生徒会長選挙13-4
今回の話は十川神無視点になります。
神無が相手の考えていることを読みとってる所は『』で書いています。
「眠そうだね」
「うん」
今の時刻は朝7時。普段ならあと1時間は寝ている時間だ。
「ギリギリまで寝てるって言ってたもんね。どの髪型が良いか決めた?」
「うん、これ」
穂希が持ってきてくれた髪型リストの中で一番可愛いと思った髪型を指差す。
「オッケー」
なぜこんな時間から私の部屋に穂希が来ているかは優が百瀬心に騙された昨日まで遡る必要がある。
*
いつもは優と一緒に寮に帰っているが今日は穂希と寮に向かう。
穂希は優と話をするために寮に来たと言っていたが実際は違う。
穂希の目を見て、本当は私に用事があって寮に来たのがわかっていたから私の部屋で穂希と話をすることになった。
「イライラしてる?」
「別に」
穂希の目を見た限りでは優は下級生に告白されているらしい。
「どうせ断ってるんだからいいじゃん」
「気にしてない」
「素直じゃないなー」
穂希に頬っぺたをツンツンされながらからかわれる。
否定はしたが本当はかなりイライラしている。
告白のせいで今日は優と一緒に帰れなかった。それに彼女がいる人間に告白をするというのはやはりおかしいと思う。
「なんで穂希にはわかるの?」
「十川ちゃんは普段は無表情なのに優ちゃんのことになると分かりやすいからね」
「…」
もう反論するのはやめよう。この話では絶対穂希には勝てない。
「そういえば優ちゃんに聞いたけどなんでミスコンの勝負を受けたの?」
「なんとなく」
「ふーん、相手はどんな人?」
『優ちゃんは湊ちゃんって呼んでいたし相当仲が良い友達なのかな』
今度は頬っぺたを両手でむにむにされながら聞かれる。穂希が私をからかう気満々なのが目を見ただけでわかる。
「優の幼なじみ」
正確にいうと幼なじみの妹だけど、小さい頃から仲が良かったみたいだし、幼なじみみたいなものだ。
「幼なじみにヤキモチやいて勝負を承けたの?」
『十川ちゃんって嫉妬深いからなー』
「違う‥‥けど、湊と違ってまだ優と会ってから1年しか経ってない」
穂希には否定してもバレバレだった。私だって告白してくる女の子や湊のことで嫉妬するのはおかしいとわかっている。
「あー急に幼なじみが出てきて焦っちゃったんだね。でも長さは関係無いと思うよ」
穂希はそれだけ言って私の頭を撫でる。普段は適当なのにこういうときだけは優しい。
恋愛の話になると経験値が違いすぎて同い年なのに年上のお姉さんに相談しているみたいになる。
「うん。でも、優は湊のことを可愛いと思っているから不安」
「見え過ぎるとそういう不安もあるんだね」
「うん」
「もっと自信を持ってもいいと思うけどね」
『優ちゃんは十川ちゃんのことしか見てないんだから気にしなくていいのに』
「うん、私も自信をつけたい。だからこそ湊にはずるしないで勝つ」
穂希が来た理由は私を恋愛話でからかうため。だが一番の理由はミスコンの票を獲得するための作戦会議。
穂希が考えた作戦を実行すればおそらく私の票は増える。
でも、やり方がかなり汚い。そんなやり方で勝っても正々堂々と優と付き合い続ける事はできない。
「あ、やっぱり?私もその方が良いと思う。でも何もしないのも不安だよね」
たしかに何もせずに負けて優と別れることになったら悲しすぎる。
代案が思い付かずに暫く沈黙していたら、急に穂希が立ち上がり鞄から、化粧道具とヘアゴムを取り出し構える。
「良いこと思い付いた。十川ちゃん改造計画をやろう」
「?」
「ミスコンって可愛い人が選ばれるでしょ?化粧とかヘアアレンジで可愛くなれば票が稼げるんじゃないのかな?」
