1ー6 帰ってきたのも束の間で
1ー6 帰ってきたのも束の間で
帝国内務省迷宮庁内にある転移術式の観測所にて転移術式の起動が確認された。観測室に詰めていた職員は直ぐ様術式に含まれるコードから発動者を特定する。
「調査課6班班長ジェスタ・G・スリーハウスのものと確認」
「転移受け入れ術式展開…発動元位置特定…術式展開完了」
床に描かれた魔術式から立体的に投射された魔法陣が複雑に絡み合い光を放つとそこには2人の男と1人の幼女が立っていた。背嚢をパンパンに膨らませて。
「ボス、今回は酷かったですよ。まさか中層まで行くとは思いませんでしたよ」
幼女の手を握りながらため息をつくイケメンは心底疲れた顔をしてそう呟いた。
「いい訓練になったろ?さぁ、報告書仕上げて今回の調査は終了だ」
いい笑顔でケートに向かってそう言うとサムズアップしてみせる。
そこへ詰所から職員が駆け寄ってくる。
「ジェスタさんお疲れ様です。ご無事で何よりです。転移術式についてお聞きしたいのですがよろしいですか?」
「ありがとう、中層31階の湖のそばがセーフゾーンになっていた。そこに術式固定したうえで転移点を設定してある。発動した転移術式を辿ってくれればこちらからの移動に使えるだろう」
「ありがとうございます!迷宮内の改変が起こってから中層への移動に制限がありましたので助かります!」
そういうと手元の器具を使って先ほどの転移術式を空中に展開して術式を解読し始める。その様子を横目に2人は庁舎内に入っていった。
「さて、まずはゲンちゃんのところに行かないとね」
ケイトに向けてジェスタは行き先を伝える。
「長官のところに先に行かなくて大丈夫なんですか?」
ケイトは驚いてジェスタに聞き返す。
「いーのいーの。先にやることやっちゃおう」
ジェスタはそういうと迷宮庁の敷地内にある設備棟へとずんずん進んでいく。
(知らないっすよボス、長官可哀想に)
複雑な顔をしてケイトはその背中を追っていくのだった。