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文化祭編8-13

この話は前話の花宮葵視点になります。

「麗ちゃん…」


ステージ上で麗ちゃんが告白の返事を貰っていた。


私や天野さん、神崎さんがいるステージ横の放送室からは、客席から見えない場所で泣いている麗ちゃんの姿が丸見えだった。


「花宮さん、暗幕の操作は任せて一ノ瀬さんのところに行ってあげて」


「え、でももしかしたらナレーションが必要になるかも知れないですよ」


行きたい気持ちはあるけどナレーションを放棄するわけにはいかない。

劇としては成立しているのかはわからないがここまで生徒会のメンバーが頑張って作った物を私が投げ出すわけにはいかない。


「もし必要になったら私が代わりにやればいいだけよ。でも今の一ノ瀬さんに声をかけてあげることは私にはできないわ」


「ありがとうございます」


それだけ言い残して、すぐに麗ちゃんの元に行った。


「麗ちゃん…」

「葵、私振られちゃった」


「うん。でも、格好良かったよ。頑張ったね麗ちゃん」


「そっか。私頑張ったんだね。ぐすっ、葵~」


再び麗ちゃんは泣き出してしまった。

だが、先ほどまでのドラマの女優さん見たいな綺麗な泣き顔じゃなくて、小学生見たいな顔で。


こんな姿は初めて見た。

麗ちゃんは高1なのにバリバリ仕事をしていて、学校でもいつも大人びているから、こういう時の表情だけは年相応でどこか安心した。


しばらく、何も話さず麗ちゃんが泣き止むまで待っていた。


私の胸のところで泣いていたのでクラスTシャツが化粧でぐちゃぐちゃになっているが、これで落ち着くなら安いものだろう。


「ねえ、麗ちゃん。今日はどっか行かない?カラオケとかでゆっくり愚痴でも何でも聞くよ」


麗ちゃんが、珍しいものを見るような目でこちらを向いたと思ったら、また拗ねた小学生のように泣き出した。


「ぐすっ、仕事…」


「あ、そっか。じゃあいいや」


「良くないよ。葵が慰めてくれるって知ってたら、今日は仕事入れなかったのに…」


ああ、やっぱり麗ちゃんは振られるの覚悟で告白をしていたのか。

私ですら伊澤先輩は神無さんのことを選ぶ気がしていたし、それに気づかないほど麗ちゃんは鈍感じゃないよね。


振られても完全に心が折れないように仕事を入れたのかな。そういう所はやっぱり大人びているのかな。


「私が慰めたり、励ましたりしないと思った?」


「うん、葵って結構さばさばしてるし、勝ち目もないのになんで告白したのとか、わざわざ十川先輩を焚き付ける必要は無かったんじゃないのとか言われると思ってた。」


「私の印象最悪すぎない?たしかに私はそういうのが苦手だけど、麗ちゃんは普段は慰めたり励ましたりする必要がなさそうだからしないだけだよ。

それに私には告白する勇気すらないから尊敬してるの」


「葵、なんか今日は本当に優しいね。カラオケは明日行こうよ」


「うん、そうしようか」


「葵、ありがとう。なんか立ち直れそうな気がする」


立ち直れたではなく、立ち直れそうなんだね。


まあ麗ちゃんにとっては初恋だろうし、ちゃんと立ち直るにはまだまだ時間はかかるよね。でも麗ちゃんならいつか伊澤先輩みたいな良い人に出会えるよ。なんたって私の大切な友達だからね。


お読み頂きありがとうございました。


今回の話は蛇足だと言われそうですが、どうしても前話の後の麗を書きたかったので入れてしまいました!


今回の話で文化祭編は終わりなので、文化祭編の感想や評価などを頂けると嬉しいです!

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