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文化祭編8-11

今回の話では劇中での心の声は『』で表現しています。

予想通りというべきなのか、体育館にはほぼ全校生徒がいるんじゃないかと思うほどの生徒がいた。


一瞬雰囲気に呑まれかけたが、この期に及んで慌てることもない。やらなければいけないことは決まっているのだから。


暗転されているステージで待機していると、花宮さんのナレーションが始まった。


「ここはとあるパーティー会場。有名企業の社長が集まるパーティーに自社の社長に連れてこられた佑真は運命的な出会いをする。しかし、その運命の相手は一人ではなかった」


花宮さんのナレーションが終わるとステージが明転されて、僕が演じる佑真がパーティーに飽きて会場のバルコニーの陰で一人でワインを飲んでいる場面から、劇が始まる。


『はあ、なんで俺がこんなところに来ないといけないんだよ。社長は他の社長と内密の話があるとか言ってどこかに行ってしまったし、もう俺ここにいる必要なんてないんじゃないかな。まあ、タダ酒飲んで、ゆっくりしてようかな』


心の声は事前に録音して流しているためそれに合わせて動きを付ける。


暫く経つと僕のいるエントランスに一ノ瀬さんが演じる黒いドレスをきた妖艶な魅力を持っている女性がこちらに来た。


「はあ、鬱陶しい。綺麗だとかお父様にはお世話になっているとかそれしか言えないのかよ」


『うわ、凄い美人だけど口は悪いな。まあ、ここに俺がいるのも気づいていないようだし独り言だとだれでもこんなものか。

それにこのパーティに来ているくらいだからどこかの社長の娘か何かだろう。客寄せパンダのような役割で呼ばれているだろうし、文句を言いたくなる気持ちもわからなくはないな。

あ、やばい。10分以上ここにいたし、くしゃみが…』


「ふぇくしょん」


「え!?誰かいるんですか」


「すみません、出ていくタイミングを逃してしまって」


「それは大変失礼しました。先ほど聞いたことはご内密に。では…」


「もしよかったらもう少しここにいませんか。一人でいるのもつまらなくて」


女性がエントランスからパーティー会場に戻ろうとしたところをついつい止めてしまったら、彼女は怪訝そうな顔で佑真のほうを見る。


「どうせ、私を通じて、私の父の会社とコネを作る気でしょう。そういうのは結構です」


「いや、俺はあんたのことは知らんし、ただの暇つぶしで声を掛けたんだけど」


「私のことを知らないの?」


「ああ、あんたそんな有名人なのか」


「ふふ、本当に失礼な人ね。まあ、それならいいわ。私もパーティに戻るのはだるいし話に付き合ってあげる」


それからしばらく彼女とどうでもいい話をしていると会場のほうから美しい音色が響いてきた。


「綺麗だな」


「え、急に何よ。そんなの当たり前でしょう。元の美貌に満身しないで毎日スキンケアやストレッチをかかしていないのだから」


「お、おう。そうだな」


「何よ、あなたから言ったくせに」


「いや、綺麗って言ったのはお前にじゃなくてこのピアノの音色にだったんだが」


「ぶっ飛ばすわよ?」


「いや、お前が勝手に勘違いしたんだろう」


「まあ、いいわ。それこそ当たり前よ。今ピアノを弾いているのは佳奈なんだから。ほら覗いてみなさい」


神無が演じる佳奈がライトアップされる。神無はサングラスをした状態で実際にピアノを弾いている。最初は弾く真似だけで音は別に入れるつもりだったが神無があっさり弾いたので実際に弾くことになった。


「あの人って盲目の天才ピアニストって呼ばれている人?」


「そうよ、そして私の唯一の友達よ。というか私のことは知らないのに彼女のことは知っているのね」


「流石にな。有名だしあれだけの美女は一回でもテレビとかで見たら忘れないって」


「美女を忘れないということなら、私のことも2度と忘れないことね」


「ああ、覚えておくわ。俺は新井佑真、あんたの名前は?」


「そういえば、名乗ってなかったわね。私の名前は…」


「美和様、堀江工業の社長が挨拶をしたいと言っていますのでお戻りを」


「堀江工業って俺の会社…」


「あら、あなた堀江工業の社員さんだったのね。取引先の社長の娘くらい覚えておきなさい。改めて自己紹介するわ。富田自動車社長の一人娘の富田美和よ」


「ま、まじか」


「あなたとは長い付き合いになりそうね」


それだけ言って富田さんはいなくなった。

その後は出ていくタイミングがなくしばらくエントランスで隠れていると、演奏が終わったピアニストがエントランスに来た。


『目が見えないのに大丈夫なのか?』


「ええ、大丈夫ですよ。佑真さん」


「え、俺声に出してましたか?というかなぜ僕の名前を知っているんですか?」



「私は目は見えませんが空間把握や人の位置、心を読みとることに長けているんですよ」


「なるほど、それなら良かった」


「良かった?」


『「ええ、それならエントランスに出ても落ちたりしないから心配ないです」』


「あなたは裏表が無い人なのですね。思っていることと声が全く同じです。美和ちゃんが気にいるのもわかります」


彼女はサングラスを掛けていたからはっきりとはわからなかったが口元は微笑んでいるように見えてどこか楽しそうに感じた。


そこから劇は順調に進み、美和と佳奈とどんどん仲良くなっていった。そのあとに佑真は二人に別々に告白されて答えを保留にしていた。


その状態が暫く続き、二人一斉に佑真の元に来る。


「佑真」「佑真さん」


「おう、二人共どうした」


「あんたはどっちを選ぶの」「あなたはどちらを選ぶんですか?」


二人が佑真に近づき、もう返事を先延ばしできないことを悟る。


ここで劇の台本は終わった。初めはここから佳奈ルートと美和ルートの分岐があったが、一ノ瀬さんが雪さんに台本の訂正を依頼した時に、雪さんのはからいで2つの分岐が消えてここからは自由演技ということになった。


そのためここからは僕が告白の返事をして、そのあとは三人でアドリブで劇を進めることになる。


「俺は…」



お読み頂きありがとうございます。


劇の台本は実際に書きましたが8000文字ほどになってしまったので、泣く泣く最初と最後だけを入れて残りはカットしました。


この話と次の話は自分の中で今までの集大成のような気持ちで書いているので、次の話も楽しみにしていただけたら嬉しいです!

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