表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇カラ光  作者: 斬戸零也
第一章 出会いは案外辛辣で
3/13

ある夜・天候→雨 建造物内 弐

 黒く細長い、(うごめ)く何かが頭領を包み込んで、潰しきった。部下の目にはそうとしか映らなかった。

 

「な、何何だよアレ!」 「気色悪(きしょくわり)ぃ、穴だらけにしてやれ!」


 後ろでニタニタと余裕をかましていた部下たちが、一斉に銃を構える。だが、既に一人倒れていた。頭部、右肘から先、左腕、臍から下が存在していない。

 また、青年の方から音が聞こえてくる。

   皮膚・筋肉・内蔵・神経・血管・骨

 その全てを一緒くたにして咀嚼(そしゃく)する音。


「ヒィッ?!彼奴(あいつ)人を食ってやがるぞ!」 「早くぶっ殺せ!」 「おい、戦闘員なら女も来い!」


 ふらり、と青年が立ち上がる。天井の薄ら明るい蛍光灯に照らされた青年の顔は、仄かに嬉しそうだった。


「いてて………殴られちゃったよ、ったく…。でも、肉が食えたし、満足だなぁ」


 部下たちは、恐ろしさとはこの事かと心の底から思った。彼奴(あいつ)は人間じゃない。いや、生物としてはもちろん人間だ。だが、同じ次元に存在していないんだ。そうとしか思えなかった。


「ガッっ?!あがっ、クッ、あっ……」


 妙なうめき声とともに、また一人倒れる。()()()()()()()()のにだ。女の戦闘員が、あることに気づいた。


「ッ?!この死体、影が無ッッ」


 その女も、男よりは静かに、かつ速やかに倒れた。その体には、影がない。


 「これで、3人分集まった。全員殺してしまうには十分な量だな…」


 青年が、俯いたまま呟く。


「おい、彼奴まさか異能者じゃ無ぇ(ねぇ)のか?」 


「はぁ?!嘘だろおい!」


「でも、それ以外信じらんねぇよ。影を消しちまうなんて、()()()()()()()()()()()()()()()


 突如、青年から深く暗い気配を感じる。彼は顔を上げ、その顔を晒した。

 片目がおかしい。左目が黒く塗り潰されたように見え、そこから嫌な黒さを持った光が煌々(こうこう)と、又はチラチラと漏れ出していた。


「んー、もうちょっと食べれば満腹になレそうだ。誰カ、僕のデザートになってクレる人、居る?」


 カツッカツッと底の厚いブーツの靴音を鳴らして部下たちに近づく青年。一人が、恐怖の余り勝手に引き金を引いた。


「ヒィっ!来、来ないで、近寄らないでぇッ!」


 初めて響き始めた銃声は一瞬で何重奏にもなり、それ程狭くもない部屋を埋め尽くす。しかし、青年には一発も届かない。バキバキと音を立てて青年の足元から突如せり上がった、黒みを帯びた金属の壁が、全て弾いてしまっていたからだ。


「撃てっ、撃てぇ!!弾が空になる前に弾倉は変えろ!とにかく撃て!!」


 ある男の声に反してその直後、全員の銃の弾倉がほぼ同時に空になった。ほんの一瞬、静寂が起こる。


「ははっ、ラッキーだね」


 青年は、右の人差し指を上に向ける。その直前に、金属の壁が、乾いた粘土のように崩れ落ちた。

 青年の人差し指に、黒いナニカが集約されていく。それは、何となく人の形をしていた。そう、殺した3人の影だ。

 人差し指を、銃の弾倉替えをしている部下達の方へ向ける。誰も、弾倉をセットできていない。

 

 青年が、呟いた。


 【影狼(かげろう)呑影(おんえい)禍堕(まがお)とし】


 右手を開き、掌の上で影を球体にする。それを地面に押し付け、沈み込ませる。

 直後、青年の影以外が全て五重になり、音もなく急激に収縮した。光源の方向を無視したその現象によってできた、通常の5倍は濃い影は、触手のように伸びて影の作り主に絡みつき、影自体が虚空に浮かぶ球体となっていく。

 誰も、抜け出せはしなかった。 


 三十近く浮かぶ黒い球体と、その大凡(おおよそ)中心に立つ青年。異様な光景が、より異様な光景となった。

 球体のうち一つが爆ぜ、死体を吐き出した。

 その死体の心臓がある部位には、釘が30本も刺さっている。

 球体が、爆ぜる。その度、酷い死体が、(むご)たらしい肉塊が、吐き出されていく。

次話、エグい表現が飛び出します。お気を付けください。どうか、どうかぁ…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