ルート24 三人が伸び悩んできたので実は強いらしい先生に相談する
「あーもう、ナニコレ? ぜんっぜんレベル上がんないんですけど!?」
ルビーが苛立たし気に大きな目を開く。
「ルビー、少し落ち着いて。イライラしても始まらないよ」
アースは苦笑いをしている。少し疲れた様子だ。
「イライラもするっしょ。レベル止まってもう三週間だぜ。それまでは普通にレベル上がってたのに。どうなってんだよ! マジで」
ライトが顔をしかめる。
(うーん、困ったなぁ)
魔王に挑むには最低でもレベル50は欲しいんだけど。今のままでは到底無理そうだ。
僕は腕を組んで考え込んだ。
「どうしたらいいんだろう」
そう僕が呟くと、三人がこちらの方へ向かって来た。
「ごめんね、ソプラノちゃん。なかなかレベル上がらなくて」
「わりぃな。せっかくレベル上げに付き合ってもらってるのに」
ルビーとライトが優しく僕に声をかけた。さっきのイライラとした声とはえらい違いだ。
残る一人アースは何やら考え込み始めた。
「レベルが上がらない原因はなんだろう。ゲームのバグ? それとも――」
そんなアースの呟きが風に乗って聞こえてくる。
なるほどな。僕が恋愛ゲームの世界に来たように彼らは冒険ゲームの世界に来ているのだ。
僕はウォーマに聞いているから、レベル20頃から伸び悩むものだと知っている。だからバグではないとわかる。だけど、この三人にしたら順調だったゲームが突然上手くいかなくなったようなものだ。
「何か条件があるのか? 指導してくれる人を見つけないといけないとか」
アースはまだ思考しているようで、その考えを口にする。
――指導してくれる人ねぇ。
(確かウォーマがあの人は強いって言ってたよね)
三人を育成するって決めた以上、僕も頑張んないとね。
「先生、魔法を教えて欲しいんですけど」
ある日の放課後、僕は魔法の先生にお願いをしてみた。
とてもそうは見えないが、ウォーマの情報によると強いらしい。
「ソプラノさんだけでしたら別にいいですけど――そうじゃありませんよね?」
読みかけの漫画を片手に持ち、魔法の先生は目を細める。
「は、はい。ルビー君とライト君とアース君のレベル上げに協力してほしいんです」
僕は指を組み、少し気まずさを感じつつ言った。
「あの三人のレベルは十分上がっています。これより上を目指すなら学校を卒業した後に、専門の機関で学ぶべきだと思います」
「で、でも!」
「まだ若いうちから強大な力を手に入れても、後で苦労するだけと思いますけどね」
なんとなく少しずれた会話に、僕は思ったことを口にした。
「先生は若い頃から強くて苦労してきたんですか?」
僕の問いに先生は目をぱちくりとした。
そうして、ふっと笑った。
「そういう事もありましたね」
僕はそんな先生の様子に少し心を動かされる。先生の若い時をふと想像した後、目を閉じて言った。
「--っ、先生。お願いします!」
この先生は生徒のためを考えているんだろう。だけど僕もできる事はやりたい。
僕が頭を下げて頼み込むと、しばらくして先生のおっとりとした優しい声が頭上から聞こえてきた。
「――生徒の可能性を摘んだら先生失格かもしれないですね。仕方ない、私でよければ教えましょう」
(先生いい人だ)
僕はもう一度深く頭を下げた。
「三人ともふざけてるんですか? 工夫もせず今まで通り漠然と練習しても、レベル20の壁を乗り越えるなんてできませんよ!」
魔法の先生――青色で少し長めの髪をした華奢な男性は三人組に檄を飛ばす。
「何アイツ随分偉そうにしてくれるじゃない」
「うっせーな。こっちだって考えてるっつーの」
「上から目線で口出すだけなら誰でもできるよね」
三人がそれぞれに文句を言う。
先生はそんな三人に少し目線をやった後、僕に話しかけてきた。
「ソプラノさん、あなたの力を借りればこんな三人でも成長できるはずです。手伝ってもらってもいいですか?」
「は、はぁ」
蚊帳の外だった僕に焦点があてられると思わなかったので僕は少し身じろぐ。
(何するんだろ)
「後で私の言うとおりに動いてください」
何やら先生に耳打ちされ僕は頷いた。
「例えば、これが私の一番苦手な属性の炎魔法ですが――」
そう言い、先生が片手を前に出し『ファイヤ』と口にする。
体育館の十倍は広い魔法館がメラメラと燃える。僕や三人組が見学している部分だけがバリアのようなもので器用に守られていた。
(えー、これで一番苦手なの。うっそだぁ)
三人、特に炎に適性のあるルビーが驚いたように先生を見ていた。
「では、次にソプラノさん。さっき私が言ったとおりにしてみてください」
そう声をかけられた僕はおずおずと先生に歩み寄っていく。
(ちゃんとできるかな)
僕はドキドキしながら先生にこっそり指示された内容を思い出す。
華奢な先生が少し僕の方に屈んでくれた。
僕は背伸びをして先生の長めの青髪を手でかきあげ耳元にキスするような格好になる。
「ソプラノちゃん!?」
「ソプラノ!?」
「ソプラノさん!?」
そんな僕の様子を見て三人が悲鳴のように声を上げた。




