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生徒会長編5-13

「努力とか言っていたけど結局私よりあなたのほうが才能があっただけじゃない」


僕が勝ったら努力を認めるって言ってたはずなんだけど、何がなんでも認めたくないみたいだ。


「違いますよ。自分で言うのも嫌ですけど僕は立候補した人の中で一番練習した自信があります。そしてそれは去年の選挙での生徒会長も同じです」


「嘘よ、私が努力だけのやつに負けるわけがない。それにあれほど格好いい天野様が努力なんて格好悪いことをしているわけがない」


放送演説の時よりもはっきりと生徒会長の努力を否定した。


まだ体育館にはかなりの人数が残っているので、怒るのを我慢するべきだ。

でもそれは、怒らない理由にはならない。


ここで言い返さないと僕にとって大事な物を失ってしまう。友達や知り合いが馬鹿にされて黙っているくらいなら僕は他の人に何を言われてもいい。


「ふざ」


「くだらないですね」


僕が怒ろうとしたら誰かが先に蓮川さんを馬鹿にした。


この声はさっきどこかで聞いたような気がする。後ろを振り向くと先ほどのミスコンを取っていた一ノ瀬さんがいた。


「そんなことを言っているからあなたは負けたんですよ。どんなことでもトップの人や勝つ人は見えないところで努力をしています」


「あなたは1年の一ノ瀬さんよね?急に入ってきてなんの用?」


「あなたにではなく伊澤先輩に用事があったんですけどね。そんな大声で喧嘩していたらあなたの尊敬している天野さんにも丸聞こえですよ」


一ノ瀬さんが見た方向には苦笑いをしている生徒会長とそれを見て笑いを堪えきれずにお腹を抱えている副会長がいた。


「雪、やっとわかった?伊澤ちゃんが何に対して怒っていたか」


「わかったわ。私のためでしょ」


「正解、早く行って丸く収めてきなさい」


「ええ」


生徒会長が僕たちの方に近づいてきて、蓮川さんの方を向く。


「蓮川さん、私はあなたが格好良いって言ってくれた姿を見せるために努力をしてるわ。でも良い結果がでているなら努力でも才能でもどっちでもいいんじゃないかしら。大事なのは結果を出すことよ」


「だから才能に胡座をかいて努力せずに負けるのと負けた事を才能のせいにするのが私は一番格好悪いと思う」


急に声色が変わり、蓮川さんを睨み付ける。


「ご、ごめんなさい」


生徒会長の目付きが恐いのか、怒られて悲しいのか蓮川さんは青ざめて涙も出ないようだった。


「いいえ、私こそ言い過ぎたわ。でもさっきの演説も上手だったし、才能を言い訳にしなければあなたはもっと色々なことができると思う。だから頑張りなさい」


生徒会長の優しい言葉に今度は泣き出した。


「ごめんなさい。本当はわかってたけど、認めたくなくて…」


泣いていた蓮川さんを生徒会長はただ優しく抱きしめていた。


しばらく経って蓮川さんは泣き止んで教室に戻った。


「一ノ瀬さん、さっきはありがとう。一ノ瀬さんが割り込んでくれなかったら僕は蓮川さんにかなりきつく怒っていたと思う」


「いえ、そんなにたいしたことはしていないので」


「そういえば、僕に用事って?」


「ちょっと気になったことがあったので聞こうと思ってたんですけど今はやめておきます。明日の放課後空けといていただけますか?」


「ええ、いいですよ」


「ありがとうございます。それじゃあ失礼します」


彼女は一礼して教室に戻っていった。

何の話があるんだろう。彼女とは初対面だったと思うんだけど。


「伊澤さんちょっといいかしら」


生徒会長が何とも言えない表情で話しかけてきた。

読んでくださりありがとうございました。

8月中に生徒会長編を終わらせるつもりで金曜日から毎日投稿していましたが1話足りず終わりませんでした。明日投稿する話で終わります。


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