閑話(副会長視点)
今までは全て優視点で書いていましたがこの話だけは神崎朱音(生徒会副会長)視点で書いています。
雪とは学校が違ったけど、いとこ同士で小さい時からたまに遊んでいたので、かなり仲が良かった。
私は中学からの進学組だけど雪は高校から堀江学園に入学している。
クラスが違ったこともあり、高校で雪に会ったのは学校が始まってから2週間ほど経ってからだった。その時には雪が高校デビューをして声も口調も変えていて笑いを堪えるのが大変だった。
雪は私がこの学校にいることを忘れていたらしく、私がいることを覚えていたら高校デビューなんてしなかったとぼやいていた。
まあ私以外の同級生にはばれていないみたいだし雪の演技はかなり凄いとは思う。
2年生になって生徒会長に立候補した雪のことが心配で推薦人と副会長になって雪を支えた。
生徒会での一年間を考えるともう少しでこの生徒会が終わるのは少し寂しいな。
そんなことを考えながら生徒会室で作業をおこなっていると雪が入ってきた。
「お疲れ雪」
「うん、朱音に放送演説の説明任せてごめんね」
昼間は雪が他の用事があると言っていたから私1人で放送演説の説明をおこなった。
でも今日はトラブルもあったし、雪がいなくて良かったかもね。
まあ雪がいても特に何も言わずに縦ロールちゃんの話を受け流していた気はする。
でも伊澤ちゃんが雪のために怒ったのを見たら照れてみんなの前で素が出ていたかもしれないからやはりいなくて良かった気がする。
「別にいいよ。面白いものも見れたし」
「面白いもの?」
「ええ。伊澤ちゃんってあなたのお気に入りの子でしょ?」
「お気に入りって何よ。まあ寮も一緒だし、練習には付き合っているけど」
「やっぱりね」
「でもよくわかったね。伊澤さんの名前を出したことあったっけ?」
「言わなくてもわかるよ。雪の教えがちゃんと伝わってたし」
「あー大分叩き込んだしね。私も放送聞いていたけど上手かったよね」
どや顔で彼女は言うが全然違う。技術的な面ではなく心持ちとか努力をする意味とかが伝わっているということだ。
「上手かったけどそこじゃないよ」
「え、じゃあ何なの?それに面白いことって?」
「実はね~」
そのあと、照れている雪が見たくて一字一句漏らさず縦ロールちゃんと伊澤ちゃんの喧嘩を教えてしまった。ごめんね、伊澤ちゃん。
「そんなことがあったのね。まあ伊澤さんもGW中にかなり練習していたし努力を馬鹿にされたら腹もたつよね」
雪はフムフムと頷いて納得したように言う。
「あんたアホでしょ」
「なんで!?」
演技という皮を被っている時はあれだけかっこいいのに素だと本当にポンコツだな。
伊澤ちゃんが可哀想になってきたわ。
雪のためにあそこまで怒っていたのに本人には全然伝わらないなんて。
まあその分、伊澤ちゃんが生徒会長になったら私が目一杯優しくしてあげようかな。
お読みいただきありがとうございました。
優視点だと生徒会長と副会長の関係が書きづらかったので副会長視点で書きました。
ほとんどの話は優視点で書きますが、たまに別視点で書こうと思います。
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