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ルート26 くすぐったそうにしていたが我慢してレベルが上がった

 


「つっ、ソプラノさん。待って」


 少しだけたれた目を潤ませてアースが目線を僕にやる。


「ごめんね? くすぐったい?」


 僕はアースの柔らかい茶髪を手ですきながら謝った。


「くすぐったいっていうか。あっ」


 僕が唇を近づけ歌おうとすると、アースはやっぱりくすぐったそうに声を漏らした。




 ライトに続きアースにも20の壁を越えてもらうため、僕は魔法をかけているのだがアースがくすぐったがって上手くいかない。


(どうしたらいいんだろう)


 僕はアースの耳元に口を寄せたまま、ふう、とこっそりとため息をついた。


「~~っ。ソプラノさん!!」


 アースは目元を赤くしたまま辛そうに声を出した。


「あ、ごめんね」


 僕は一度顔を離してアースに向かって謝る。


 その時、今まで黙って様子を見ていたルビーが苛立たし気な声をあげた。



「アース、ソプラノちゃんが困ってるじゃん。早く終わらせてくんない? 俺待ってるんですけど? あーあ、ソプラノちゃんのカワイイ歌早く聞きたいんだけどなー」


 ルビーは大きな瞳を歪ませてアースを責めるように見下した。


「俺はお前の気持ちわかるぜ。さっさと終わらせろってのは同意だが」


 ライトが悟ったような顔でアースに声をかける。


 そんな二人をアースは悔しそうに見ている。

 彼らの様子に僕はいたたまれなくなった。



「あ、アース君は頑張ってるんだよ! その、私が魔力を調節するのが下手だから」


 僕はアースをかばうように言った。


(実際そうだしね。僕が上手く魔法を使えたら、わざわざこんな近くで歌う必要もないんだし)


 僕ももうちょっと魔法の勉強しないとなーと考えていると、ルビーに手をギュッと握られる。



「ソプラノちゃん優しすぎ! そんなトコロ大好きだけどね!!」


 愛してる、とルビーに今度は手だけじゃなくて体全体を抱きしめられる。


(やめて!! 僕はお前のそんなトコロが大嫌いだよ!)


 僕は顔から血の気が引くのを感じながら、じたばたとルビーの体を押しのけようとする。


「やめろって、ルビー。おい、あんた大丈夫か」


 僕がいくら抵抗しても動かなかったルビーの体をどかしてライトが助け出してくれた。


「ありがとう、ライト君」

「ん」


 そんな僕たちをルビーがすごい顔で見ていたが、僕は知らんぷりをした。



(自分でもルビーに対しては冷たいと思うけどさ)


 だけど、これはもう前の世界から続く条件反射というか、グイグイ来られると怖くて逃げたくなってしまうのだ。一番、僕がルビーを恨んでいるというのもある。




「アース君、もう一回いくよ?」


 僕はまたアースの顔に手をかけ歌う準備にかかる。


「――うん」


 アースも今度こそと頑張っているのが伝わってくる。

 僕はなるべく彼を刺激しないようにゆっくり丁寧に動いた。


「ふっ、つっ」


 アースは口元を大きな手で押さえくすぐったさに耐えているようだ。

 (ごめんね、アースちょっと我慢してね)


「んん」


 僕が歌いアースの耳の中を空気で揺らすたびに、アースは苦しそうにしていた。

 荒くなる息を抑えようとしているのがわかる。


(頑張れ! アース)


 僕はアースを心の中で応援しながら小さく歌う。はぁはぁとアースの息が荒い。


 十分魔法がかかった頃にアースが肩で息をしながら、口を押さえてない方の手をなんとか前に出す。


 ――ドドドド

 床や天井から土の棘が生えてくるのが見える。


 ガタガタガタガタ

 僕らがいる場所が振動し始める。

 いつもの彼の魔法より少しだけ大きい振動だ。


(よかった。支援魔法成功した)


 僕は自分の魔法が上手くいったことを確認した後、アースから離れて彼を見る。

 次は、僕の魔法なしでアースが同じことをできれば成功だ。


 僕はそっと両手を握りしめアースを見守る。

 だがなかなか上手くいかない。アースは目を細め、少し辛そうだ。



「アース君! 頑張って」


 僕はアースに向かって声をかける。アースは頷く。


(頑張れ! 頑張れ! 上手くいきますように――)


 ガタガタ

 ドド――


 振動が激しくなり土の棘が生えてくる。


 僕はアースの側に駆け寄ってアースの腕を握った。



「頑張れ! アース!」


 つい呼び捨てにしてしまった僕にアースは目を軽く開いて驚いた。

 だが、スッと真剣な表情になり僕に向かってしっかりと答えてくれた。



「ありがとう! ソプラノさん」


 

 アースが前に出した腕にググッと力を入れた。

 


 ガタガタガタガタ


 ドドドドーー



 僕が魔法をかけた時と同じ威力で周りが揺れる。

 床と天井から伸びる棘も先ほどと同じくらい多い。



 アースの口元に笑みが浮かんだ。


(成功だ――!)


 

「すごい!! アース君! やったね!」



 僕が喜ぶとアースはほっとした顔になり、僕を愛おしそうに見てきた。


 くすぐったいのも我慢したもんね。魔法も成功してアース偉いよ。




「よかったですよ、アース君」


 ずっと漫画に夢中になって黙り込んでいた先生が、顔を上げアースに声をかけた。僕たちの事忘れてるかと思ったけど、ちゃんと見てくれてたのか。


「ステータスオープン、アース君」


 先生はさっき指導していた時とは違い、いつものゆったりとした声で文字を浮かべる。



【アース】LV21

 『魔力96』

 『知力114』

 『体力92』

 『特殊スキル 地/鍵開け』



 皆が文字に目を通す。うん、ちゃんとレベル一個上がっている。


「あー、これ結構嬉しいね」


 アースは少し汗を流して疲れた様子だったが、満足そうに笑った。


「ソプラノさん、君のおかげだよ。ありがとう」

「ううん、アース君が頑張ったからだよ!」


(よかったね、アース)

 僕とアースが顔を見合わせニコニコと笑い合っていると、すたすたと後ろに人が来る気配がした。



「次は俺の番だね、ヨ、ロ、シ、ク、ネ。ソプラノちゃん」


 笑うように言葉を紡ぐルビーの声がした。

 僕は背筋に冷や汗が伝わるのがわかった。


「う、うん。ルビー君」


 僕の目の前にルビーのものであろう腕がすらっと伸びる。その手で遠慮なく後ろから抱きしめられた。


(は、離して)


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