1-3 受け止めるか受け流すかは気分でいいと思う件
1-3 受け止めるか受け流すかは気分でいいと思う件
黄金色のリンゴを堪能した一行はそのまま森を進んでいた。時折生えている野菜や果物などを調べては書き込んでいく作業をしている。その横ではケイトが悲鳴を上げながら戦っているのだが。
「ボスぅっぅぅぅぅぅぅ!!!」
「あ、この辺から雰囲気が違うからさっきのドリアードの影響範囲を超えたな?」
「いやぁぁぁぁぁぁぁボスうううううううう」
周辺の様子を調べながらケイトの悲鳴と剣戟の音を聞く。かなり甲高い音がしているので刃が通っていないのだろう。虫っていうのは小さいから愛でれるんであって大きいのはちょっとと私も思う。いわゆる相性の問題なのだ。ケイトは優秀な剣士ではあるが、甲虫の群れに対しては些か部が悪い。だが、それでも我が部署きってのエースたるケイトを信じて心を鬼にして私は部下の成長を祈念している。あ、美味しそうなキノコみっけ。
「痛い痛い!ゴフぁっ!!!」
「あ、飛んだ笑」
側面から走ってきていたカブトムシメス(巨大)にぶつかられ明後日の方向に飛んでいく。あ、ドリアードが助けてくれた。感謝。
「さて、では」
先ほどまで戦っていた剣士がいなくなるやすぐさま私の方に敵意を剥き出してきた昆虫たちに向かって構える。背中のリュックは食材でパンパンだ。上着の内側に収納してあった短杖を取り出しさっと一振りする。黒い闇が虫たちを覆い尽くしたかと思うと残されたのは甲殻と魔石のみであった。相性の問題ではあったが、この規模の量の虫たちを引きつけ私の調査の邪魔をさせなかったのだからやはりあの子は素晴らしい。早く帰ってこないかな。
「・・・・しまってくれるかな?」
そう言いながら短杖で魔法陣をかくと中心から大きなスライムが出てくる。プルプル震えながら周辺に落ちていた甲殻や魔石を体の中に取り込むと一気に小さくなりまた魔法陣の中へと帰っていった。やはり素晴らしい。ありがとうスライムさん。
その後は再び周辺の植生などを調べながらドリアードの影響範囲を抜けたすぐそばで野営のための設営を開始した。リュックにいっぱいの食材を使っての簡単な鍋料理だ。味付けなどはシンプルにしてあるがキノコや魔物の肉ではあるがタンパク質も入っているので栄養価は高い。出来上がる頃にはケイトも再び合流した。肩に小さい木の妖精が座っていたのはびっくりしたが、ケイト曰くドリアードからボスは心配ないけどあなたは心配だから生まれたての我が子をお供につけますねと言われたとのこと。試しに私の魔力を与えようとしたら首を振りながら嫌々するので多少傷ついたことは胸に秘めておく。お前のかーちゃんワシの魔力吸ったんやでなどと大人気ないことは言わない。しっかりと育てるようにケイトに念を押しておく。
お礼の意味も兼ねて短杖を地面に突き刺しかなり強固な虫除けの結界を張る。後はこの先にいるであろう主を倒しておいてあげれば恩返しにはなるだろう。ツンツンと足元を突かれるので下を見てみるとケイトの肩に乗っていた木の妖精が顔を真っ赤にしてお辞儀していた。お礼のつもりだろう。可愛かったので頭を撫でようとしたら逃げられたが。解せん。