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ルート16 剣の特訓と二の腕の触り合いっこ


「はい、振りかぶっておろす!」


「は、はい!」


 僕は長身金髪ライトの指示に従って剣を握った。



 どっか行くかというライトの提案にすぐに答えを言えなかった僕。それを見てライトは「じゃあ剣の振り方を教えてやるよ」と言ってくれた。

 ライトが通っている道場が休みの日の放課後、ライトと僕は運動場で居残り特訓をしていた。



 ――なんだけど。



 さっきから剣を振っても振ってもへなへなと変な方向に曲がってしまう。


 ライトはそんな僕にため息を吐いて言った。


「ったく、ルビーも少しは教えてやればいいのに」



 そう言って指導しながら見てるだけだったライトは僕に近寄ってきた。


「腕触っていい?」

「う、うん」


 僕が所在なさげにそう言うと、ライトはぐいっと僕の体育着を引っ張り上げた。


「わ」


 僕は声を上げる。


 ライトは自身の片手で僕の腕を持ち上げながら、もう片方の手で僕の二の腕を軽く掴んだ。


「や、柔らけー。……ソプラノあんた筋肉なさすぎ。あんま重いもの持ったりした事ねぇだろ」


 うっ。図星をつかれて僕は下を向いて黙り込む。



 ライトはそんな僕を見ながら首に手を置いて、しばし考えて言った。


「じゃあ、まずは基礎訓練な。腕立て伏せ、俺も一緒にしてやるから」

「うっ、うう、はい。お願いします」


(な、情けない――)


 女の子の体ではあるものの、ライトに手取り足取りと教えてもらっている。男だった前の体でも、少し骨っぽいだけで似たようなものだ。




 すぐにバテてしまった僕の横で、ライトが軽々と腕立て伏せをしていた。

 僕がびっくりして褒めると、ライトは自慢げに片手や指の力だけでも同じようにやって見せてくれた。


 おお、すごい。



「えー、なんでそんなにできるの?」

「まー、鍛えてますし?」


 ふふん、とライトは得意げに胸を張る。ライトの一つに括った金色の髪が揺れる。

 努力の証という奴か、カッコイイなぁ。純粋に男心としては、羨ましいし憧れる。


「そっかー。あの、えーと、私もライト君の腕触りたいな!」

「あ? ああ、別にいいけど」


 長身を反らして少しだけ戸惑った後、ライトはその場に座り込み、腕をまくって僕に見せてくれた。


 程よく焼けた体が引き締まっている。


「か、カッコイイ~~!!!」


 僕は素直に称賛して、ライトの筋肉にくぎ付けになった。

 そうして、僕はライトの近くに膝立ちになり、グイと近づいた。


「え、ちょっと、おい」


 ライトが金色の髪を揺らし戸惑っているのがわかったが、僕はそのままライトの二の腕に手を伸ばした。ライトの片腕を両の手で揉みしだく。



 ――もみもみもみ。



(すごい! 固いぞ!! 思ったよりも固い!)


 鍛えたらこんな風になるのか。



 ――――もみもみもみもみもみ。



 僕がしばらくその弾力に夢中になって揉んでいると、ライトが呻いた。



「ちょっと、ソプラノ。もうやめろ」


「え、もう少しだけ」


 僕は普段触る事のない他の人の筋肉に心をすっかり奪われていた。だからライトの耳が少しだけ赤いのも、呼吸が浅いのも気にならなかった。



「~~~~~っ。あのなぁ!!」


 長身で金髪をポニーテールにしている男は僕の方にそむけていた顔を向け、鋭く目元を光らせた。

 そうして素早く僕の体を両手で捕まえると、ライトは僕の両腕に手を這わせた。


「わ、な、何?」


 びっくりした僕をよそに、ライトはそのまま手を動かし続ける。


 いつもは背が高く痩せぎすで、細長いとしか思わなかったライトの上半身が目の前にある。

 整った小顔の下には大きい喉仏と、少し汗が光る首筋が見える。



 胸元も運動着ごしだが、程よく引き締まっているのがわかる。


 男の人の体だ。


 元居た世界のひょろがりで小さく中性的だった僕の体とは違い、細身ながらしなやかな筋肉でできている。


(ふわぁぁぁ)


 すごいなぁと見惚れた。すると、ライトの細長い指先が僕の両腕を優しくふにふにと触った。だから、僕の意識はどうしても自分の二の腕に集中した。


 優しく揉まれマッサージをされているみたいで気持ちいい。だけど目の前には綺麗に鍛え上げられたライトの体があり、尚且つ両の手で僕の体をとらえられている。肉食動物の前にいる小動物のような気分になってきた。

 僕の腕をやわやわと形を確かめるように、とてもゆっくりと丁寧に揉みしだかれる。



 くらくらとして耐えられなくなってきた僕はライトに声をあげた。


「あ、あのライト君。もう、離して?」


 ライトは僕の顔を細めた目で見る。彼の目の奥底が少し熱っぽい。


「な? わかっただろ?」


 そう言って、僕の体を離そうとしてくれた。



 何がわかったというんだろうか? 

 そう思ったが、僕は力が抜けて崩れ落ちてしまいライトの体に、くてんと自分の体を預けてしまった。



「ちょ、ちょーーーーーー!!」


 ライトが勘弁してくれという風な声を上げる。


 僕は脱力してライトの首筋に顔をうずめ、密接した彼の固い体の感触を楽しんだ。



(いい筋肉だ。羨ましい)


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