寮生活2-2
自室に戻り、荷物の整理整頓をおこなう。
かなり面倒だが、明日から学校だし今やっておかないとな。
今日は色々動いて疲れたから早めに寝たいし。
キャリーバッグから荷物を全部出すと、写真たてに入った写真に目が留まった。
前の学校の親友である聡とのツーショットの写真で、僕が引っ越すときに写真たてごと聡がくれたものだった。せっかくだし、部屋の勉強机に飾っておこうかな。
今はウィッグをつけているのでこの時よりも髪は長いが、普段から女の子に間違われていたため、この写真を見られるだけでは男だろといわれることはないだろう。
これを見て聡と付き合ってるんじゃないかとか、言われるのはちょっと面倒だけど、普通に男友達といえばいいだろう。まあこの学校は付き合うのが禁止とかでもないし誤解されたとしてもたいした問題はない。
そもそも誰も僕の部屋にはいらないだろうから尚更大丈夫だろう。
その後、化粧品や制服、女性物の服などを整頓していたら気づくと17時30分になっていた。
早めに行って姉さんの手伝いでもしよう。皿だしくらいはできるだろうし。
一階の食堂に向かうとすでに5人分の皿が出されており、やや栗毛色の髪をした小柄な女性が一人座っていた。
「はじめまして、今日からこの寮に入りました。伊澤優です」
「はじめまして、3日前からこの寮でお世話になっている一年生の花宮葵です。今日寮にきたということは転校されてきた上級生の方でしょうか。入学式は今日でしたし」
目の前の女の子は物腰が柔らかい口調でいう。優しそうな女の子だな。
そういえば、学年を言ってなかったな。
「ええ、明日から2年生ですね。でも花宮さんのほうが先に学校に行っているのだからあなたのほうが先輩ね」
冗談まじりにいうと、彼女は微笑した。
しかしすぐに何かに気づいたように表情を曇らせた。
「伊澤さんってもしかして、伊澤先生の妹さんですか」
「ええ、そうよ」
別に言ってもいいだろうと素直に肯定する。まあ正確には妹じゃなくて弟なんだけどね。
「優、早いわね」
「うん、何か手伝えることはないかなって思ってちょっと早く来たんだけど」
「でも、花宮さんが手伝ってくれたから準備も全部終わってるわ」
黒いエプロンをはずしながらキッチンから出てきた姉さんは話に入ってくる。
やっぱりいつもよりもテンションが低いな。
こうみると普通のかっこいい大人の女性に見える。
「名前…しかも呼び捨て…先生!なんでこの人のことは名前呼びなんですか。昨日からずっと頼んでるのに私のことはずっとしたの名前で呼んでくれないじゃないですか」
花宮さんの雰囲気が豹変して姉さんに駆け寄っていく。
「花宮さん、だから私は生徒に名前呼びはしないと言っているでしょう」
「でも伊澤さんには優って呼んでいたじゃないですか」
「おとっ、妹だからあたりまえじゃない。それに学校では優のことも名字で呼ぶわよ」
おい、弟といいかけたでしょと姉さんを睨むと姉さんがすーっと目をそむけた。
「じゃあ、私も学校ではいいです。でも、寮では葵って呼んでください」
押しが強すぎてついていけない…
もう彼女は姉さんに任せようと席をたちトイレに向かうことにした。