二人目 異世界転移最強の男
行政官「それでは採決をとりましょうか」
行政官「不可」
大司教「不可」
剣聖「不可」
行政官「では、満場一致で不可ということで」
大司教「皆、なかなかの逸材ではあるのだが、伝説を継ぐ男を選ぶとなるとどうも選好みしてしまうわい」
剣聖「・・・勇者選考が困難であるのは仕方あるまい。本来、国が勇者を決めるという事態が異常なのだ」
行政官「仰りたいことはわかりますが、この差し迫った状況下で国民に安心を与えるには『勇者』の存在が必須なのです」
行政官「お二人も、それを承知の上でこの仕事を請け負ったのでは?」
大司教「だからこそ、慎重にならざるを得ないのじゃ」
剣聖「・・・」
行政官「まあ、そこは同意します。勇者に倒られでもしたら元も子もありませんから」
行政官「えっと、今日はあと一人。勇者候補がいらっしゃってるようですね」
大司教「はあ、儂らの仕事は終わりが見えないのう」
行政官「勇者候補の選定は、情報部が全力で継続中ですからね。嬉しいことに勇者候補には事欠きませんよ」
大司教「あな素晴らしや」
剣聖「憎々しい情報部のやつらめ」
行政官「では、お待たせするのも悪いので。早速、入っていただきましょうか」
行政官「次の方、どうぞー」
???「失礼する」
剣聖「・・・」
???「久しぶりだな!剣士!」
剣聖「魔王軍大幹部 炎魔将軍・・・」
行政官「!?」
大司教「なぜ、魔王軍幹部がここに!?」
剣聖「あの時、確かにトドメを刺したはず・・・」
炎魔将軍「蘇ったのよ!剣士、貴様を殺す為になああああああああ!!!」
剣聖「ちっ・・・地獄に送り返してやる。さっさっとかかってこい」
優男「おや、お取込み中のようですね」
剣聖「!?」
炎魔将軍「なんだ、若造。いつの間に、入ってきた!?」
行政官「つ、次から次へと何なんですか・・・」
優男「スキャン完了っと、へえ貴方は魔王軍の幹部なんですか」
炎魔将軍「ほう、この時代に俺の事を知っている奴が居るとはな。どれ、褒美に燃やし尽くしてやろう」
優男「それはご免ですよっと、さて折角の縁ですが。これでさよならです」
優男「炎魔将軍 デリート!」
炎魔将軍「ん?・・・あ、なんだこれは!体が、俺の体が消えていく・・・!!!」
炎魔将軍「何だ貴様は!?いったい、俺に何をしたあああああああああ!!」
炎魔将軍「ぐああああああああああああ・・・・・」
大司教「き、消えてしまった・・・倒したのか?」
剣聖「・・・」
優男「あ、なんかまずかったですか?」
行政官「あ、貴方は一体・・・?」
優男「俺?ああ、俺は勇者の面接を受けに来たタダの男ですよ」
優男「そういうことですし、さっさと面接はじめましょ?」
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二人目 異世界転移最強の男
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行政官「それでは、面接を始めましょうか」
優男「どうぞ、よろしく」
行政官「まず、一つ確認です。貴方は一体、何者ですか?」
行政官「いま、私たちの手にある羊皮紙には貴方の情報が書かれています」
剣聖「・・・ほとんど空白ではないか」
行政官「そう、我が国の情報部の力をもってしても、貴方の経歴や出自はほとんど不明」
行政官「わかっていることは、約1か月前から王都に滞在しているという一点のみ」
行政官「だというのに、この推薦状の数。王弟殿下、聖騎士団長、果ては猊下のものまで」
大司教「何をどうすれば、そうなるのだ・・・?」
行政官「ですから伺いたいのです。貴方は一体何者ですか?」
優男「ええっとですね。信じてもらえるかはわかりませんけど、俺はこの世界の住人じゃありません」
大司教「ほう、異世界人というわけか」
