



 ドスン、と重い衝撃と共に抱き着かれ、私は危うく後ろへ倒れそうになった。鼻先をぐいぐい押し付けられ、全身を確かめるように匂いを嗅がれる。



『無事だな!!』

「え? う、うん?」



 普段よりずっと切羽詰まった声に目を瞬かせる。

 一通りじゃれついて、フブキはようやく安心したように小さく息をついた。それからギロリと室内を見回して、張り詰めた空気で鼻を動かした。



『呪いの穢れを感じたから来てみれば……なるほど、原因はそれか』

「穢れ?」



 身なりを整えて、フブキの言葉に聞き返す。いつもならすぐに私に向けられた赤い瞳が、ジェラルドの持つ指輪へ向けられる。



『それは呪具だな。しかも、かなり性質の悪い類の』

「呪具……?」

「ぼくも初耳だね」



 ジェラルドが驚いたように指輪を見下ろし、ミハイルも改めて指輪を観察した。

 低く唸るフブキに、さっき起きた戦いを簡単に説明する。すると、フブキは一層顔を険しくした。



『幻術だけじゃない。呪いの気配も染みついているな。それも、壊れた今でもかなり強く感じるほど強力なものだ』

「っ!」


いつもブクマ、評価、誤字報告ありがとうございます!

前回更新から3ヶ月って……ホンマですか???(震え)

絶対完結させるので!!!

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