1−1 資源とは確保するのも困難で
1−1 資源とは確保するのも困難で
見るからにくたびれた中年の男性と健康的な青年が立つその空間はここが迷宮の中であると説明されてさえなお信じることができないほどの屋外であった。
緑が生い茂り、遠くには竜種のような生き物も飛んでいるのがわかる。目の先には森が茂り生き物の濃密な気配が漂ってくる。
「ボス、この先に抜けるんですか?」
金髪碧眼のイケメン好青年が森を指差しながら聞いてきた。
「それ以外の方法だとちょっと難しいな。ケイト、私は植生やらの調査もあるから外敵の排除は頼むよ」
ボスと呼ばれた私はケイトに対しそう言うと、背負った鞄の中から皮の手帳を取り出しながら森に向かって歩き始めた。森の中は戦いにくいとかぶつぶつ言っているがこと戦闘に関してはケイトはなかなかの手練れである。万が一にも遅れは取るまい。
「今回の調査の目標は未踏区域の調査ですよね?珍しくないですか?」
森に近づくにつれ気配が戦闘態勢に移行していくケイトから質問が飛んでくる。
「迷宮内の改変が行われたようでね。今まで安定して供給されていた食料品に関して危機感を感じ始めている部署があるんだよ。」
今回の調査に関しての内幕をケイトに告げるとゲンナリした顔でケイトはため息をついた。
「それって輸出用の食料ですよね?外務省がらみか〜あいつらまじめんどくさい」
明らかにやる気をなくした様子を見せるケイトを横目に森の中の植生を細かく手帳に記していく。森に入ったあたりから少しづつ近づいてくる獣の気配があるが、ケイトに任せているので無視してどんどんと奥の方へと進んで行く。お、葡萄発見。
「ボス、気づいているようですから言っときますけど、今近寄ってきているのは倒しちゃっても構わないんんですよね?」
さっきまでのヘラヘラした態度はどこへやら。若いなりに頼りになる。
「構わんが、そう殺気立っていると気取られるぞ?」
葡萄をもぎ取りながら種類を調べ、周辺に群生しているのを確認しつつメモを書き込んで行く。後ろの方で獣の叫び声と、小気味良い金属音が鳴り響いているが気にせず進む。私の仕事は今は資源の調査なのだ。