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ルート7 狼男たちは逃げ、ミミックの数は足りない



「ダンジョンってモンスター出るよね? 僕、逃げきれる自信ないんだけど」


 とても情けないが僕は重度の運動音痴だ。戦うどころか逃げるの選択肢さえ成功するか難しい。


「それは、大丈夫だよ。僕がついてるし」


 ウォーマはけなげにもそんなことを言ってくれる。


 ウォーマの気持ちはありがたいけど、ウォーマは僕よりもうんと小さいんだ。

 もしもの時はウォーマを抱えて全力で逃げよう!

 僕がウォーマを守るんだ!

 逃げるしか選択肢がないけども僕なりに頑張ろうと決意した――だけど。



「ウォーマ様!! お久しぶりです!」

「ウォーマ様!! 僕たちいい子にしてますよ!!」


 洞窟らしき場所の前でスライムたちがピョンピョンと跳ねた。


「うんうん、よく頑張ってるな、偉いぞ」


 ウォーマは僕の肩から飛び降りスライムたちに親し気に話しだした。



「ウォーマ??」


 僕が困惑していると、スライムたちは僕の方に近寄ってきた。


 お、おお、なんだか可愛い。


「ソプラノ様!! はじめまして!」

「この世界には慣れましたか? 無理しないでくださいね」

「ウォーマ様とお幸せに!!」


 ピョン、ピョン、ピョン。

 僕の周りをスライムたちがくるくると回る。


「え? うん? ありがとう……僕のこと知ってるの?」

「はい! ウォーマ様からの通信でよくソプラノ様のお話聞いてます!!」

「とっても可愛くて素敵な人だって!! ホントですね!!」


「こら、内緒だって言っただろ」


 ウォーマが優しくたしなめる。


 ……なんだか話し方もいつもと違わないか? 


 スライムの前ではお兄さんぶってるんだろうか。



「またなお前たち」


 そう言ってウォーマは僕の方にジャンプしてきた。僕は両手でキャッチする。


「ウォーマ、スライムと知り合いだったんだね」

「うん」


 ウォーマはこの世界に来てから僕が一番一緒にいる相手だが、まだまだ僕はウォーマの事を知らないのかもしれない。


 ダンジョンに入ると蝙蝠たちがバサバサと近寄ってきた。


「ウォーマ様見回り」

「ウォーマ様いらした」

「ウォーマ様おかえり」


 

 ウォーマが蝙蝠たちに「ん、ただいま」と言うと蝙蝠は羽音をならし元の場所に戻っていった。


 僕はウォーマを抱っこしながら奥に進む。そして、つんとウォーマの頬っぺたを指先でおした。


「なんだかウォーマ有名人だね」

「ふふっ。そうかな」


 ウォーマの新たな一面を見れて嬉しいなと思っていると、騎士のような恰好をした狼男たちと目が合う。



「わ」


 思わず声をあげてしまった。

 

 スライムや蝙蝠たちは小さかったしあんまり怖くない。むしろ可愛いとさえ思った。

 

 だけど、大きな牙をもつ図体のデカい狼男は恐ろしい。無意識に体が恐怖を感じて震えてしまう。

 ウォーマも狼男たちを警戒しているのかキッと睨んでいる。


 


 ――逃げなきゃ。



 僕はウォーマをしっかりと抱きしめて走り出そうとした。

 すると、狼男たちが叫んだ。


「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


 僕はうん? と思った。今のは僕の悲鳴ではない。狼男たちの悲鳴だ。


「うわぁぁ、やべぇよ。逃げなきゃ」

「すみませんでした! ウォーマ様すみませんでした!!」

「わざとじゃないんです。わざとじゃないんです」


 それぞれに絶叫しつつこちらを怯えた表情で見ている。んん?



「ウォーマ様勘弁してください!!」

「ウォーマ様その女の子とすごくお似合いですよ!! だから許して」

「わぉぉぉぉぉぉぉん!! ウォーマ様すみませんでした」


 わぉんわぉんと狼男たちが叫ぶ。なんだろう。このよくわからない状況は。僕は腕の中のウォーマをのぞきこむ。ウォーマはため息をついた。



「お前らちゃんと宝物庫の警備しとけって言ったろ。わざとじゃないのはわかったから。次から気をつけろよ」


 フワフワ小動物のウォーマが僕よりうんと大きい狼男たちにお説教している。


 僕が不思議な気分でウォーマを見つめていると、狼男たちの方からヒソヒソと声が聞こえてきた。


「いつもより優しかったなウォーマ様、あの女の子がいるせいかな?」

「馬鹿、女の子とか気安く言うんじゃねぇ。でもそうだな、ソプラノ様がいたおかげかもな」

「ソプラノ様に足を向けて寝れねぇな」



 違いない、違いない。と狼男たちが言っている。下を向くとウォーマが体をふるふると震わせていた。


「お前ら覚えてろよ」


 狼男たちは今度こそひぃぃと逃げていった。



 地下に潜ると、スケルトンがカタカタと体を揺らして近づいてきた。


「あらーん、どうしたのウォーマ様。来てくれるなら前もって言ってくれたらいいのにぃん」


 おかまさんだろうか、ダンディな声のスケルトンは頭に真っ赤なリボンをつけている。



 ウォーマはスケルトンと話し始めた。


「ちょっと気になる報告があってな」

「もしかしていなくなったミミックちゃんの事かしら?」

「――そうだ。お前何か情報知ってるか?」


 なにやらウォーマとスケルトンが真剣に話している。


 僕は話の流れについていけなかったが、魔物って思ってたより怖くはなく面白いのかもしれないと思った。



(外見は違うけど人間も魔物も中身は同じようなものなのかも)



 ダンジョンを歩き出して魔物が少なくなった時だった。


「ごめんね、ソプラノちゃん。疲れてない?」


 ウォーマは僕を気遣い申し訳なさそうにしていた。


「大丈夫だよ、それよりウォーマはもしかして魔物なの?」


 僕が聞くとウォーマは小さく「うん」と言った。あんまり聞かれたくないのかなと思ったので「そっか」とだけ僕は答えた。




 それから後、宝物庫でミミックの数を数えた。

 ミミックが一匹足りなかったのでしばらく探し回ったが成果は出なかった。


 夜遅くなってきた頃、諦め僕らは家に帰った。

 その日の夜は歩き回ったせいかすぐに眠気が来た。


 ウォーマが何やら考え込んでいたので僕は手のひらでよしよしとウォーマをさすりながら眠りについた。


 (明日からまた三人の攻略しなきゃ)


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