ルート30 二人でレベル21になる
「ウォーマ、学校行く前にもう一回ちゅーして?」
「はい、俺のお姫様」
甘えた僕にウォーマがおどけてそう言った。
ウォーマが高い背を屈めて僕に、ちゅっとキスをした。
(えへへへ)
昨日はウォーマにヤキモチをやかせてしまったが、あの後、いっぱいキスして抱きしめられて、前以上に僕たちは仲良しだ。
(今なら何でもできる気がする)
僕は根拠なくそんな事を考えながら浮かれていた。
「ソプラノちゃん! 昨日の魔法の練習の続きしよぉ?」
だから、ルビーに話しかけられても今日の僕は、慌てずに上手に返すことができた。
「うん! いいよー!」
ルビーはいつもよりテンションが高い僕をちょっと不思議そうに見た。
「なんか今日機嫌いいな、あんた」
「本当、だけどいいね、ソプラノさんには笑顔が似合う」
休み時間にライトとアースにそんな風に言われた。
僕とルビーは放課後、また先生に付き合ってもらい魔法館に来た。
「先生すみません、忙しいのに」
僕は連日で来てくれた先生に頭を下げる。
「いえいえ、私は漫画さえ読めればいいので。職員室から出るのも息抜きになりますし」
「センセー漫画読み過ぎじゃねえ? 漫画ばっか読んでると、コウチョ―に怒られるんじゃない?」
さっそく昨日とは違う漫画を取り出した先生に、ルビーが軽口をたたく。
「あーまぁ、はい。たまに注意されますね~。でも、たまにです!」
「「……」」
言い訳めいた事を言う先生に僕とルビーは顔を見合わせる。
そんな僕らを見て、先生は慌てて話を変えた。
「そういえばルビー君、今日は元気そうですね。昨日はちょっと調子悪そうに見えたんですけど、気のせいでしたね」
「いや、風邪風邪。風邪ひいてた。俺初めて風邪ひいたわ! 一晩寝たら治ったけど」
「はじめて……。確かにルビー君、風邪ひかなそうですよね」
「何センセ? 馬鹿にしてる?」
「あら、よくわかりましたね」
ルビーは「はぁ?」と先生に絡み始める。
先生はそれを面倒くさそうに片手で静止して、漫画本で自分の顔を隠した。
それ以上は話す気はなさそうだ。
「ルビー君、練習しよう」
僕はルビーの近くに行って口を出した。
「ルビー君、まだ?」
「ま~だだよ~」
「ルビー君?」
「いや、本当にまだ~。ごめんね」
今日もルビーは魔法のかかりが悪いらしい。
(まだ、風邪が治りきってないのかも)
僕は一度ルビーから顔を離して深呼吸する。僕の近くにちょこんと座っているウォーマを見る。
ウォーマは少し体を傾けている。そんなに怒ってはいないような気はするが、あんまりいい気はしないよね。
(早く終わらせなきゃ)
僕は両指を組んで軽く伸びをした後、ルビーの耳に向かって魔法を歌う。
歌いながらルビーの様子を窺う。
「んー、まだかなぁ」
ルビーが言う。
(やっぱり風邪なのかな? それとも何か原因が? 僕の魔法のかけ方が下手なのかも)
――もっと集中して歌わないと!!
僕は触れるか触れない程度だった手を、グッとルビーの顔にかける。
ルビーの耳をしっかり意識して、今まで以上に繊細に威力を加減して魔法をかける。
シャランッ――
僕の頭の中に音が響いた。
なんだか、いつもより上手く魔法がかけれている気がする。僕の唇から流れる歌もノリ出した気がする。
「ん、後はソプラノちゃんが俺に抱き着いてくれたら成功しそう」
(……)
僕は魔法に集中して無視をした。
ルビーはそんな僕に軽く低い声で笑った。
「冗談だよ」
片手を僕の身体にグッと回し、もう片方の手を前に突き出す。
ボオオオオウッ
いつもより強い炎がぐるりと巻き上がった。
僕はそれを確認して魔法をやめる。体も離そうとしたがルビーの腕の力が強くて無理だった。
そして、それまでが嘘だったかのように、いや、実際嘘だったのかも。ルビーがいとも簡単にさっきと同じ程度の魔法を再現した。
「はい、二人とも良かったですよ。ステータスも見てみましょうか」
いつの間にか僕たちを見ていた先生が僕たちの前に立っていた。
先生がいつものよう魔法を使い文字を浮かばせる。
【ルビー】LV21
『魔力111』
『知力91』
『体力100』
『特殊スキル 炎』
【ソプラノ】LV21
『魔力115』
『知力117』
『体力70』
『特殊スキル 歌』
ルビーはしっかりと21にレベルが上がっていて、僕の『魅力999』は前回と同じように消えていた。
だけど……。
(あれ? 僕もレベルが21に上がってる。なんで??)
僕の疑問がわかったのか、先生が説明してくれる。
「ソプラノさんも皆に、特にルビー君にずっと付き合って魔法をかけ続けた成果でしょうね。20超えられてよかったですね。おめでとうございます!」
(おおー!!)
嬉しい。精神的にも今日は調子が良かったからかもしれない。
先生はちろりとルビーを見る。
「ルビー君、まさかこれを狙ってずっとできないフリをしてたんですか?」
先生の言葉で僕はルビーをじっと見る。ルビーは僕を見てふっと目を細めた後、ふわりと僕を両腕に抱えていく。
(え、ちょっと)
「狙ってるに決まってるでしょ。俺愛してますから」
(ちょっと、待って)
愛おしそうに僕を眺めてくるルビー。
(何この体勢!)
ルビーは僕をお姫様抱っこしながら、くるりと回った。
「おんなじレベル21だね!」
あんまりにも嬉しそうに笑うので、僕は浮遊感にびっくりしたのもありドキドキと動悸を弾ませていた。




