生徒会長編5-7
「そういえば、なんで僕を呼んだんですか?」
呼ばれていたのに先に僕から話してしまったので、まだ生徒会長の用件を聞いてなかった。
「そうそう、忘れてたわ。GW明けに放送演説と選挙があるけど大丈夫なの?」
「練習はしているんですけど、あまり自信はないです」
「じゃあGWに合宿しましょう。まあ、合宿といっても寮でひたすら練習するだけだけどね」
「合宿は僕と生徒会長と神無でやるんですか」
「いいえ、十川さんはやらないわ。GWは実家に帰るみたい」
「そうなんですか、よく神無の予定を知ってましたね」
「ええ、仕事の依頼をしたんだけどGWは実家に帰るからって断られちゃってね」
「なるほど」
「だから、みっちり1対1で指導してあげるわ」
顔は笑っているのに目が笑っていない。これは頑張らないと死ぬかもしれない・・・
「噛みすぎ、話しのテンポが悪い、もう一回さっきのところからやるよ」
今日はGWが終わる2日前だ。GW最終日はともかく今日は学生が遊んだり、普段長期連休の取れない社会人が家族サービスをする日のはずだ。
こんな、地獄であるはずがない。
「生徒会長、ちょっと休ませてくださいよ」
ガラガラ声で僕は言うが全く聞き耳を持たない。
「大丈夫よ、1日あれば声は治るから放送演説に影響はないわ」
「そういう意味じゃないんですけど」
もうかれこれ8時間ほどぶっとうしで練習をしている。彼女は僕との練習の前に配信をしていたし、僕の練習を見ながら神無に依頼する予定だったサムネ作りもやっている。
体力は僕もあるほうだと思っていたけど、彼女の体力は僕とはレベルが違う。
「まあ、少しはましになったし、しばらく休憩にしましょう」
そういうと、彼女はサムネ作りの作業に戻った。
「生徒会長は休憩しないんですか」
「ええ、明日配信する分のものが終わってないからね」
「十川さんと違って私にはセンスがないから時間かけてでも納得できるものを作らないとね」
やっぱりすごいなこの人は。僕から見たら今作っているものはもう完成品として出してもいいくらいの物に見える。ここで満足しないでより良いものを作ろうとしているところにプロ意識を感じる。
僕も負けないように頑張らないとな。というかこんな忙しいのに手伝ってくれた生徒会長のためにも休んでる訳にはいかない。
その後、すぐに休憩するのをやめて僕は演説の練習、生徒会長はサムネ作りを延々とした。
GWは練習だけで終了したが、僕にとってはかなり有意義な時間だった気がする。演説も明らかに上手くなったし、何よりも自信がついた。
もし練習をしていなくても、どこかに行くわけでもないしネットサーフィンで時間は消えていただろう。それに比べたら100倍良い時間の使い方をした気がする。
GWが終わり今日は放送での演説の日だ。本番の選挙はまだ一週間ほど先だが自分の名前を全校生徒に覚えてもらう分にはかなり重要だろう。
1人2分とかなり短いので10人全員が放送室に集まることになっている。
だが、放送室にいるのは放送演説の説明をするためにきた副会長と放送部員数名をいれても10人もいないのでまだ半分程度は来ていないようだ。
緊張するから早く集まってくれないかなと思っていると見知らぬ金髪縦ロールの女の子が突然僕の方に近付いて来た。
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