ルート22 イケメンに触られたりヤキモチやかれたり
「ソプラノちゃん、今日もすんごく可愛いね。愛してるよ!!」
「ソプラノ! また道場見学しに来いよ。手とり足とり丁寧に教えてやるから」
「ソプラノさんの髪すごくいい匂いがするね。ずっと触っていたいな」
(ひっ)
椅子に座っている僕はイケメン三人組にがっちりと囲まれている。
机ごしに赤髪イケメンが僕の顔を両手で包み込んでる。油断したらキスされそうなくらい近くに彼の顔がある。
「可愛い」
(ちょ、近い近い近い)
そうしていると、誰かが僕の背中をギュッと抱きしめた。僕を掴んでいる両腕は見覚えがある。
金髪イケメンのライトだろう。
「柔らけぇ」
(ま、待って身動きができない)
さらりと髪を触られた気がして視線をやると、茶髪のイケメンアースが僕の髪に口づけしながら跪いていた。
「いい香り」
(うわぁぁ。何するの!)
日に日にアプローチが増してくる彼らに僕は固まる。
赤髪イケメンルビーはそんな僕の気持ちを知ってか知らずか、僕の顔に手をかけたまま問いかけてきた。
「このままソプラノちゃんとキスしたいなぁ。ソプラノちゃんの初めてのキス俺欲しいな~」
大きく鋭い瞳で覗き込まれる。
「は!? ソプラノにキスとかまだ早いんだよ! つか近すぎ。離れろよルビー」
「そうだよ離れなよ。ソプラノさんが怖がってるでしょ」
十分べったりと僕にくっついているライトとアースがルビーを非難する。
いや、もう三人とも離れて欲しい。
(――だけど、キスかぁ)
僕は黒髪で白い服を着たウォーマを思い出す。
あの時はそれどころじゃなく、ただウォーマに答えるためだけにキスしてしまったが――。
ポッと顔が熱くなる。
キスしちゃったんだよな。この三人も相当なイケメンだがウォーマは次元が違うというか、更に何倍も輪をかけてキラキラとしている。
それに、なんというか。僕は、体以外は男なのにおかしいかもしれないけど。
(ウォーマの顔立ち好きなんだよなぁ。声なんかずっと聞いていたいくらいドストライクだし)
僕はなんだか自分でも少し気持ち悪いけど、ウォーマの事を思い出して女の子のように照れてしまった。
「ソプラノちゃん?」
そんな僕の様子を不思議に思ったのかルビーが首を傾げている。
僕はハッとした。
「あ、ごめんなさい。あの、私キスした事あるよ」
僕は思い出したせいで、緩みまくった顔をしながらルビーに言った。
(え、へへへ)
嬉しくて、ちょっと自慢げに言ってしまったかもしれない。
僕は少し調子に乗りながらにこにこと笑った。
――――とたん、場の雰囲気が一気に冷たくなった気がした。
「殺してやる」
笑顔が消え、もともと派手で怖そうな顔立ちを余計すごませて赤髪ルビーが言った。
「え、え?」
僕はびっくりしてルビーを見る。
「へぇ~? 初めてじゃねぇんだ。相手どんな奴?」
長身ポニテのライトも僕を抱きすくめる力が強くなっている。
「あ、あの」
あ、まずい。余計な事を言ってしまったんだろうか。
「ソプラノさん? その話詳しく聞かせてくれない?」
たれがちな目に歪な笑みを携えてアースが言った。
(あ、まずい。失敗したかも)
「どこの馬鹿? そんな事したの」
「どんな奴だよ、ソイツ」
「どこに住んでるのかな?」
え、えーと。
とりあえず、最後のアースは居場所を知ってどうするつもりだろうか。ウォーマが住んでるのは僕の部屋だけど。
「とっても優しくて、すごくカッコいい人だよ。声も素敵」
もうやけだ、と思って僕はすらすらとウォーマを褒めた。
こっそり下に目線をやると、白のフワフワ状態に戻っているウォーマの体が真っ赤になった。それを見て僕もちょっと照れる。
「はーん、意外と面食いなの? あんた」
ライトが僕の後ろから耳に息をふきかけながら言う。
「イケメン? イケボ? でも、もちろん俺の方がカッコいいよね?」
ルビーが自信ありげに怖い笑みを浮かべる。
「優しくて、カッコイイ人が好きなの? じゃあ、案外俺イケるかも」
アースがしみじみと言う。
(な、なんでこんなに強気なんだこの三人は)
どれだけ自分に自信があるんだ!! そりゃイケメンだけどさぁ。
「……その人の方が皆よりイケメンだよ」
僕は少し三人に仕返しがしたくなり、とっても意地悪な事を言ってみた。それにウォーマは本当にカッコイイし。
「「「!!?」」」
三人が信じられない! という感じで固まったのがわかる。
(ふっ)
三人の間抜けな顔が見れて、僕はこの世界に来て初めて復讐ができた気がした。まぁ、みみっちぃけど。
僕の嫌味で三人の時間がまだ停止していたためか、ウォーマがこっそりと僕に口パクをした。僕が褒めたからか、またウォーマの体は赤くなっている。
『ソプラノちゃん、い、く、せ、い』
いくせい?
!! あ、そうか。育成か!!
まださっきの僕の言葉に固まったままの三人の方に意識を向ける。
僕は、わざとらしく独り言を言った。
「えーと、わ、私。ま、魔王を倒せるくらい強い人が好きだなぁ」
――――とうとつ過ぎただろうか。
僕は言った後、ちらりと三人に目を向ける。
三人にハッと意識が戻るのがわかった。
「ソプラノちゃん強い人好きなの? 俺自信あるよ!!」
「そーいう事なら俺もイケるな!」
「あんまり興味ないけど、ソプラノさんが言うなら頑張るよ」
よかった。やる気になってくれそうだ。
「じゃ、じゃあ魔王倒せるようにレベルカンスト目指して頑張ろうね!!」
僕が三人に言うと、皆それぞれに頷いた。
……でも確かまだ皆レベル一桁じゃなかったっけ。他のクラスメイトよりは強いけど。
ま、まだまだ先は遠いかも?
僕はギクシャクと苦笑いをしながらウォーマと視線を交わした。




