ルート48 時は経ち先生たちに会いに行き、僕は相変わらず愛されている
「姫」
「姫さん」
「姫ちゃん」
ライトとアースとルビーが僕に声をかけてきた。
「三人とも姫って呼ぶのやめてよ」
あの後、ウォーマの部下になった彼らはずっと僕の側にいて、僕を守ってくれている。
「まさか魔王の下で働く事になるとはね」
「一応俺たち勇者だったはずなんだけどね」
「しょうがないじゃない。ソプラノちゃんとずっといるには、この方法しかなかったんだから」
薄暗いダンジョン内を黒の衣服に身を包み、綺麗な顔をした男たち三人が通る。
途中ゴーレムやスケルトンがいたので会釈した。
「僕も知らなかった。魔王ルートに行くと不老不死になるなんて」
三人の会話に僕も入る。
「ごめんね、ソプラノちゃん」
すると、どこかから現れたウォーマが申し訳なさそうに美声を発した。
相変わらずこれでもかというくらいスタイルが良く、びっくりするくらい整った顔立ちだ。
そんな彼に僕はぎゅうと抱き着き、微笑む。
「ううん、ウォーマとずっといられて僕、嬉しいよ」
魔王ルートに行き僕は不老不死になった。そして、そんな僕と居るためにウォーマの部下になった三人も同じく不老不死となってしまった。ウォーマが死ぬ時がもしあれば、その時、僕らも一緒に死ぬらしい。ウォーマは強すぎて死ぬ事なんかなさそうだけど。
「そういえば今日魔法の先生のとこ行くんだったよね」
僕はふと今日の予定を思い出し、口に出す。
「そーじゃん、そーじゃん。うっわ。なっつかし」
「会うの、10年ぶりくらいじゃねーの」
「元気にしてるかな」
三人はそれぞれ嬉しそうに言った。
ダンジョン奥深くから抜け出た僕らは、久しぶりに学園へと足を運んだ。
時を経たため、少しだけ建物の雰囲気が変わった気がする校内を進み、職員室へと入る。
少し長めの青い髪をした先生が出迎えてくれた。
「あら、皆さん。ちっとも年取りませんね。まるで怪盗先生みたい」
「先生こそ変わらないじゃないですか!」
僕は先生に言った。
不老不死になった僕らと違い人間であるはずなのに、先生は相変わらず若々しい。
ほんの少し大人の色気が増したかなという程度だ。
「あ、ウォーマ!! 久しぶり」
先生の側にいたウォーマのお兄さんがこちらに手を振っていた。
「げ、兄さん……」
魔法の先生に会うという事で姿を消していたウォーマだったが、ウォーマのお兄さんにはすっかりばれてしまっていた。
なにやらウォーマとお兄さんが、魔法の先生から離れたところで会話を始めたので、僕もついて行った。
「まだダンジョンに戻ってこないの、兄さん」
「もうちょいあいつと過ごしたら戻るよ」
そう言ってウォーマのお兄さんは、魔法の先生へちらりと視線をやる。魔法の先生はイケメン三人組に囲まれており、話に花を咲かせているようだ。
「お兄さん、ウォーマが寂しがってましたよ」
いたずら心で僕はそんな事を言ってみる。まぁ、寂しそうにしてたのは本当だし。
「ちょ、ソプラノちゃん!」
「そうなの!? じゃあ、今度また顔出しに戻ろうかな~」
まいったという顔をするウォーマを挟んで僕らはあははと笑った。
「でも、ソプラノちゃん相変わらず可愛いね~」
「え、あ、あの、ありがとうございます」
慌てた僕にウォーマのお兄さんは微笑みかけ、僕の髪をとりキスをしてきた。
(わぁ、ちょっとちょっと)
相変わらずなウォーマのお兄さんに動揺していると、左右から音が響いた。
ゴン
ゴゴン
見ると、お兄さんの右頭をウォーマが叩いて、左側をルビーが拳をグーにして殴っていた。
「全く油断も隙もねぇな」
「ホントホント」
そう言って、ライトとアースが僕の体にぴっとりと触りながら、ウォーマのお兄さんを睨んでいた。
そうこうしていると、魔法の先生まで僕たちの方へとやってきた。
「あらあら、相変わらずソプラノさんはモテていますね」
そうして、魔法の先生は僕の耳に顔を近づけ、こっそりと囁いた。
「さすが魅力999の持ち主ですね」
チュッ
(わーお)
耳元だけど魔法の先生にキスされてしまった。
どういう事なのと僕はふわふわとした気持ちで固まっていると、先生はにっこりとした笑みで僕に言った。
「実は、私もソプラノさんの事、昔から結構気に入っているんですよ」
「なんなの、アイツ等! 許せねぇんだけど!」
ルビーがダンジョンへの帰り道に憤っていた。
バキバキと足元の枯葉や小枝を踏みつける。
「先生たち油断も隙もねぇな」
「まさか魔法の先生まで露骨に出てくるとは思わなかったな」
ライトとアースも苛立たし気に、長い脚をいつもより乱暴に振り出していた。
「絶対ソプラノちゃんが卒業したから、本性出してきたんだよ。あいつ!! むかつく~!!!」
ルビーがまだ怒って吠えている。血管ブチ切れそうだな。
「ソプラノちゃん……俺これ以上ヤキモチ妬いたら胃が溶けるかもしれない」
「う、ウォーマ……ごめんなさい」
ウォーマは胃をおさえ、青ざめている。
僕とウォーマは相変わらず仲がいいけれど、今でも三人組がちょっかいを出してくるので、こうしてよくウォーマがダメージを受けているのをみる。
そんな時、こっそりとウォーマが三人組に気づかれないように僕にグッと近づいた。
僕に近づけられたウォーマの顔は、奇跡のように整っている。
そんな彼の唇が動いている。
「ソプラノちゃん、今日俺の部屋に来ない? 大事な話があるんだ」
そうして、ウォーマの顔が少し離れる。
ウォーマの頬は赤く染まっていて、僕もつられて頬が熱くなった。