剣聖「盲点であった。それならば情報が少ないのも頷ける・・・」
行政官「出自については理解しました。ではもう一点、あの名だたる方々からの推薦状」
行政官「この短期間で、貴方は一体何をされたのですか?」
優男「実は、別に、勇者になりたいってわけじゃないんすよね。なのに、おっちゃんたちがやたら勧めてくるから」
大司教「お、おっちゃんたち・・・」
優男「まあ、ちょっとだけ『勇者』っていうステータスには憧れなくもないけど」
優男「まあ、おっちゃんたちの顔潰すのも悪いし」
剣聖「・・・質問に答えろ、小僧」
優男「ああ、ごめんごめん。えっと、質問でしたね・・・なんだったっけ?」
剣聖「・・・」スッ
行政官「ち、ちょっと剣聖殿!落ち着いて下さい!剣から手を放してください!」
剣聖「これも面接のうちだ、奴の実力を少し確かめたい」
優男「魔王軍の幹部を瞬殺したのをご覧になったでしょう?」
剣聖「・・・」
優男「歴戦の戦士なら、力量の差ぐらい察せるもんだと思ってたんだけどなあ・・・まあ漫画とは違うか」
剣聖「・・・ぬんっ!」スパン
優男「ほいっと!」パシ
剣聖「!?」
大司教「これは驚いた・・・剣聖殿の剣を、片手で止めるとは」
行政官「剣聖殿、もうよろしいですか。剣を収めてください」
剣聖「・・・うむ」
優男「えっと、なんの話でしたっけ?」
大司教「緊張感のない男じゃ、いやそれだけ余裕があるということか」
行政官「―――この短期間に、貴方が何をされたのかという質問です」
優男「ああ、そうでしたそうでした。えっと、まず酒場で飲んでたおっちゃんと政治談議をしたのかな?」
優男「そうしたら、おっちゃん感動して泣きだしちゃって。それで王宮に招待されて」
優男「聞いたら王様の弟だっていうし、もっと俺の故郷の政治体制について教えろって言われたから」
優男「教えたんすよ」
大司教「王弟殿下が、市井の酒場にだと?そんな馬鹿な」
行政官「殿下は、そういう方なんですよ。続けてください」
優男「んで、王宮にしばらく泊ってたんですけど。廊下歩いてる時に、騎士のおっちゃんの剣に俺の剣が当たっちゃって」
剣聖「・・・鞘当てか」
優男「で、いろいろあって立ち会うことになって。まあ勝ったんですよ」
剣聖「俺の剣を片手で止めるのだ、さもありなん・・・」
優男「んで、飲み屋のおっちゃんから禿のおっちゃんを紹介されて」
大司教「・・・げげげげ猊下のことか!?」
行政官「大司教様、とりあえず落ち着いてください」
優男「んで、宗教についても講釈垂れたら。禿のおっちゃんも感動しちゃって」
優男「で、いまに至るってわけかな」
行政官「なるほど。貴方は、異世界では学者だったのですか?剣も扱えるということは、騎士か何かで?」
優男「俺は、ただの一般ピーポーでしたよ?」
行政官「で、では、異世界では皆が貴方に比肩する知識と剣技を持ち合わせているということですか?」
優男「いやあ、そうですと言いたいところだけど。実は、これのおかげなんですよね」
大司教「それは?」
優男「ノートパソコンです。異世界のネットにも繋がってます」
優男「まあ、要は、異世界の知識の全てがこれに詰まっているわけです」
行政官「魔道具というわけですか」
優男「厳密に言えば、違いますけど。まあ、俺の魔法と組み合わせてるから。ある意味、魔道具とも言えるかな」
剣聖「・・・剣技についてはどうなのだ」
優男「それも、このパソコンで。この世界の魔法と組み合わせて、自身や他人のステータスをこのPCでいじれるようにプログラミングしてあるんすよ」
優男「今の俺には、異世界中の剣の流派のデータがアップデートされてるってわけです」
優男「ちなみに、さっきの魔王軍幹部もこの力で。まあ、デリートしちゃったってわけです」
行政官「と、言うことは魔王も・・・」
優男「会って、スキャンさえ出来れば一瞬で」
大司教「それほどの力を持つとは・・・」
