ルート43 レベル50になりウォーマは消え、僕はチョーカーを置いた
【ライト】LV50
『魔力223』
『知力249』
『体力278』
『特殊スキル 光』
「ライト君、レベル50おめでとう!!」
「おお、ありがとうな。ソプラノ」
ライトが長い腕を横に広げていた。彼は一時間で一番魔物を倒した数も多かったので、僕は抱き着いた。
ぎゅうと彼の体に手を回すと、硬くて鍛えられた胸板が顔に当たった。
僕の背中には彼の長い両手が絡まっていて、スタイルが良くて羨ましいなと思った。
「俺もレベル50になったよ、ソプラノさん」
すぐ後に、アースがそう言った。
【アース】LV50
『魔力249』
『知力266』
『体力235』
『特殊スキル 地/鍵開け』
「おめでとう! アース君」
「うん! ありがとう」
満面の笑みのアースにぎゅうと抱き着かれた。
「お前、さっきソプラノに抱き着いてもらったじゃねぇか」
ライトが不満そうにこちらを見て言った。
一時間前くらいに、アースがモンスターを一番倒したので確かにそれはその通りだった。
「いいでしょ、お祝いの時くらい」
アースは柔らかい笑みを浮かべながら、がっちりとした体で僕を抱き込んだ。
ちょうどいい圧力が体に加わって、気持ちがいいなと思った。
「ソプラノちゃん、俺も!」
「ルビー君は、もうレベル50なってるじゃない」
三人の中で一番速くレベル50になったルビー。その時にも散々抱きしめられたのに、またルビーが僕に手を伸ばしてきた。
ぎゅうとルビーの体の中に入り込まされ、トクトクトクという少し速いが安心する心音が聞こえてきた。
【ルビー】LV50
『魔力264』
『知力235』
『体力251』
『特殊スキル 炎』
(――そろそろかな)
家に帰った後、僕はウォーマに抱きしめられていた。
夜も遅く、窓の外には月が見えていた。
「ソプラノちゃん、一人にさせてごめんね」
「ううん」
「絶望ルートいける?」
「うん」
「魔王に会いに来てね」
「ん」
以前消えた時と同じようにウォーマの姿が消えてしまった。
静まり返った部屋に寂しくなった僕は少しだけ泣いてしまった。
「大丈夫、大丈夫」
独り自分を励ましながら、この世界に来て初めて一人でベッドで眠った。
朝起きて僕は、ここのところ毎日習慣のようになっていた、三人から貰ったチョーカーを首に付ける事をやめた。
ボーっとしてたせいか、教室に入る前に大きい二つの人影にぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさい先生」
「いえいえ、こちらこそすみません。ソプラノさん」
「ごめんね、ソプラノちゃん」
ぶつかった相手は、魔法の先生と怪盗先生だった。
皆がレベル50になった今では二学期に入っており、魔法の先生と怪盗先生が授業を教えてくれるようになっていた。
僕の元気のない顔色に気づいたのか先生たちが、気遣った様子になった。
「ソプラノさん、大丈夫ですか?」
「……ソプラノちゃん」
もしかしたら怪盗先生はウォーマがいなくなったのに気付いているのかもしれない。
僕は、平気ですと言って先生たちから離れた。
「あれ、ソプラノちゃん、今日は首輪……じゃないチョーカーしてないの?」
目ざとく気づいたらしいルビーが昼休みにたずねてきた。
僕はなんとなく、スカートのポケットに手を突っ込みながら言った。
「うん、してないよ」
「……。ふぅん」
ルビーは、僕のスカートのポケットに目を落とした。
「あのね、ルビー君。今度のお休み、またダンジョン行こう」
「うん……。もとからいくつもりだけど」
――そうして週末、レベル50まで上がった彼らと僕は慣れ親しんだダンジョンへ足を運んだ。
「スライムや蝙蝠もう出なくなってきたな」
「そうねー」
「危機察知能力が高いのかもしれないね」
僕らがレベル40を超えたあたりから、スライムや蝙蝠は完全に裏方に回ったようだった。
三人組のレベルを上げる役目を立派に果たして、ダンジョンの仲間たちから労われていた。
「今日はダンジョンの一番奥まで行ってみようよ」
僕は三人の後ろについて行きながら、言ってみた。
「珍しいな。あんたが提案するの」
「どうしたの、ソプラノさん」
「……」
それぞれの反応をする三人に向かって再度、言ってみた
「今日は最奥まで行けると思うよ。だから行ってみよう」
僕の言葉に疑問を抱いたのか、三人が何かを言おうとしている時だった。
「また来たのか! お前たち!!」
「毎度毎度懲りもせず、来るもんだ」
「さぁ、かかって来い!」
ダンジョンの中を一つ降りたところで、騎士風の身なりをした狼男たちが僕らを取り囲んだ。
「さぁ、女、こっちに来い!」
狼男の中の一匹が僕の腕を掴んだ。
「ソプラノちゃん!」
「ソプラノ!」
「ソプラノさん!」
三人組が僕がいる方に向かって鋭く叫んだ。
ドスンッッ
いつだったか僕の椅子になってくれたゴーレムが、完璧に三人と僕の間に壁を作った。
「ソプラノ様、奥の方へお進みください」
三人から僕の姿が完全に見えなくなった後、狼男が囁いた。
「わかりました」
僕はそう言って、少しだけドキドキとしながら、洞窟の奥を見た。