表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/49

ルート21 僕の前世とルビーの前世

 


「ソプラノちゃん今度遊びに行こう!?」


 鋭い目を大きく開けてルビーが僕を誘う。


(元気だな)


 何度も何度もルビーの誘いを僕は断っているのに、それでもルビーはめげずに僕を誘う。


(こういうところは昔と同じだな)


 僕はこっそりと目の前にいる赤髪との昔の出来事を思い出した。





「ゼツボー今日の帰り付き合ってよ!」


 赤髪の男は言った。


「え、今日はちょっと見たいテレビあるから」


 僕は行きたくなかったので苦し紛れの言い訳をした。


「へぇ!? 何見るの? お前んち行っていい? 一緒に見ようぜ」

「――え、えっと」


(どうして学校では僕を馬鹿にしてくるのに、学校の外まで僕にかまいたがるんだろう)



 僕は赤髪の考えが全くわからなかった。



 別の日には、履歴書を二人分持った彼に無理やりバイト先まで連れて行かれた事もある。


「ゼツボー! 一緒にバイト受けよーぜ!!」

「え、えー? いきなり?」


 僕はいつも気ままな彼に振り回されていた。


 結局、最初の一度だけ赤髪の男と同じシフトに入った。その後は新人をばらけさせるためか僕と赤髪はともに働くことはなかった。


 同じバイトだけど彼に会わなくてすんだし、お小遣いも稼げるし、まぁいいかと思い始めていた頃だった。


「ごめんゼツボー、彼女と約束あるから今日バイト休むって言っといて」

「! そういうのは自分で言った方がいいんじゃ――」

「あと、俺もうバイト辞めるからそれも代わりに伝えといてよ。っとデートに送れる。じゃあな」

「ちょ!!」


(う、嘘でしょ)


 自分から強引に誘っといて自分だけすぐに辞めるって。しかもその理由が彼女とデートとか、意味が分からん。


(僕、こいつ嫌いだ)



 思えば最初から僕は彼が苦手だった。


「え、ゼツボーお前も寮住みなの?」

「うん、そうだよ」


 寮と言ってもほぼ名ばかりの一人暮らしのマンションのようなものだった。プライバシーもきちんと管理されていて、学生にはもったいないくらい快適な場所だ。


「じゃあ、今日から毎日どちらかの家で一緒に寝泊まりしようぜ!!」

「え? な、何言ってるの?」

「一緒に過ごした方が電気代や水道代の節約になるじゃん」


 いきなり突拍子もない事を言い出した、赤髪で鋭い目つきの男に僕は頭が痛くなった。


「そりゃ、ちょっとはマシかもしれないけど、そんなに変わらないと思うよ」


 僕にしてはちょっと強めな口調で彼に諭すように言った。

 いつも皆の中心にいて何でもお見通しのような顔をしてるのに、彼は子供のような事を言う。


「電気やガスより家賃代のがうんと高いんだよ。しかもここは水道代は固定になっているから、どれだけ使っても節約しても変わらないし。だから、もしどちらか一つの家で生活したとしても、その間にもう一つの家が使われない事の方がもったいないと思うよ」


 家賃が無料の寮だとしたら彼の言ってることもわかるけど、そうじゃないし。ルームシェアならまだしも、きちんとお互い自分の家があるのにわざわざ一つの家だけで暮らすなんて馬鹿らしいと思う。


(――と、理屈を色々並べたけど、学校でいじめてくる相手と家でまで一緒にいられるかよってのが一番の理由だけど)



 まぁ、それでも結局二週間ほど一緒に寝泊まりしたっけ。あの時は精神的にまいってたな。

 なんせ、学校どころか家でまで天敵と一緒なのだ。気が休まる場所がなかった。


(なんだかんだあいつに流される僕も悪いんだけどさ) 




「僕って、なんであいつにこんなに嫌われてるんだろう」


 赤髪に散々からかわれた日の後、僕が独り言を発した時だった。


「違うよ? ゼツボーの事すごく好きだって言ってたよ」


 茶髪のたれ目男が僕にそう言った。



 三人組は固まっている時は攻撃的で恐ろしいけど、なぜか一対一で話す時は気さくな、いい奴になる。


「じゃあ、なんでこんなに僕ばっかりいじめてくるの?」

「それは、わからないけど。好きな子には構いたくなるタイプじゃないの?」


 僕はケロっと言い放つ茶髪の男を見て「えぇ」とうめいた。




 そういえば、一度だけこんな事があった。

 帰り道に赤髪の男に付き合って書店に入った時だ。


 彼はただの気まぐれと言った様子で適当に雑誌をとっていた。その本がいつもと違って珍しかったから記憶に残った。


 彼が好んで普段よく手に取るのは、今どきイケメンの服が載っている雑誌だった。飽きもせず次々と似たような雑誌ばかり見るから、そこまで服に興味がなかった僕はぼんやりしながらその様子を眺めていた。


 だが、その時だけはなぜか男同士が絡み合っている漫画雑誌を手に取っていた。いわゆるBLと言われる本だ。


(へー。今どきの目立つ人はこういう本も読むんだ)


 まぁ冷やかしみたいな感じで読んでるんだろうなと思った。

 だから、僕は別に悪気もなく軽い気持ちで次の日彼に言った。


「そういえば、昨日見ていたBLの本面白かった?」


 僕はイケメンたちと席をくっつけて四人で一緒に食事をしている時に聞いてみた。

 よく知らない周りの人が僕らを見たら、なかよし四人組に見えるのかもしれない。だが、実際は彼らのストレスのはけ口に僕は側に置かれているだけだ。


 僕は『ああ、あれね~。そこそこ~』と言う感じで赤髪は言うだろうと想像して話題を振っただけだったが。


 赤髪の男の表情がこわばった。

 僕は予想外な彼の反応に驚いた。


 赤髪の男はいつもより妙に高いテンションで僕の方を向いて言った。


「あ~~!! そうそう。BLってやつ? ゼツボーがどうしても見たいって言うからさ~」

「へ?」


 僕は目が点になり赤髪の様子を見守った。


「BLとかありえねぇよな!? ゼツボーマジどんな趣味してんのー?」


(えーーーー)


 そんな赤髪の男の会話を聞いた後、金髪で長身の男が目を丸くして僕を見た。


「へー、ゼツボーそんなんに興味あるんだ」



 僕は否定するのも馬鹿らしい気分だったのでそのまま流した。

 それに、あの時あいつのこわばった顔を見て後悔したんだ。


(もしかしたら僕は、あいつの言って欲しくなかった事を不注意で言ってしまったのかも)




「ゼツボー」


 ごく小さな声がして、僕はハッとした。過去を振り返ってきた意識が戻ってくる。


 目の前にルビーがいた。


(あれ? 気のせい?)


 声が聞こえた気がしたが、ルビーはただニコニコと微笑んでいた。


「ソプラノちゃん、遊びに行こうよ」


 僕は普段通りに誘い文句を言う彼を、いつものように笑って受け流した。


 僕はルビーを見る。

 彼は僕を愛おしそうに見ていた。さっきの声は彼のものだった気がするが――。



(気のせい……かな?)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