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戦闘準備……3

 夜国の心眼……激戦を一人で戦い抜いた孤独の心眼、しかし、そんな強き存在は両目を失い、夜国から姿を消した。


 だが、心眼の夜夢が夜国に舞い戻ったと間者から、夜王──静夜に報告がいく、それは正に驚きを隠せる物ではなかった。


「主、異国の者の仲間に、夜国の英雄……心眼の夜夢の姿あり、その力、衰えておらず」


「なに、心眼だと、そうか、夜国は更に勝利に近づいた。夜国の英雄が舞い戻り、更に傀動老師である百仮殿達が、風国に向かってくれた、実に素晴らしいではないか!」



 そんな嬉しさが体外に溢れ出す静夜に対して、夜島が落ち着くように願い出る。


「静夜様、落ち着いてください。今は過去の英雄に魅了されている時間は御座いませんぞ、まして、夜国から逃げ出した存在に対して、恩情など……必要ないかと」


 夜島の言葉は単純に夜夢を歓迎、出来ないと言っているように聞こえる静夜は、悩ましい表情を浮かべる。


「失礼致します。早急にお知らせしたく、参りました」


 そんな最中、大牙達が静夜に会いたいと言っていると、見張りの兵から、急ぎの報告が入る。


 扇子(せんす)を広げ、軽く扇ぐ静夜。


「ほう、世に会いたいと? 面白い、案内してよい。心眼の夜夢が本物ならば、世も会って話がしたいからな」


「静夜様!」


 慌てる夜島、しかし、扇子を“パシャリ”と閉じる静夜は静かに笑って見せる。


「夜国は、彼等と同盟となり、進んでおる。すべてを疑い、器の小さき国と世が愚かしくみられる事を望むならば、その口から、語り続ければよい、どうじゃ、夜島よ?」


「……わかりました、ですが、話し合いの席に、どうか同席を御許し願います」


「わかった、しっかりと世を守ってくれ、夜島よ。信頼しておるぞ」


「御意、この夜島、命にかえて、御守りする事を誓います!」


 静夜は、話し合いの為に四方に繋がる広い部屋を用意する。


 最悪の場合を想定した選択であった。


 もしも、氷雨達が謀反(むほん)を企んでいた際に、即座に逃げられるようにと考えられたその部屋は、四方向に部屋が二部屋づつ列なっている。


 隣の隣にある部屋には、腕に覚えのある家臣と二十人ばかりの兵が各部屋に待機する。


 そんな話の準備が出来た部屋に氷雨、大牙、紅琉奈、夜夢の四人が兵に案内されてやってくる。


 室内には、静夜が奥に腰掛け、夜島と夜城の梟の長である老人、更に四人の家臣が静夜を守るように腰掛けている。


 室内に入って直ぐ、眼を布で隠した姿の夜夢が一周するように室内を見てから軽く微笑んで見せる。


「随分と警戒しているんですね?」


 訛りのなくなった夜夢の言葉、夜島が即座に立ち上がると鞘に手を掛ける。


 ざわめく最中、夜島が声を張り上げる。


「貴様は誰だ! 俺の知る、夜夢はそんな口調なんか、使わない! 何者だ!」


 夜夢はその言葉に対して、軽く頭を下げて見せる。


「生きていれば、語り方は変わりますよ……夜島。久しいのに、相変わらずの堅物ですね?」


 夜夢の言葉に対して、夜島の鋭い視線が向けられる。


「俺を(たばか)るな、夜夢は、酷い訛りでな、それに……報告によれば、姿は同じであれど、肌の色が異様と聞いているぞ」


 その言葉に、夜夢と夜島が互いに視線を合わせる。


「なら、この場で私が夜夢だと証明しましょうか?」


「どうやって証明するつもりだ!」


 夜島は、夜夢が夜夢であると信じる気は無く、既に敵として、斬り掛からんとしていた。


 そんな夜島に対して、夜夢が一歩前に踏み出す。


「簡単です。私と貴方で簡単な手合わせをすれば、貴方なら、私を理解出来るでしょうから」


 そう言うと、夜夢は、隣の部屋の(ふすま)を勝手に開く。


 静夜は、それを許可すると、よく見えるように襖が外される。


 静夜を守るように家臣達が前に移動する。


 そして、夜夢と夜島が睨み合う形になり、二人の背後から、静夜が組手の合図を出す。

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