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ルート2 魔王は優しいらしいが、やはりイケメンに囲まれた



「恋愛するのが不安なら魔王ルートを選べばいいんじゃないかな」


 ウォーマが言った。


「魔王ルート? 恋愛ゲームなのに魔王がいるの??」

「うん、ただ攻略難易度は一番高いけどね」


 うーん。冒険もののゲームなら少しはやった事ある。だけど、女の子向けのゲームでいきなり難しい難易度をクリアできるものなんだろうか。


「でも、もし魔王ルートにいけたとしても、魔王と恋愛しなきゃいけないんじゃない?」


 僕は眉を下げてフワフワウォーマを抱きしめる。


 ウォーマは僕に頬ずりをしながら優しい声音で答えてくれた。


「そんな事ないよ。君が嫌だと思う事なら魔王はしないよ」



 ウォーマのまん丸いつぶらな瞳を見つめる。


「……そう、なんだ。魔王は優しいんだね」

「ふふふ、ソプラノちゃん大好き」


 僕が魔王を褒めるとなぜだかウォーマはフワフワの体をくすぐったそうに揺らした。



「ソプラノちゃんが恋愛したくなかったら、魔王と友達になればいいよ」


 無邪気にそんな事をいうウォーマを僕は優しく撫でた。





「ええ! 魔王ルートに行くには攻略対象キャラ三人に好かれないといけないの?」

「うん、それもあって魔王ルートは一番難しいんだよ」


 僕は学校に通う支度をしながらウォーマと話した。このゲームの世界にも学校はあるらしい。



「一人に好かれるだけでも大変だろうに、三人も……かぁ」

「だけど、ソプラノちゃんがその三人を好きになる必要はないから、恋愛する必要はないよ。三人の好感度を一定以上にすればいいんだ」


 女子の制服に手間取りながらなんとか着替えた。


「うーん。難しそうだねぇ」

「大丈夫だよ、ソプラノちゃんには僕がついてるよ」

「ありがとう、ウォーマ」


 玄関を出ようとして、ウォーマが僕の肩に乗ったままなのに気づく。


「ウォーマ、今から僕学校に行くから」

「僕の体はソプラノちゃん以外見えないから、僕も学校に行きたいな」


 そうなのか……。ならついてきてくれた方が心強いなと思いウォーマとともに学校へと向かった。



 入学式。


 校長先生が魔法を使って『ようこそ、新入生』と空中にカラフルな文字を書いてくれた。


 文字も会話も日本語だ。わかりやすいからいいけど不思議だ。

 このことを後でウォーマに言ったら翻訳機能付きだからねと得意げに教えてくれた。


 でも……魔法があるのか! この世界。

 まぁ魔王がいるんだから魔法もあるんだろうけど。嬉しい驚きだ。


 もしかして授業で魔法を習えたりするんだろうか。わくわくしてきた。




 だが、そんな高揚感もクラスに入った瞬間、一気に凍り付いた。



 僕のこわばった表情に気づいたウォーマが「ソプラノちゃん?」と心配そうにしている。



「では、今日は自己紹介と一年間の授業の流れを簡単に説明して終了です」


 青い髪色の優しそうな男の先生がそう言って、自己紹介が始まった。



「ルビーです。将来は勇者になって魔王を倒したいです。特に苦手なことはなく何でも得意です。友達たくさん欲しいです。よろしくお願いします」


 ――赤髪のイケメンだった。前の世界で僕をいじめてきたリーダー格の男だった。



(なんで? 違うゲームを選んだのに)


 僕は自分の指先が震えているのに気付いた。




 しばらくして、また聞き覚えのある声がした。


「ライトです。体を使う事が得意なので、剣士や弓使いを目指したいです。他にも面白そうなことあったらガンガン試すつもりです。皆、よろしく」


 相変わらず高い身長で、金髪を細い紐でポニーテールにしている。



 少しして、やはり見慣れた姿が席を立った。よりによって隣の席だ。


「アースです。召喚士やシーフなどに興味があります。自分のペースでやれる事が好きです。寝たり、のんびりするのが好きです。あと、ルビーとライトとは前世からの友達です」


 そういって茶髪のイケメンはたれ気味の目でウインクして見せた。


 クラスメイトは冗談だと思ったらしく、特に女の子達の笑い声が教室に響いた。





 ………………なんで。

 なんで、皆いるんだよ。



 せっかく、なんとか恋愛ゲームをやってみようとやる気になってきたのに。


 教室という空間にこの三人がいると嫌な記憶がフラッシュバックしてくる。



「えーと、次はソプラノさん。……ソプラノさん?」


 先生の声で意識が明瞭になる。


「あ、はい。ソプラノです。魔法が面白そうだなと思います。まだ全然わからないことだらけですが、皆さん仲良くしてくださると嬉しいです」



 なんとか、それだけ言って着席する。

 ふと視線を感じて周りに意識を向ける。クラスの男子やイケメン三人組がこちらを凝視していた。



 ――――もしかして、僕だってバレた?


 三人組と違って容姿も性別も声も変わったのに、気づかれたんだろうか。



 ドキドキと心臓が早鐘をうっている。


 ウォーマが心配そうに僕に体を擦り付けてくれているのに、僕の体は小刻みに震えていた。


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