優男「まあ、この力は俺をこの世界に召喚した人からの貰いものなんですけどね」
剣聖「・・・貴様、いったい誰に召喚された」
優男「神に」
大司教「」
行政官「だ、大司教様!気を確かに!」
――――――
行政官「そ、それでは審議を始めましょうか」
大司教「・・・正直、評価が難しい男であった」
行政官「おや、意外ですね。大司教様なら、この世界とは違った価値観を持つ彼を高く評価すると思ったのですが」
大司教「まあ、革新的な考えを持ってはいるようだが。彼の場合は、ちょっと違うな」
行政官「と言いますと」
大司教「確かに、彼の持っている知識や価値観はこの世界をかき回してくれるだろう」
大司教「しかし、それは彼自身の力によるものでは無いというのがな」
剣聖「・・・同意する」
行政官「続けてください」
大司教「勇者には、どこか普通でない部分が必要というのは儂の持論だが。今日の彼、おそらく普通なのだ」
行政官「なんだかはっきりしませんね。彼が普通でないことは、明らかだと思いますが」
大司教「この世界ではな。だが、異世界ではどうだったのだろうか」
大司教「彼が、彼の育った故郷でどれほどの男であったと思う?儂は、凡百に埋もれる一人の普通であったと思うよ」
行政官「ちなみにどういった点から、そのように思われるのですか?」
剣聖「・・・奴の顔は、幼すぎる」
大司教「うむ、社会は異常者に厳しい。異物の排除が安定を生むことを知っているからな」
大司教「世の異常者達は必然的に、多くの困難に立ち向かうことになるであろう。しかし彼は、困難を超えてきた人間とは到底思えぬ人相であった」
大司教「それに加えて、あの貧相な体つき。力に驕った態度。神に授けられた、あの力が無ければ道端の石ころよ」
行政官「なるほど。しかし、あれほどの力があれば魔王討伐も容易いのでは」
大司教「確かに。あの力ならば復活した魔王と言えど対抗できはすまい」
剣聖「買いかぶりすぎだな」
剣聖「・・・それほど、あの優男は強くはないぞ」
行政官「剣聖殿の剣を片手で止めるほどの男ですよ?」
剣聖「力はな。だが魔王は力だけで戦える相手ではない」
剣聖「魔王は、力で及ばないとわかれば躊躇なくからめ手を使ってくるだろう」
行政官「搦め手」
剣聖「脅し、賺し・・・そうだな、例えば若い女を人質にとるとか」
大司教「あれだけ強ければ、対処できそうではあるが」
剣聖「できんな。あの男には歴戦の戦士が放つ強者の貫録がなかった。行く手を阻む大壁に立ち向かう経験を、ろくにしていないのだろう」
剣聖「童貞は、初夜に想定外のことが起きればパニックを起こす。折れてしまう」
剣聖「強き心があれば、立ち直ることもできよう。しかし、あの男にはそれができるだろうか」
行政官「これから経験していけばいいのでは?」
剣聖「あの妙な力が、それを許すまい。あの男が、初めて出会うであろう困難は、それはそれは強大なものだろう」
剣聖「なにせ、神から与えられた力ですら簡単には超えられない壁なのだから」
行政官「・・・神から与えられた力。そう、そこも問題なんですよね。まさか異教の神の力を授かるとは」
大司教「なに構わんさ、儂を含め女神正教は女神様を唯一神としているわけではない」
行政官「しかし、神託は女神正教から・・・」
大司教「女神様だって、他の神の肝入りに乗っかることもあろうさ」
行政官「大司教様、意外に融通が利きますよね」
大司教「意外には、余計じゃな」
行政官「そういえば勇者の印は、確認していませんでしたね」
剣聖「あの大騒ぎの後だ、忘れても致し方あるまい」
大司教「まあ、そこはどうとでもなるし」
行政官「それもそうですね・・・正直に申し上げると、私は彼を勇者に認定するべきだと考えているのですが」
大司教「力量は申し分ないのではないか。何より彼は、神から力を授かっている」
行政官「そう、先代勇者と同じ。神に与えられた力を彼は持っている」
