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闇カラ光  作者: 斬戸零也
第一章 出会いは案外辛辣で
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ある夜・天候→雨 建造物内 参

本作ヒロイン登場〜。絵を描いては見たけど、目が顔の中にかけないんだよなぁ…

 黒い影の球体から吐き出されてきた死体の一部を紹介すると、

 腕と脚を等間隔に輪切りにされ、苦悶に顔を歪める死体。

 上顎から先がさっぱりない死体。両足が脛で曲がっている死体。

 片目が転がり出、転がり出ている眼球がある方の顔半分の皮膚が剥がされた上、首に幾つもの小さな穴が空いた死体。

 肺があったであろう部位に、肺の形の穴が空いた死体。

 …………一つとして、同じ死に方をしていない。


「皆死んでる……当たり前か。自分が一番嫌な死に方をノーシーボで体験させる…。酷いよな」


 青年は、目に止まった死体を仰向けにする。それは損傷がなく、綺麗な女性の死体だった。首に指の跡がうっすら付いている。恐らく、首を絞めたのだ。自分のした想像が、実体を持って。窒息死した割に、辛さのない死に顔だった。


「これは…傷付けづらい。折角綺麗な死に方をしたんだし、保存しておこうかな。どこかで影も返してあげる。えーっと……」


 死体を弄り(まさぐり)、財布を取り出す。その中に入っている運転免許証か何かを見つけ、カタカナで表記されたその名前を口にする。


「うん、約束するよ。ウチミ メイさん。暫く、お休み」


 死体を青年自身の影の中に入れ、沈み込ませていく。


「さて、と。何か料理を作る前に結構食べちゃったしなぁ…ま、迷惑料としてお金と、もしあれば貴金属類も頂こうっと」


 少し上機嫌気味(じょうきげんぎみ)に一歩を踏み出した青年。彼の耳に、誰かの小さな泣き声が聞こえた。


   ヒグッ…グスッ ひっく…ヒグっ…


「これは…子供の泣き声?しかも、多分女の子だよな」


 青年が辺りをキョロキョロと見回すと、軽い軋みとともに薄っすら開いている扉を見つけた。青年は注意深くそこまで歩いて行き、ドアをゆっくりと押し開ける。

 その部屋は、ひどく殺風景(さっぷうけい)な部屋だった。はめ殺しの小さな窓が一つ、かろうじて月明かりを部屋に取り入れている。開けたドアのほぼ真正面にすえてある低い角テーブルと、その前に座布団(ほぼほぼ煎餅座布団だ)。隅にある引き戸は、トイレなのだろう。

 部屋の奥まった角には、金属製の骨組みむき出しの簡素過ぎるベッドが置かれており、その上には薄いマットレス。これまた薄い掛け布団が畳んでおいてある。

 声の主である少女は、そんなベッドの上で少し丸まって泣いていた。

 青年は、あまり大きな音を立てないように、慎重に近づく。そして、少女のすぐ側にしゃがみ込んだ。少女と目線の高さを合わせる為だ。


「ねぇ、君」


 青年は、短くそう語りかける。少女の肩が小さく跳ね、その顔がゆっくり青年の方を向いた。その(まなじり)に涙を貯め、小さくフルフルと体を震わせている。

 15歳かそこらの、可愛らしい女の子だ。しかし、その顔の右半分は金属製の板で覆われている。鼻と口は、上手いこと避けられていた。


「大丈夫、僕は君に何もしないよ。傷つけもしない…」


 着ていた外套のポケットやら、Gパンのポケットやらなんやらを全部ひっくり返してナイフや銃が入っていない事を証明する。少女はそれで少し安心したようで、身体から震えが消えていた。


「ちょっと遅れたね。僕は関崎綾斗。こっちの世界……裏側の世界には最近なれてきた程度、かな。君の名前は?」


 青年は、少し軽い雰囲気でそう言った。少女があまり緊張しないよう、配慮しているのだろう。

 少女は、「柴咲(しばさき)………瑪瑙(めのう)」と小さく答えた。


「柴咲瑪瑙、かぁ。瑪瑙といったら…」


 青年は少し考え、何かを指折り数えている。そして、何か思い当たったようにポンッと拳で手のひらを叩く。


「君、8月生まれ?」


 少女はパァッ、と目を輝かせる。表情も、嬉しそうなものが浮かぶ。


「凄い…!どうやって当てたの?」


「瑪瑙ってね、8月の誕生石なんだ。ほら、その月の生まれの人が持ってると幸運になれるってやつ。多分、多分だけどさ、君の両親はその名前を入れて、幸せに、幸運になって欲しいって思ったんだね」


 「うん、そうなんだ。お母さんから言われたの、

『瑪瑙っていうのは、とってもキレイな宝石なの。しかも、あなたの事を護ってくれるのよ』

って。こんな所にいるけど、おかしくなったりしないでしっかり生きてるのは、きっとそのお陰…」


 少し寂しそうな声で、そういう少女。青年は少女の頭に優しく手を載せ、ゆっくり撫でる。


「ん…………どうしたの?」


 少女は不思議そうな顔で青年の顔を見た。


「何でもないよ。でも、こうしてあげたくなったんだ」


 青年は、そのまま少女を抱き寄せる。少女は「わっ、わっ…」と少し慌てていたが、抵抗は特にしなかった。むしろ、そうされるに委ねていた。


「きっとそうだね。名前に、瑪瑙ちゃんのお母さんの想いに、護られてきたんだ」


 少女は、顔をほんのり赤く染めていた。

 暫く少女の頭を撫でていた青年は、最後にポンポンと少女の頭を撫ぜて手を離した。


「さて、ここから出よう。ちょっとばかり物を貰って、あまり目立たない所からね」

 この一連の章で出てくる名前のついた人達の能力は、最後の方に載せることにします。


 あ、でも、今回出てきた人(二人だろうがボゲぇ)の能力と外見は、次の投稿で紹介します。

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