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ルート18 僕はライトに抱きしめられながら光の魔法を使った



「――何?」


 ライトが僕と視線を交わしながら言った。


 僕は周りにいる女の子たちを避けライトのすぐ前に立つ。


「ライト君、私にも光の魔法教えてください」


 勇気を出して僕にしては、はっきりとした口調でライトに申し出た。



 女の子たちは少し遠巻きに僕たちを見ている。


「さっき、ルビーに教えてもらってなかった?」


 背の高いライトは長い腕を組んで僕に問いかける。


「ライト君に教えてほしい」


 僕はライトから目をそらさず、そう言った。さすがに心の中でルビーにごめんと思いながらも言った言葉に後悔はしていない。


 僕は周囲でこちらの様子を窺っている女の子たちをくるりと見回す。皆元気ではつらつとしたライトの好みそうな子ばかりだった。

 こんなに周りに女の子たちがいるんだ。僕から動かなきゃ、きっとライトとは何も始まらない。


「ふぅん。俺に教えてほしいの?」

「うん、君に教えてもらいたい」


 試すようなライトの言葉に僕はキッパリと言った。



 ライトは少し下を向きニッと笑った。


「オーケイ。じゃあ二人きりで教えてやるよ」


 そう言ってライトが他の女の子たちに視線を送る。何人かの女の子はそれで自分の席へと戻って行った。


「手、貸してみ?」


 ライトは少しかがんで、僕の背中側から僕を抱き込むようにして僕の左手を自身の手でとった。

 暖かい体温とトクトクトクというライトの心音が僕の背中から伝わって聞こえてくる。


 僕たちを囲んでいた女の子たちはその様子を見て少し悔しそうな顔をした後、各々のグループの元へと去っていった。


 ライトはそんな周りの様子が何も見えていないような素振りで僕の耳元に自分の口を近づけてきた。

 ゆっくりとかすれた低音が耳の奥に注がれる。


「目ぇ、閉じて」


 僕はその声に従って目を閉じる前に、まだわずかに残っていた周りの女の子たちが何かを察したように散り散りとどこかへ行くのを見た。


「俺の声だけ聞いとけよ」

「う、うん」


 僕は視界が暗闇の中、僕の手首を握っているライトの骨ばった手や背中に当たるライトの身体を意識しつつ答えた。


「真っ暗の中で光が溶けてくるの想像して?」

「――うん」


 暗闇の中に光がポツンと上から降ってくる。その光は水のように広がって僕の体に浸透してくる。


「光はあんたの体を包みこんで、あんたはそれを気持ちいいと感じるはずだ」

「包み込む」

「そう今から身体を包み込む。――気持ちいい?」


 そう言ってライトはぎゅうと僕の体をだんだん強く抱きしめてきた。僕の身体にライトの体温が溢れてくる。


「ライト君、気持ちいいよ」


 僕が言うと少しライトの身体はビクッとこわばった気がした。


「つっ、なら良かった。じゃあ今度は俺が握っているあんたの手にその光を込めて」

「光を込める」

「そう」


 僕は抱きしめてくるライトの体温に安心しながら光を想像した。


 とたん、瞼ごしに鋭く光が生まれた。


 瞑ったままの目をゆっくり開けた。ライトの細長い指で包まれたままの僕の左手から光がらんらんと輝いていた。



「すげぇ、無詠唱じゃん」


 ライトが素直に驚いたような声を出した。



 僕も光を見つめたまま驚いていた。

 適正魔法のライトはともかく、あのルビーでも光魔法は詠唱して使っていた。

 適性のない魔法では難しいと噂の無詠唱だが、まぐれにも僕はできてしまった。



 僕はしばし感動した後、くるりとライトの方へ顔を向けた。そして、さっきから気になっていた事を聞いてみた。


「こんな事他の女の子にもしたの?」

「は? する訳ねぇだろ」


 僕の問いに呆れたようにライトは言った。


 僕はライトの顔をじぃと見上げた。

 僕の納得してない気持ちがライトにも伝わったのか、彼はため息をついて少し早口で答えた。


「誰にでもするような事じゃねぇよな?」

「は、はい」


 それはそうだと、僕は今度こそ納得した。



 ライトと二人で教室の方に向き直ると、すごい顔でこちらを見ているルビーと笑顔だがどす黒いオーラを放つアースがいた。

 男の人にしては華奢な先生がニコニコとこっちを見ていて、ジタバタともがくルビーとアースを光の魔法らしき輪で捕まえていた。


 ライトは彼にしては珍しく先生へ「ありがとうございます」と丁寧にお礼を言い、先生は「いーえ、青春ですね」とそれに答えた。



 僕はさすがに今回は、魔法を教えてくれたルビーに申し訳なかったなと思ったが、前の世界の事を思い出して、まぁこれくらいはいいかと思い直した。


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