行政官「神の助けがなくては、魔王には勝てないのでは?そうだとすれば、彼は最も勇者に近い男です」
大司教「剣聖殿の言いようも最もではあるがのう。しかし、その心配も杞憂に終わるやもしれんぞ」
剣聖「・・・俺の意見は変わらん。奴に、勇者は勤まらん」
剣聖「それに、アンタらは一つ間違えている」
行政官「?」
剣聖「先代勇者は、神の助けなど得ていない」
――――――
俺が勇者と出会ったのは、東の大都市に隣接するスラム街だった
経緯は省くが、そこで俺は勇者に雇われた
「魔王を滅ぼす旅に同行して欲しい。報酬ははずむ」
提示された金額は、命をかけるに十分なものだった
それに加え、魔王討伐後に得られるであろう名声や国からの褒賞を考えれば断る理由などなかった
――――――
大司教「一人旅ではなかったのか!?」
剣聖「・・・そうだ、奴の背中は俺が守った」
行政官「ではなぜ、そのような重大な事実が伏せられているのですか?」
剣聖「俺は下賤な傭兵だ。手を出した悪事も数知れぬ。そんな俺の存在を、国が認めなかったのさ」
剣聖「まあ、俺としても勇者の仲間として諸手を振って表参道を歩くつもりはなかったがな」
剣聖「それでも剣聖として崇められる程度の地位と名声は頂いたから不満はない」
大司教「ふうむ、剣聖殿がこの勇者選定に面接官として参加している理由にはそれもあったのか」
――――――
勇者は、後の世に知られている女神の加護などは受けてはいなかった
確かに剣と魔法の腕は、尋常ならざるものであったが
全て人間の範疇に収まるものだ
そうでなくては、この俺を雇ったりはしなかっただろう
そんな勇者が魔王を倒し得たのは、その覚悟にあった
魔王「ふふふ、たった二人で我の下までたどり着くとは驚嘆に値するぞ」
勇者「それは違う、俺たちは二人だったからこそここまでたどり着いたんだ」
剣士「大人数であれば、魔王城に入る前に捕捉されて数ですりつぶされていただろうよ・・・」
魔王「それでもさ」
魔王「我は慎重な男だ、実のところお前たち二人の情報は得ていた」
剣士「・・・」
魔王「我が魔王軍幹部を悉く暗殺していったお前たちのことを、我が知らないはずがないであろう」
勇者「ならば何故、魔王城の警備を俺たちは抜けられた?お前が慎重な男だというなら、万全な警備体制を引くこともできたはずだ」
魔王「それだけ、お前たちの行動が迅速だったのだ。幹部を殺され、組織の命令系統が混乱していたこともある」
魔王「だが、それ以上に。我は、お前たちに会いたかったのだ」
勇者「戦闘狂め・・・」
魔王「勘違いするな。戦うためではない」
勇者「では、どういうつもりだ」
剣士「勇者、奴は俺たちを取り込むつもりだ」
魔王「察しが良くて助かる。まあ、その通りなのだ」
魔王「そうだな。魔王軍幹部の席はもちろん、人間たちを支配するうえでの助言役」
魔王「お主たちが望むのであれば、人間達への幾何かの温情も与えようではないか。勇者よどうだ?」
勇者「・・・ないな。俺は簒奪者には容赦しない」
魔王「即答か。では、やり方を変えてみよう」
魔王「これを見ろ」
肉塊「・・・」モゾ
剣士「新手の魔物か?」
勇者「なんだこれは」
肉塊「・・・ユ・・・ウシャ」
勇者「!?」
勇者「・・・その声は!?魔王!彼女に何をした!」
魔王「ふふふ、声だけでわかるか。素晴らしい洞察力だ」
魔王「そう、お前が故郷に置いてきた恋人だよ」
勇者「きさまああああああああああ!」
肉塊「ユウ・・・シャユ・・・ウシャユ・・・ウシャ」
剣士「・・・落ち着け勇者。魔王、その女?その肉塊はまだ生きているのだな」
魔王「もちろんさ。もし、お前らが我が陣営に加わるというなら元に戻してやる」
勇者「・・・ぐ」
剣士「勇者、判断はお前に任せる。所詮、俺は雇われだからな」
魔王「考える時間をやろう、そうだな一晩で答えを聞かせてもらおうか」
