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ルート33 レベル21お祝いパーティー ~アイマスクで誰かあててみよう~

 


(い、嫌すぎる!!)


 僕は真っ暗な中で手を空中に伸ばしてみる。


「えっと」


 僕の前に誰かが座っている気配がする。


「誰……かな?」


 ペタリ


「つっ……」


 手が何かに触れ、目の前から息をのむ声が聞こえた。


 ペタペタ


「これは……体だよね」


(固い)


 なんとなく触った事がある気がする。

 その後も、ペタペタと触っていく。


 小さい顔立ち、細長い体……これは多分。


「うっ……」


 座っている人物から吐息が漏れる。

 最後に確信をもてる部分に触れた。


 さらり


「この髪の毛はライト君だね」


 ライトの金髪のしっぽの部分を軽くつまんで僕は言った。



「あたりー!!」

「わ~、すごいね!」


 ルビーとアース二人の声とパチパチという拍手の音が聞こえる。


「えへへ」


(やったー!! 当たったぞ!)


 僕は褒められて嬉しくなってしまった。嫌がってたくせに、我ながら現金だけども。


「くっそ。髪切ろうかな」


 ボソリとしたライトの声が聞こえた。


(結構すぐ当てちゃったからな。ライトも悔しいのかもな)


「残念だったなー、すぐ当てられて」

「もっとソプラノさんに触って欲しかったって顔してる」


 ニヤニヤとしたルビーとアースの声が聞こえてきた。


(よし! 次も当てるぞ!)





「え、誰? っていうか、どっち?」


 ルビーなのか、アースなのか。僕はペタペタと触りながら少し焦れてきた。


「さぁ、どっちだろーな」


 答えられないルビーとアースの代わりにライトが答えてくれた。


「う~ん」


 するするする


 僕は目の前の人物の顔を撫でる。唇の部分に手が当たる。


(笑っているな)


 口角に力が加わっているのがわかる。


「わ、わかんない。誰かな?」


 耳に触れた。


「あ、ピアスがない。アース君かな?」

「一応言っとくけど、ルビーはアクセ外してるぜ。ネックレスも置いてる、ピアスもな」


「ね、念入りだね」


 少しだけ頭を前に出して、匂いを嗅いでみる。


「石鹸の匂いがする」


(これはきっと……)


 僕は念のため、前に座っている人物の耳を触ってみる。


 くりくりくり


「んんっ」


 さわさわさわ


「くっ、はぁっ。あ」



「アース君だね!!」


 この反応は自信がある。声も彼のものだろう。


「せ、せいかい」


 吐息まじりのアースの声がした。


(やっぱアース耳が弱いんだなぁ)




 僕はアイマスクを外す。


「あたったー!」


 僕が笑って周囲を見回すと、ライトとアースが笑顔でパチパチと拍手してくれた。




「納得いかん!!」


 ルビーが吠えた。


「え」


 僕はちょっと驚いてルビーを見る。


「これ、最後意味ねぇじゃん!! ぜんぜっん美味しくない!!!」


「今頃気づいたの」

「まぁそりゃ、当てられると最後の奴は出番ないわな」


 アースとライトが可哀そうなものを見る目でルビーを見る。


「ルビー君……」


 そうだった。ルビーはちょっとだけお馬鹿さんだった。



「ソプラノちゃん!!」

「は、はい!!」


 ルビーがいつの間にかアイマスクを手に取り、僕の前に突き出してきた。


「もう一回! 俺もあてて!?」

「え、え~~~」


 ど、どういうこと。ルビーって知ってるのに、どうやってあてるの。

(意味がわからないよ)


「おいおいおい」

「ルビーマジで言ってんの?」


 ライトとアースも目を細め口を少し開いて、呆れたような驚いたような顔をしていた。




「ソプラノちゃんが視覚以外で俺ってのがわかるまでやって!!」

「う、うん」


 お得意のルビーの強引さに引っ張られて、僕はまたアイマスクをした。


 ルビーを触る。


(んー)


 ペタリ


 触る。


 ペタリ


(難しいな、知ってるし)


 ルビーとわかって触ると、これはルビーだなぁというのがわかる。だけど、そうじゃなかったなら、ルビーだと確信は持てないと思う。


(混乱してきた)


 ……視覚以外で――か。


 目以外、鼻、口、耳を使う。あとは触覚。

 口は、味だろうけど、さすがにルビーを舐めるわけにはいかないし。とすると匂いと、声か。


(よし)


 僕は、アイマスクをしたままルビーに顔を近づける。


(あ、いい匂い)


 香水だ。昔、赤髪の家に行った時にした匂いだ。


(こっちの世界でも香水売ってるのかな)


「ルビー君の匂いがする」

「……」


 無視されてしまった。これだけじゃダメなのか。

 ライトやアースがため息や苦笑をしている音が聞こえる。


 僕は少し匂いにクラリとして顔をもとの位置に戻す。


(あとは――)


 こちょこちょこちょ


 ルビーの脇あたりをくすぐってみる。

 少しビクリとしたがそれだけだった。


(だめか)


 声が聴ければと思ったけど。

 僕はくるくるくると指先を回しながら考える。




(そういえば、ピアス……)


 僕は手のひらを上に持っていき、ルビーの顔付近をゆっくりと触る。


(えーと、耳、耳)


 僕はルビーの耳にたどり着き、そのまま手を滑らせた。

 

 ――神様っぽい人が僕らは死んだって言ってたから、もしかしたらダメかもしれないけど。


(でも、この三人組のゲームでの姿形は本人たちそっくりだし。もし外見がそのまま前の世界での姿をかたどったものだとしたら――)


 触りながら前の世界での出来事を思い出す。


(あー、やっぱり耳たぶ)



 赤髪のピアスが留め金を付けたまま、ある日ストンと下に落ちたのだ。

 それ以来彼は小さめのピアスか、耳の上の方にだけピアスやカフスをするようになった。


「蛇の耳だね」


 僕は耳の割れ目を優しく、指先でいじった。


「――っ」


 ルビーが少し動揺した気がした。


「……無理していつも重いピアスつけるから」


 ピアスのつけすぎで先が切れてしまい、蛇の口のような形をしているルビーの耳たぶ。


「でも、この耳結構好きだよ」

「……ソプラノちゃん」


 ルビーの声が揺れている。

 僕は少し調子に乗った。このくらいはしても大丈夫だよね?


「ライト君やアース君は辛めのお菓子をよく食べてたけど」


 僕はルビーの手を取り、自分の口の中に彼の指先を含んだ。


「あま……」


 僕はアイマスクを片手で外す。


「ルビー君は甘いお菓子が好きだもんね」


 僕は顎を少し上にあげ、ふっと目を細めてルビーに笑いかける。


「~~~~~っっ」


 真っ赤になったルビーの顔が見えた。


(ざまぁみろ)


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― 新着の感想 ―
[一言] 誰か当てるゲーム、わかっていてもドキドキします 3人組にとってはおいしいゲームですね(笑) やっぱり私も参加したi(ry ライトは特徴があるから当てやすいですね アースの耳が弱いところ萌え…
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