1−2金か食うかと言われたら
1−2金か食うかと言われたら
「ボス、さっきのやつは魔物でしたよ。」
ケイトがそう言うとこちらに核を渡してくる。
「結構大きい核だな。階層としてはそんなに深くはないんだがなぁ」
迷宮の階層は深さによって魔物の分布範囲が違う。一般的に深い階層であればあるほど強く大きい魔物がいるとされている。核を受け取りながら森の中を進む。食べれそうな野草など採取しながらなので速度が出ないのは仕方ない。今回は調査だから。
「なんかこの森って変じゃないです?」
ケイトが周辺の気配を探りながら不思議そうにしている。構える姿も絵になるな若者よ。
「多分、森の主がいるなこの感じだと。この感じだとケイトは相性が悪いかもなぁ。」
周辺に茂っている枝豆を無造作に刈り取りながら説明する。後で煮て食おう。調査だから。
そのまま妙な感覚に包まれながら森の中を進むこと2時間ほどで森の中央らしき開けた場所に出た。中央には大きく太い一本の木が様々な果実や野菜を枝に茂らせて佇んでいた。
「ボス、あれですか?」
ケイトが剣に手をかけつつ聞いてくる。
「そーそー。あんな見事なやつは久しぶりに見たけどね。神化しているようには見えないから一応ドリアードの範囲じゃないかな?」
茂っている果実の種類と量をメモしながら近づいていく。
「ちょっ!ボス?」
慌ててケイトが追いかけてくる。
「本来ドリアードは大人しい魔物だからこちらから攻撃しない限りは大丈夫だよ」
そう言うとドリアードの幹に手を当てて魔力を流す。魔力が流れ始めると木の幹が大きく開き中から妙齢の女性を模した木の精が現れた。にっこりと微笑んで手の中に黄金色のリンゴを生み出してこちらに差し出してくる。
「ありがとうドリアードよ。もう少し魔力は必要かな?」
そう聞くとドリアードは首を横に振り木の中へと帰っていった。その様子を見ていたケイトは一回り以上大きく成長した木を見て口を大きく開けて驚いている。
「ボス、これどう言うことです?」
「ドリアードに魔力を譲渡すると果物をくれることがあるのさ。今回は少し多めに注ぎ込んだから木まで成長したし、黄金のリンゴなんて貰っちゃったね」
そう言うとリンゴをケイトの方に向けて見せる。
「それってすごい高いやつじゃないですか?」
黄金に輝くリンゴをマジマジと見ながらケイトが聞いてくる。
「若返りの秘薬に使う素材だからね。結構高いんじゃない?」
そう言うと手に込めた魔力の刃でリンゴを二つに割って片方をケイトに渡す。
意外と美味しいんですよこれ。
「「いただきます」」
二人は表現する言葉が見つからないほどの美味しさをもたらしてくれるリンゴに感謝しつつ調査を続けるために歩き始めたのだった。売るなんてもったいない、美味しいんだから。