学校生活4-2
今日の体育は一回目ということもあり、バスケかバドミントンのどちらかを選んでミニゲームをやるみたいだ。
聡がバスケ部だったこともあり、昼休みや放課後によく付き合わされていたから結構得意だったりする。
うまいところを見せて運動部に勧誘されるのも嫌だからバドミントンのほうがいいのかな。てもどっちみち本気は出せないから、比較的好きなバスケのほうがいいかな。
チームは適当に振り分けられ、こちらのチームには運動部らしい人はいない。相手には五條さんと三木さんのバレー部コンビとバスケ部の谷村さんがいる。
やる前からわかるくらいの戦力差ある。
試合が始まり案の定五條さんと谷村さんの活躍が目立つ。五條さんはドリブルはそこまでうまくないが、異常なまでの速さとジャンプ力のおかげで谷村さんがパスをだして五條さんがシュートするという単純な攻撃が誰も止めることができない。
身長の関係で僕は三木さんをマークしているけど、五條さんに着いたほうがいいかもしれない。
リバウンドは僕がそこそこ取れているが、パスを出すだけでシュートは打たないのでなかなか得点には繋がらない。
試合時間は5分だが2分経過した時点で10-0。これはもう勝てないな。
負けたほうは罰ゲームでシャトルランらしいが諦めよう。
あきらめムードがこちらのチームに出て来ている中、五條さんは試合中にも関わらず僕に近づいてきた。
「伊澤さん、仲良くやるのと手を抜くのは違うっすよ」
五條さんの表情は静かに怒りを浮かべていた。普段優しく明るい人だからこそ怒ると恐い。
「え?」
「できないのはしょうがないけどできるのにやらない人は嫌いっす」
声色は低く怒気が溢れている。
寮で会う彼女からは想像もできないような迫力に僕はたじろいでしまった。
スポーツをやっている人にとっては手を抜かれると言うのは腹立たしいことだろうし彼女が怒っているのは当然だろう。
たとえ体育の授業とはいえ本気でやらないのは失礼だ。
「わかった。本気でやるよ」
「それならいいっすけど」
五條さんが走っていった後に僕がマークしている三木さんも話しかけてくる。
「ごめんね、皐月は手を抜くのも抜かれるのも嫌いだから」
「いや、こっちが悪いから気にしないで」
五條さんのマークをしてる人にお願いしてマークチェンジをしてもらう。
「直接やるんすね」
「うん、本気でやるからには直接対決の方が分かりやすいからね」
「意外と負けず嫌いなんすね」
五條さんが小刻みにフェイントを入れて僕のマークを外してパスを受け取りジャンプシュートを打つがギリギリ追いつきブロックする。
ターンオーバーして、速攻で決めきれるかと思ったが、戻りが異常に速い。僕も足は速いほうなんだけどやっぱりすごいな。
「今のブロックでわかりました。やっぱりさっきまでは本気出してなかったんすね」
「まあちょっと色々あってね。でもここからは最後まで本気でやることにするよ」
五條さんのディフェンスはやはり上手く、ドリブルで抜くのは難しかったので、レッグスルーからのステップバックでミドルシュートを打つ。
ややコースがずれたがリングにあたりシュートが入る。
一発目が入ってよかった。
本気だすとか言っていきなり外したら格好悪すぎるからね。
「上手いとは思ってたけどこんなにすごかったんすね」
「ありがとう」
五條さんが心底驚いたように僕の方を見る。
そのあとは全力でやったが15-12で負けてしまった。
ゼロステップを何回かトラベリングとしてとられてしまったので、それがなければ勝てたかも知れないと思うと、
なんとも言えない気分になる。
本気でやると負けた時に悔しいから嫌なんだよな。
試合が終わり、五條さんが握手を求めてきた。
「本気でやったけど勝てなかったよ」
「チームは勝ちましたけど私との勝負は優さんの完勝っすよ。でも次は負けないっす。そういえばなんで最初は本気出さなかったんすか?」
ウィッグが取れるのが嫌だったし、本気を出すと運動部に勧誘されるのが目に見えていたからできれば本気をだしたくなかった。
でも五條さんには昨日運動部には入りたくないと言ったばかりだし、素直に運動部の部活勧誘をされたくないから本気を出さなかったと言うと、罪悪感を与えてしまいそうだし、適当に誤魔化しておこうかな。
「タオルを持ってくるのを忘れたから汗をかきたくなかったんだ」
「あっ、申し訳ないっす。もう汗だくだし、これからシャトルランでさらに汗かいちゃいますね」
「いや、気にしないで。忘れたのも手を抜いたのも明らかに僕が悪いから」
納得したのか彼女は笑顔になり走り去っていった。
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