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ルート14 一分間の手つなぎと好感度



 僕の手を握ったままアースは言った。


「ここまでくれば大丈夫かな?」


 公園を出口側から抜け、人通りの少ない裏道へと出た。


「びっくりしたね。あれルビーだったよね」

「そうだね。こんな所を一人で歩いているなんて暇なのかな?」


 なかなか失礼な事を言い放つアースに苦笑した。

 アースは握ったままの手を眺めていた。


「手、離したくないな。……このままじゃダメ?」


「あ……。え!?」


 そんな事を言われるとは思わなかったので、僕は動揺して素っ頓狂な声を出した。


「ふふ、嘘だよ。繋いだままだと歩きにくいし」


 そう言っていつもよりきつい目をしながらアースは僕の手を離した。

 そうして僕たちはゆっくりと歩き出した。



「あ、あの、ごめんね。私デートするの初めてだから何すればいいのかよくわからなくて」


 なんとなく沈黙が気まずくなり、僕は言い訳のように一人ごちた。

 少し間ができる。




「……。俺も初めてだよ、デート」


 さらりとアースは言った。



「え、ええ!! 嘘!!」

「本当」

「嘘だよ!! だってアース君かなりモテるよね!?」

「そっちこそ、モテてるじゃない」



 僕とアースはお互いの顔を見ながら言い合う。


「嘘ぉ」

「本当です」


 ……。

 前の世界では彼女の話しないなぁと思っていたら、本当にいなかったのか。

 びっくりだ。


「気遣い上手で優しいのにどうして」

「だからそっちこそ……。別にタイプの子がいなかったから付き合わなかっただけだよ」

「へー! 理想高いの? もしかして」

「……。そうかもね?」


 わぁ。意外だ。

 そっかー、そうなのかー。人は見た目じゃわからないものだなぁ。

 なんだか面白くなって僕は「あははは」と笑った。

 アースも目元を緩めて柔らかい笑顔でこちらを見ていた。


「あのさ、やっぱり手握ってもいい?」


 アースが大きい掌を差し出してきた。


「! えと、じゃあ、緊張するので、一分だけ」


 僕はぎこちなくアースの手を握った。


 ドキドキしながら心の中で数を数える。



 なんとなく恥ずかしくて前だけを見ながら一歩一歩、歩く。

 アースと手を繋いだ一分間は長いような短いようなとても印象に残るひと時だった。


 それから僕らはアースが貸してくれた本について話したり、挟んだお互いのメモについて話したりした。


 夕暮れ時になり家まで送ると言うアースを丁寧に断り、ウォーマを肩に乗せ歩いて帰った。




「ふわー、緊張した」

「お疲れ様、ソプラノちゃん」

「ありがとう、ウォーマ」



 初めてのデートでヘロヘロになった僕は部屋の中でくたりと横になった。

 しばらくウォーマとゴロゴロとする。


「ソプラノちゃん、そろそろアースの好感度見てみない?」


 僕と同じく横になっている可愛いフワフワにそう言われる。



 初めてルビーの好感度を表す映像を見てからというものの、怖くて今までチェックしていなかった。


 しばし悩んだ後、僕は映像を見ることにした。


(好感度足りてるといいけども)


 茶色の髪で少したれ気味の目をした男は、やはり気持ちが掴みにくい。


(悪くはないかもしれないけど、好かれているという実感もよくわからないな)



 そうしていると、いつの日かと同じように突然僕の視界の前に男の姿が現れた。

 以前と違うのは赤髪ではなく茶髪の男というトコロだ。


(うぅ。やっぱり本物みたいだ)



 ウォーマがトコトコと映像の前に移動する。


「アースはソプラノちゃんをどう思ってる?」



 ドキンと僕の胸が鳴った。

 怖いなぁ。自分がどう思われているのかわかるのは便利だが怖い。


 茶色の髪の男は言った。


「俺、あんまり自分の事話すの得意じゃないんだけど」


「あわわわ、ごめんなさい」


 僕は茶髪のイケメンに思わず謝る。映像なんだろうけど、やっぱり本人がいるみたいだ。


 茶色の髪の男は少し考えて話し始めた。


「そうだね、俺潔癖性なんだけど、あの子はなぜか触っても平気。っていうか、むしろ触りたくなるんだよね」


 ふむふむ、と僕は思った。そういえばこのたれ目がちな男は潔癖症だったなぁ。

 友達とは仲良くするし皆に好かれてもいるけど、どこか人と距離を置いている風だった。

 そういうのもあって彼女を作らなかったのかも。想像だけど。


「これ、まだ話さないといけない?」


 茶髪の男は怪訝そうに言った。


「も、もう少しお願いします」


 僕は慌てて言った。これ本当に映像か。本人じゃないの?


「あとは、俺否定されるの怖くてデートの誘いも手を繋ぐ時もはぐらかしたけど」


 そっか。アースも怖いって思ったりするんだな。




「彼女の方からやっぱりデートに行こうって言ってくれたのは嬉しかったな」


 …………。

 喜んでくれているのは嬉しいけど攻略のために誘ったんだよなと思うと、ふと複雑な気分になった。


「ソプラノさんといると気持ちが落ち着くし居心地いいね。緊張しやすいところも見ていて面白いし。多分相性は悪くないんじゃないかな」


 僕と似たようなこと考えてたんだな。


「緊張といえば、一分間だけ手を繋ぐっていうの、すごくキュンときたね。あれは反則というか、可愛すぎ。本当は手離したくないし、なんなら抱きしめたかったな」


「わわ、わーーーー!!」


 突然恥ずかしいことを言い出したアースの映像に僕は慌てふためいた。

 う、嘘でしょ。そんな事思ってたの。全然気づかなかったよ。


 そうして最後にアースの映像はこう言った。


「可愛いよね、彼女。本気で付き合いたいと思ってるよ。ルビーが狙っているみたいだけど、負けるつもりはないね」


 つっ。好意をストレートに聞いて僕は顔が赤くなるのがわかった。



「思った通りアースはもう十分好感度あがってるね」


 ウォーマがちょっと不機嫌そうに言って映像を消した。


「ルビーもアースも十分攻略できているから、あとはライトだけだよ! ソプラノちゃん」


 一瞬少し寂し気に見えたウォーマはフルりと体を振って元気よく僕に抱きついてきた。



 うん、あとはライトだけだ! 頑張ろう!


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[一言] アースとソプラノの初々しさに萌えた
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