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死んでまでいじめられた僕は乙女ゲームの主人公になってイケメンたちを攻略する  作者: ナイユ
ゼツボールートまたは永遠に逆ハーレムルート
45/49

ルート45 “ゼツボー”

 


「ソプラノちゃん……。何してんの?」

「せっかく見つかったと思ったら、ダークエルフなんかと一緒かよ」

「ソプラノさん。何があったの?」


 洞窟の奥に進むと、驚いた顔をして僕とダークエルフを見る三人と鉢合わせた。


「……」


 僕はこれから、彼らに何を言おうか頭で考えつつ黙り込んだ。


(大丈夫、できる。大丈夫だよね)



 ダークエルフといる僕に不機嫌そうにしていた三人だが、僕の姿をしっかりと視界に入れるとまた表情を変えた。


「……っ、ソプラノさん化粧してる? 大人っぽくてすごく可愛いんだけど」


 まず、アースが大きな掌を口元にやり、僕の姿に感動して悶えていた。


「なんでドレス着てんだって思うけど、似合ってんじゃん。黒カッコいいじゃん、俺結構好きよ」


 ライトもへえと、顔を緩ませて僕を見る。


 アースとライトは二人とも僕の姿に、顔を片手で覆い顔を赤めつつ身をよじる。なんだか興奮しているようだった。


「ソプラノさんの恰好、すごくタイプなんだけど」

「俺もタイプ、破壊力やべぇな」


 二人がそんな事を言っているのが聞こえた。


「ドレス、確かに可愛いけどさぁ。……そんな格好してどうするの?」


 ルビーは僕を褒めつつも、顔は怪訝そうにしていた。



「あなた方、うるさいですよ。この方はウォーマ様の元へ連れて行くんですから」


 ぼくが黙っている代わりにダークエルフが三人の相手をしてくれた。


(ちゃんとやらないと)


 僕はドレスの裾をこっそりと握り、震える手をごまかす。


「ウォーマぁ!? はぁ? 誰だよソイツ」

「連れて行って何するんだよ」

「ウォーマ“様”って事は結構偉い相手なのかな」


「なんですか、無礼な。あなた方が気安く名前を呼べる方ではないのですよ」


 三人組の様子にダークエルフが少し憤る。


(えーと)


 僕はさっきから緊張している鼓動を感じながら、大きく息を吸った。



(言わなきゃな――)




「あ、あの!」


 ドキドキして汗をかきながら僕は三人の方へ声を振り出した。

 三人はそんな僕を不思議そうに見た。


「……どうしたの? ソプラノちゃん」

「珍しいな、ソプラノが声張るの」

「ちょっと緊張してるね、可愛い」


「……」


 僕はそんな三人組に一瞬黙ってしまったが、再び口を開いた。






「あの、三人とも“ゼツボー”を覚えてますか?」





「は?」


 ライトが一番に反応した。眉を上げ目を開き、よくわからないと言った様子で首を傾げている。


「……あ、ソプラノさん」


 アースが目をきょとと横に動かし、顔をこわばらせた。


 ルビーだけが口を真一文字にし、大きな瞳で僕を見返した。


「覚えてるけど、なに?」


 荒くはないが、強めの口調のルビーにちょっと怯んでしまう。



 ドキドキドキ


 思考が飛んで頭が真っ白になりそうだったが、キキキと蝙蝠が僕たちの頭の上を旋回した。


(蝙蝠さん……)


 ズズズとゴーレムも僕の後ろに現れた。


 遠くで狼男やスケルトンも元気づけてくれるように手を振っていた。

 ピョンピョン、カツンカツンとスライムとミミックも跳ねながら、見守ってくれているのが見えた。


(皆も……うん、ありがとう)


「ソプラノ様」


 一番側にいるダークエルフの言葉に僕は頷いた。




「あの、僕は、ゼツボーです!」


 僕は勇気を出して、やっとそれを言う事が出来た。







 ゴゥゥゥと洞窟の中に風が吹き、地を這うような音がした。






 バクバクバクバク



 皆なぜだか黙り込んでいるので、洞窟の中は存外、静かだ。


(どうしようどうしよう)


 ついに言ってしまった。

 どんな反応をされるのか怖い。



 耳を塞いでしまいたい。



 緊張で目尻に涙が浮かんでくるのがわかった。

 僕がパニックになって体が震え出した時――。



「はぁぁ? 何言ってんだよ」


 静けさを破り、大きな声を上げたライトが僕の方に近寄ってきた。



 ライトが僕の肩を両手で掴んだ。


「なに? 何でその名前出てきたんだよ。ルビーにでも言われたのか?」


「……」


 僕は息を止めて、身を固くした。




 ライトが、そんな僕を見て黙る。

 僕はライトと見つめ合った。


 僕は口を閉じ、ただただ沈黙を守る事しかできなかった。

 鋭さを帯びたライトの顔がだんだんと驚愕に変わっていく。


「うっそ。嘘だろ。……」


「……本当です」


 僕はライトの通った鼻筋を見ながら、小さく低くそう言った。少し目線を上げる。

 初めて見るほど大きく大きく開かれた、ライトの目が僕の前にあった。



「……。お前ら知ってたのかよ」


 ライトがルビーとアースを振り返った。


「……薄々そうじゃないかなとは思ってた」


 アースが言いにくそうに声を紡いだ。


 ルビーはツンとそっぽを向いて黙っていた。



「知ってて、よく可愛いとか好きとか言えたな」


 ライトの怒りが滲んだ声が響いた。


「何にも気づかないライトに、そんな事言われたくないよ」


 アースが珍しくも、はっきりと苛立たし気な顔をしてライトに言った。


 僕は怒った二人の様子に胸がざわざわとしてきた。


(あ、この空気怖いかも)


 逃げ出したくなった僕の方にバッとライトが体勢を向けた。

 ライトは僕の顔を見た後、目をつむりスーハーと大きく深呼吸をする。


(な、何……)


 何をされるんだろう。ゼツボーだと知られて嫌われるんだろうか。それとも怒られるんだろうか。



「悪かった!!」


 ライトの体が地に沈む。

 彼は、僕の足元に土下座をしてきた。

 細長い手足を丸め洞窟の土の上に手と額を置いている。


(え、あ……)


 僕はどうしていいかわからず、そんなライトを見守った。


「ごめんなさい!! 酷いことした」


 いつもと違い必死な声を出すライト。


(どうしよう)


 僕はぎゅっとドレスのポケットを握った。





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― 新着の感想 ―
[一言] ソプラノちゃん、ついに自分の正体を明かしましたね ルビーは気付いてるのわかってたけど、アースもうすうす気付いてたのですね(´・ω・`) 気づいてなかったのはライトだけか… ライトちゃんと謝…
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