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ルート15 友達になりたい僕と魔法の小瓶を受けとめる彼



「私と友達になってください!」


「はぁぁ?」



 僕が勇気を出して言った言葉にライトは“何言ってんだコイツ”というような顔をした。


 ライトと談笑していたルビーがバンッと近くにあった机に手をついた。

 ルビーはズカズカと少し乱暴な動作で僕の方にやってきた。すると僕の両手を自身のそれで優しく包み込んだ。

 ちょ、やめ。さ、触らないで。


「ソプラノちゃん。こんな奴に時間を使うなんてムダムダムダムダ!」


 そうして僕をじっとりと目を潤ませて見つめてきた。


「それよりこの間、甘くて美味しいお菓子が売ってる店見つけたんだ。今度一緒に行こう?」

「え、ええ!? ちょ、ちょっと待って今ライト君に話してて」


 僕が口をひきつらせてライトの方に顔を向けようとすると今度は茶色のたれ目と目があった。


「ソプラノさん、どうしたの? いきなり。話し相手がほしいならライトなんかに頼まなくても俺がいくらでも相手をするよ?」


 アースは茶色の髪をふわりとなびかせ、艶のある優し気な顔でそう言った。

 口調もいつも通り穏やかだが、なんだろうか。妙に雰囲気が怖いのは気のせいだろうか。




「お前ら、ややこしくすんじゃねぇ」


 ライトはそんな二人を呆れた目で見ると僕に向き直った。


「何あんた? 女子にでもいじめられてんの?」

「え、ええ!! そんな事全然ないよ! みんな優しいよ!」


 僕は慌てて、体の前で両手をふり否定する。


 この目立つイケメン三人組と接しているため、たまに嫉妬をされる時もある。

 だけど直接的な被害はないし、元が男だったためか特に女の子に怖いと思う事はない。

 ほとんど優しく好意的な人ばかりだし。



「ふぅん? まぁ、別に友達になってもいいけどさー」

「ありがとう!」

「あーもーだから、わざわざそういう事、口にすんなよ。恥ずかしい」


 シッシッと手で追い払われてしまった。





「ウォーマ、どうすればライトの好感度あげられるんだろ。難しいよ」


 僕はウォーマと一緒に今日の反省会をした。

 ベッドの上でウォーマと体をくっつける。


「ソプラノちゃんが最初に言ってた通りサバサバしてるね」

「そうなんだよねぇ。いちいち悩む僕とは正反対だよ」


 うーんと僕たちは考え込んだ。


「とにかく仲良くなるには友達にならないとって思ったんだけど、失敗だったかなぁ」

「そんな事ないよ! ソプラノちゃんが行動したのは良い事だよ!」

「ウォーマぁ、ありがとう!」


 そんなこんなでウォーマと寝るまで話し合ったが、特に解決策も出せずに終わった。

 だから次にライトに話しかけられた時はあっさりとしていて、悩んでいたのが少し馬鹿らしくなった。



「どっか行く?」 




「え?」


 僕は小さな魔法研究室を掃除していた手を止め、話しかけてきたライトを振り返った。


「友達になりたいんでしょ。ならどっか遊びに行くなり、なんなりしたいって事じゃねーの?」


 ライトの金色のポニーテールがさらりと揺れた。


「あ、うん。そうだね……。でも、なんで私がここにいるってわかったの?」


 学校ではクラス全員が、それぞれ掃除場所を割り当てられている。僕が掃除しているこの場所は滅多に人が来ない。

 一人で担当できる場所だったのでお気に入りだ。ウォーマとも話せるし。



「探したから」

「探してくれたの? ありがとう」


 またしてもあっさりと答えたライトに僕はお礼を言った。

 わざわざ探してまで、僕に話しかけてくれたのか。



「こういう時じゃないとあんたとあんまり話せないしな。ルビーや、最近はアースまでなんかうるせーし」


 そこで区切ってライトは背の高い体をこちらに近づけた。


「つーか、いちいちお礼言わなくていいから」

「え、あのごめんね」


 不快にさせてしまったのかと僕は謝る。



「だ~か~ら~」

 腰に手をあてながら口を開いたライトと目が合う。僕はたじたじとライトの顔を見つめながら後ずさった。


 ――その時だった。



 僕の体が、掃除をするために開けていた棚に当たった。棚の中からカツンと小瓶が当たる音がして僕は青ざめた。



(あ、まずい、落ちる――!!)



 僕は嫌な予感に思わず目をつぶり体をこわばらせた。


 すると、僕以外の体が素早く動く気配がした。予感していた小瓶が落ちる音もしない。



(――――――――?)


 目をゆっくり開けると、棚の側で身を固くした僕に覆いかぶさるようにライトが立っていた。


 密着しているライトの左手に目線を移すと細長い指の中にいくつか小瓶が収まっている。



「あ、ありがとう。ライト君」

「おう」


 小瓶が落ちることに緊張したせいか、ドキドキドキと心臓の音が鳴る。


 僕に体を寄せたままライトは器用に左手で小瓶を棚に並べている。



 ライトは棚に手を伸ばしたまま、少し気まずそうに言った。


「さっき言ったの悪かったな。そういうお礼言ったりとか? それ、あんたの良いトコだよ。俺がいちいち言葉にされるの照れくさいだけ」


「そっか」


 僕はライトの細長い体を見ながら言う。


「そう」


 ライトもそれに答えて言った。


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