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ルート1 ここから始まった~歪んだイケメンたちに僕は狂愛される~ 

挿絵(By みてみん)


「あれ、ゼツボーの名前ってなんだったっけ?」

「さぁ、背低くて運動出来なくて、要領悪い奴の名前なんか忘れたわ」

「まぁ、そんな絶望すぎるやつだから、俺らがゼツボーってあだ名つけてあげたんじゃん」


 イケメン三人組はいつものように僕をいじめるために集まってきた。

 ほっといてほしいのに、なんで僕の事嫌いなくせに僕の事かまうんだろう。


(ああ――事故でも起こって死ねたらいいのに)



 そう思った刹那、僕の目の前はいつものクラスの教室ではなく宇宙空間が広がっていた。


「あ? なんだよ。これ」


 三人の中でも一番リーダー格の赤髪イケメンが声をあげた。


「え、なになに? どういう事? 宇宙? 意味わかんね」


 金髪を括りあげた、三人の中で一番背が高いイケメンが困惑する。


「んー? どういう事だろね」


 優し気なたれ目で三人の中で一番マイペースな茶髪イケメンが面白そうに笑った。




「あなた達は死にました。ここに二つのゲームがあるので好きな方を選んでください。選んだ方のゲームで第二の人生を送ってもらいます」


 姿が見えず宇宙空間に声だけがこだました。


「ゲーム?」


 僕はぽつりと呟いた。ゲームは好きな方だ。わけがわからない状況だが興味はある。


 三人組もゲームと聞いて浮足立った。



「あ、マジだ! ゲームだ。へー、面白そうじゃね?」


 赤髪がさっそくどこかから見つけてきたのか両手にソフトらしきものを持っている。


「見せて。あー、魔王を倒す冒険ファンタジーもの? これやろうぜ」


 金髪ポニテ男が片方のソフトを手に取る。


「こっちは恋愛ゲームもの? 多分女の子向けっぽいね」


 茶髪たれ目がもう片方のソフトを見てそう言った。



 それを少し離れたところから眺めつつ、僕は考えた。

 第二の人生か。今度はもっと運動出来て、要領よくできる人に生まれたいな。


(でも、ゲームかぁ。どんな感じなんだろう。魔法使ってみたいけど、シーフになって宝箱空けたり、剣士になって空中で回転して敵を切ったりしてみたいなぁ)


 そんな風に妄想を働かせていた僕に「ほいっ」とソフトを赤髪が渡してきた。


「え、恋愛ゲーム? これ女の子用だよね」


 僕は、ソフトに目を落とす。目がこれでもかというくらい大きい美少女の後ろに四人のイケメンが描かれている。妙にキラキラしたパッケージだ。


 三人組はニヤニヤ笑っている。


「この魔王倒すゲームちょうど三人までしかプレイできないからさ」

「俺らこっちのゲームするから、ゼツボーそっちやってよ」

「じゃ、俺ら行くから。次の人生もうちょっとまともに生きれたらいいね」


 ぎゃはははと三人は爆笑する。


「え、僕もそっちのゲームやりたい!」


 僕が三人に声をかけると同時に、彼らの姿は消えていった。

 後には、三人が僕を馬鹿にする笑い声だけが響いていた。




「嘘……」


 置いて行かれた僕は急速に意識が遠のいていった。




「ソプラノちゃん、ソプラノちゃん大丈夫?」


「え――ソプラノ?」


 僕の事をソプラノと呼ぶ丸くて白いフワフワした小動物が目の前にいた。


「か、可愛い」


 白いフワフワを思わず両手で包み込んだ。


「そんなことないよ、ソプラノちゃんの方が可愛いよ」


「え、いや僕男だし――あれちょっと待って」



 僕はピンクを基調とした女の子らしい部屋を見回す。

 そして鏡を見た。


「わ、うわー。女の子だ。僕、女の子になってる。いや、女の子だから僕じゃなくて私って言った方がいいのかな」


 宇宙空間も非現実的だったけど、姿が女の子になっていると、より衝撃的だった。


「確かにソフトの女の子こんな姿だったなぁ」


 ピンクのセミロングの髪に大きな金色の目。上下ピンクのモコモコのパジャマらしきものを着ていた。性別だけでなく容姿まで大きく変わってとても不思議だ。


「ソプラノちゃん、僕はウォーマって言うんだ。このゲームの君のサポート役だよ。わからない事があったら何でも聞いてね」


 そう言ってウォーマはぴょんと僕の肩の上に乗った。



(ひえ~~なんだこの可愛い生物は)



 イケメン三人にゲームを押し付けられた時は不安だったけど、案外楽しい。フワフワのウォーマに会えただけでも、幸せだ。ゲームだからか、女の子になったのに思ったほど違和感はないし。


 でも――。



 僕は口をへの字に曲げた。

 どうしたの? とウォーマが心配そうな声を出した。


「うーん、僕もとは男だから恋愛ゲーム楽しめるか不安だな」


「そうなの!? それなら、どうしてソプラノちゃんはこのゲームに来てくれたの?」


 ウォーマの問いに僕は苦笑しつついじめられていた事を話した。



「死んでまで馬鹿にされて、情けないよね、僕」


 体育座りをして膝に顔を押し付ける。


 すると、ウォーマの泣き声が聞こえてきた。


 慌てて顔を上げる。


「ど、どうしたの? ウォーマ」


「ソプラノちゃん。辛かったね。ううっ。ううっ」


「泣かないで。ウォーマ」


 そう言いつつ、僕もなぜか涙が出てしまい、最後にはウォーマと一緒にわんわん泣いていた。


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