ある夜・天候→曇り 建造物内 七
ちょっとした区切りが付きます。
これからもどうか、よろしくおねがいしますね~
三人は、建物内のある大扉の前にいた。
その大扉には、普通扉にはあるはずのノブや取っ手がなく、表面にあるのは、右端にちょこんとつけられたダイヤルナンバーロックタイプの電子錠だけだった。
「ふぇぇ、大きいな…。私が居た部屋の4倍くらい?」
只々驚きから青年に問いかける少女。「多分、それより大きいよ」と、青年は唖然とした様子で応える。
「ん…あれ、合わないな。おかしい…」
キリキリとダイヤルを回しながらも、不満気な顔をしている女性に気づいた青年は、
「鍵番号と合わないんですか?」
と、歩み寄りながら聞いた。女性は、無言のまま頷いた。青年は、「ちょっと失礼」と言ってダイヤルを一見し、おもむろに右手でダイヤルを掴んだ。そして女性の方を向き、「この鍵、壊していいですよね?」と聞いた。
女性は、壊すというワードに疑問を抱きながらも、「え、えぇ。勿論よ」と答えた。
「じゃあ、遠慮しないでやりますね。多分うるさいので、二人共耳を押さえておくといいかもしれないです」
と青年が言うので、女性と少女は両耳をしっかり押さえた。
「[黒黄金]」
青年が少し力の籠もった声で言うと、ビキビキと音を立て、彼の右腕から黒い金属が発生した。それは、ダイヤルの微細な隙間を、全て全て埋めるように、内部へと侵入していく。
「よし、完全に入った。あとは引っこ抜くだけだ」
呼吸を、整える。最後に、大きくいきを吸って、
「フンッッ!!」
気合と共に力任せに右腕を引いた。盛大な金属音と、配線がバツバツ切れる音、それらが同時に鳴り響く。
入れ替えるように今度は、[黒黄金]を纏わせた左手を大扉に叩き付け、五指を表面に喰い込ませる。扉の内側からガキンッと音が聞こえた。[黒黄金]が扉を完全に貫き、裏側で返しを作ったのだ。
青年は、無言で左手を引き、ゆっくりと大扉を開いた。
その中には、数え切ることが不可能とすら思われるほどの量の札束と、数々の武器類、様々な宝石が、整理されて置いてあった。
「こ、こんな沢山……」
女性は唖然とした顔でそう言い、ゆっくりと、大扉の向こう、金庫室へと入っていく。青年と少女もそれに続いた。
「これ、本当に私と妹で分けるってことにしていいの?」
女性の質問に、青年は「少しは僕らも頂きますけどね」と返す。その返事に、女性の顔は感謝の色を浮かべた。
そして女性は、青年にも少女にも聞こえない音量で「ありがとう」と言い、陳列されている武器を見るために、壁際まで歩いた。
青年が宝石類を興味津々といった様子で眺めていると、同じ様に宝石棚をまじまじと眺めている少女がいた。そのうち少女は、棚から宝石を一つ取り出して、熱心に眺め始めた。
青年は少女に歩み寄り、「ちょっと見せてくれる?」と聞いた。少女は「うん、これ」と言ってその宝石を見せた。それは、赤褐色・青・乳白色の縞模様が入った一欠の宝石だった。
「あ、これは縞瑪瑙だね。しかも、一つの石に三色とも入ってるんだ。すごく貴重品だよ」
と、青年は言った。
「瑪瑙ちゃんが持っていなよ。うん、そうあるべきだ」
そういった青年は、左手から[黒黄金]を発生させ、瑪瑙石の側面を囲むようにして包んだ。そうして出来上がった金具にハーフペルジアンという編み方で編まれた鎖を付けた。
ただの一欠の宝石は、美しい宝石のネックレスとなっていた。青年はそのネックレスを少女の首にかけ、「重くない?」と聞いた。
少女は、
「重くないよ。ありがと」
と答えた。
今回で、三人称視点の展開は終わりでございます。
ここから先のお話は、綾斗視点で書いていきます。