温情とも思える魔王の振舞に、俺は危惧を感じた
一晩あれば、大陸中に散っている魔物どもを呼び戻すこともできるであろうからだ
魔王を打倒す唯一無二のチャンスが今、その時にあることを勇者に伝えることもできた
しかし、勇者の苦悶の表情に
愛する女の命を握られた男に、いったい誰が物申せると言うのだ
俺は傭兵だ
そして勇者は雇い主
勇者と共に命を散らす覚悟、職業傭兵としての矜持は俺にもあった
勇者「か、彼女は・・・魔物に両親を殺された」
勇者「俺は簒奪者には容赦しない・・・そして彼女は、俺とともに心を同じくしている」
勇者「なれば、俺がやることは一つ・・・魔王、お前を殺す!」
魔王「平和のために自分の女を捨てるか!」
魔王「愚か者め!ならばかかってくるがよい!」
――――――
魔王との死闘は半日も続いた
肉塊は魔王の死と同時に動かなくなった
おそらく魔王からの魔力の供給で生きながらえていたのであろう
勇者は涙を流さなかった
ただ肉塊を優しく抱きかかえ
「王都に帰ろう」
一言だけ声を漏らした
それが俺に向けられた言葉だったのか
彼女に向けられたものだったのか、俺にはわからなかった
――――――
剣聖「いま思えば、勇者が子を為そうとしなかったのは。彼女に操を立てていたのかもしれんな・・・」
大司教「それはちょっと疑問じゃが・・・」
剣聖「とにかく」
剣聖「勇者に必要なものは、神の加護なんかではない。決して折れぬ意思、心。それこそが必要なのだ」
剣聖「俺には、あの優男に、勇者と同じことができるとは到底思えない」
行政官「女神の加護は教会の偽りであったのですか・・・?」
大司教「儂も知らん。だが、民の求心力を求めていた当時の教会なら、それぐらいやるかもしれん」
剣聖「勇者は貰えるものは貰う主義だったからな。教会の嘘に乗っかるのが自分の利益になると踏んだのだろう」
行政官「では、勇者様は純粋に自身の」
行政官「人間としての力だけで戦ったというわけですね・・・?」
剣聖「・・・忘れているぞ」
大司教「?」
剣聖「勇者自身の力。それと、俺の力だ・・・」
行政官「ふふふ、失礼。そうでした」
行政官「しかしそれでも尚、私は彼の力は余りあると思いますが」
剣聖「・・・これは俺の考えだ。同意を求めているわけではない」
大司教「まあ、そうであろうな。しかし、異教徒とは言え神から力を授かっている男だ」
大司教「先代勇者すら得ていない力を、あの優男は持っている」
大司教「その事実からは目を背けられぬ。儂も、一宗教家として彼を支持する以外に道はない」
剣聖「ふむ」
行政官「それにやはりですね。同じ状況にあっても、彼なら神の力で人質を元に戻すこともできると思うのですよ」
剣聖「魔王は、自身を慎重な男だと言っていた。奴の情報を集め、対策ぐらいはうつだろう」
大司教「しかし、剣聖殿がそうであったように彼は単独かつ迅速に動くことができよう」
大司教「対策を打たれる前に、倒してしまえばよいのだ」
剣聖「二度、同じ手が通じるとは思えんが」
行政官「堂々巡りですね」
行政官「そうですね・・・ほら、もう外は真っ暗ですよ
行政官「そろそろ採決に入りましょうか」
剣聖「・・・む」
大司教「拙速ではないか?」
行政官「時間は有限です」
大司教「・・・」
行政官「・・・それでは、採決に入ります」
行政官「神から力を授かった優男、彼は勇者足り得るか?」
行政官「可」
大司教「可」
剣聖「・・・不可」
行政官「反対1で勇者認定ならず。それでは、皆さん次回またお会いしましょう」
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二人目 異世界転移最強の男 勇者認定ならず
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