表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女だけど、偽物にされたので隣国を栄えさせて見返します  作者: 陽炎氷柱
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/63

閑話2 小さな疑念

「聖女様、いつごろより治癒の秘術を我らに施してくださるのですか?」

「聖女様、予言の力はいかほどでしょうか」

「聖女様、民にもその威光をお見せしなくては」

「聖女様」



 王城の最も豪華な客室に、今日も代わる代わる人がやってきてはイラついたように帰っていく。

 彼らはみな高位貴族か神官なのだが、常に部屋の中に王子が居てはあまり強く出られない。しかも王子だけではなく、侯爵家の嫡男や伯爵家の息子もこちらをにらんでくる。


 今も若い神官が部屋を追い出され、閉められた扉の中から何かが割れる音が何度か聞こえてきた。



(またか……。どうして殿下たちはあんな娘に入れ込んでいるのだろうか)



 神官は今年神殿に入ったばかりで本来ならここには立ち入れないのだが、聖女の機嫌取りに嫌気が差した大司教に橋渡し役を押しつ……選ばれたのだ。

 当初は意気込んでいた神官も、毎度聖女の高圧的な態度を見せられていればだんだん冷めていく。


 聖女が召喚されてはやひと月。

 大司教たちを驚かせた予言はあれ以降音沙汰がなく、聖女の基本的な力である治癒の魔法も使われるところを見ていない。まあ、あんな姫も驚く好待遇を受けていたら怪我をするはずもないのだが。



(平民の四人家族なら一年はゆったりと暮らせるお金を一日で使い切ってるもんな。どーしてあんなわがままな娘が聖女になってしまったのやら)



 そこまで考えてしまって、神官の脳裏に恐ろしい考えが過った。



(もし、あの娘が聖女じゃなかったら)



 女神が選んだ尊い存在になんて不敬なことを。

 我に返った神官は慌ててその考えを振り払ったが、一度芽生えた疑念は綺麗に消えてはくれなかった。



(忘れよう)



 そういえば、聖女を()んだ筆頭魔導士は追放されたのではないか?



(確か無礼を働いたとか)



 何をしたら聖女を喚んだ大魔導士を追放するんだ?



(魔法を使わないのだって、必要がないからで)



 なら、なぜ教会の出動要請を断り続けている?



(……やめよう。きっと仕事が上手くいってないから悪い方に考えるんだ)



 背後から聞こえた(聖女)の声から逃げるように、神官は速足でその場から去った。




。。。




「あ゙ーもう!イライラするッ!」



 部屋に誰もいないのをいいことに、割れにくそうな箱を床にたたきつけた。


 どいつもこいつも口を開けば聖女様聖女様聖女様とバカの一つ覚えのように同じ内容を繰り返す。

 最初のころは何してもちやほやして貰えたのに、最近じゃこういう小言ばっかりでぜんぜん楽しくない。



「このゲームは好きだったけど、ストーリーの細かいところまで覚えてないわよ!」



 そもそも『聖女は薔薇を摘む』はなんちゃって西洋風のラブコメで、背景設定が凝った作品ではないのだ。

 周回プレイするときは既読スキップしていたし、冒頭なんてほとんど覚えてない。


 心白ちゃんを手早く追い出すためにゲームにあったキャラクター名を言ったが、未来予知だと言われるとは思わなかった。

 まあ黙っていればそのうちなるようになるだろう。



「だって、ひめはヒロインだもんね!」



 この世界はひめのためにあるんだから、焦る必要はない。

 というかこのめんどくさい状況も、もしかしてキャラクターとの恋愛を進めるためにあるのかも!


 そうだ。ヒロインが周りからいじめられるのだって、よくある展開じゃないか。

 わたしが覚えていないだけで、こんな展開もあったような気がしてきたな。



(それに心白ちゃんも消したし、バグはもう直ってるよね!)



 わたしはヒロイン。

 原作知識もあるし、不幸になるわけがないよね。



乙姫側のお話です。

少しでも楽しんで頂けましたら、ブクマや下の星を押して頂けると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