『十川ちゃんを好き勝手コーディネートできるチャンスかも。あの綺麗な銀髪に合うヘアアレンジとかずっとしたかったんだよね。票はそんなに増えないとは思うけどここは巧く言いくるめよう』
先ほどまでのお姉さんみたいな穂希はいなくなり、ただの変態が目の前にいた。
「穂希、私が心を読めるの忘れてる?」
『しまった』
「で、でも良い案でしょ?他の人の評判を下げたり、十川ちゃんに票を入れるように周りに頼むよりは健全な稼ぎかただよね」
言っていることは正しいけど、間違いなく穂希は私で遊びたいだけだ。
しかも穂希が考えていた通りあまり効果があるとも思えない。
でも、他に代案があるわけではないからここは穂希の案に乗ろうかな。
それに穂希には優が男だと知っているのにばらさないでくれている恩もある。
1、2年の時は何もせずにミスコンを取れたけど、今回も取れるとは限らない。何もせずに負けて優と別れることになったら悲しすぎる。
「わかった、やる」
「うん、任せて」
『やった!これで十川ちゃんをいじり放題!今日は徹夜で十川ちゃんに合う髪型を考えよう』
本当に穂希に任せていいのかな…
*
「十川ちゃんの持ってる髪留めとか化粧品見せてもらっても良い?」
「うん、良いよ」
優にエンジニアの部屋みたいと言われた殺風景なこの部屋の中で唯一女の子っぽい物であるドレッサーの中から髪飾りを取り出す。
お母さんがたまに送ってくるおかげで私のドレッサーの中には普通のヘアゴムやヘアピンだけではなく、バレッタ、マジェステ、コンコルドなどどうやって使っていいのかわからない髪留めがたくさんある。
朝ギリギリまで寝ていたい私にとっては化粧やヘアアクセサリーには全く興味が無い。優とデートする時にたまに髪を結ぶけど使いやすいヘアゴムしか選んでいない。
「可愛いのたくさんあるのに何で使わないの?」
「使いづらいしめんどくさい」
「えーもったいないよ。それに慣れたら髪縛ってる方が楽だよ。このバレッタ使っても良い?」
「うん」
穂希は慣れた手つきで私の耳の近くの髪の毛を真ん中に手繰り寄せて、ヘアゴムで留め、その上から黒いリボン型のバレッタで留めた。
初めてした髪型だけど可愛い。
「なんていう髪型?」
「ハーフアップかな。可愛いでしょ?十川ちゃんの銀髪に黒のバレッタでアクセントを加えたの」
「うん、ありがとう」
穂希は5分くらいでセットしてくれたけど自分でやると30分はかかりそう。
「編み込んだりお団子にしたりしてアレンジもできるけどこれでいいの?」
「うん、あんまり難しいと自分でできない」
「毎日私がセットしてもいいんだよ?」
「いや、いい」
「え~」
それから30分くらいヘアセットの仕方を教わった。
「神無、準備できた?」
「うん」
いつものように優が部屋をノックしてきたのでドアを開ける。
「なんで会田さんがいるの?」
「昨日色々やるって言ったでしょ。
それよりもどう?可愛いでしょ?」
「うん、似合ってるよ」
『今までの中で一番可愛い』
顔を背けて素っ気ない態度をとってはいるけど、一瞬で優の考えていることが読めた。
できればそっちの方を言葉にしてほしかったけど気に入ってくれたみたいだからいいかな。
「えーもっと褒めなよ。十川ちゃんもそう思うよね?」
私の頬が緩んでいるのを見て穂希は呆れながらため息を付いた。
「あー心の中ではべた褒めだったんだね。ご馳走様」
同時に私と優の顔が紅くなり、穂希には勝てないと確信した。
お読み頂きありがとうございます!
投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。
次の話からは今まで通り週1~2ペースで出していけると思います!




