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夜国の梟と巨城の王……2

 真夜中の月明かりに照らされた巨城、不気味な程に美しい黒で塗られた城壁、天守に上がるに連れて、輝きが増していき、城全体が芸術作品であろうかと、見いってしまう程である。


 夜城の梟、皆が巨城に両手を合わせ頭を下げる。


 先頭を歩く老人は城門に向けて歩きだし、深く巨大な掘りに掛けられた橋を渡り、渡った先に存在する城門まで続く長い坂を登っていく。


 坂には多数の(くぼ)みが存在しており、敵が坂まで来た際に迎撃する為のものだろう。


 防衛力の高さは、炎国でみた城を遥かに越えていると言える。


 隣国から隠れるようにして国を閉ざした夜国、しかし、予想だにしない夜国の姿に黒雷の面々と氷雨達は、驚きを露にしてしまう。


 そんな驚きを掻き消すように、動き出すカラクリ扉、八メートルの巨大な扉が“カタカタ”と、歯車の回転音と共に動きだし、全ての者を城内に招き入れるように風が城門の内部に吹き込んでいく。


 完全に開ききった城門の内部には、出迎えだろうか、大勢の鎧に身を包んだ兵士と、身軽な格好に短い短刀を装備し、顔を隠した集団が待ち構えていた。


 黒雷の面々が、息を飲む。圧倒的な戦力が揃ったその漆黒に月あかりを反射させた巨城と言う名の要塞。


 雷国の黒雷と呼ばれた暗殺集団だからこそ、直感で理解する実力差が存在していた。


 鋭い眼光を照らす月を呑み込む程に黒い漆黒の集団。


 静まり返る空気、そんな空気を更にピリつかせる程の威圧感を放つ一人の男、漆黒の兵士達が一斉に道を開き膝をつく。


「よく来たな、百仮。それと雷国の暗殺集団に、水国のじゃじゃ馬娘達よ」


 薄笑いを浮かべた男はそう口にしながら、百仮達の前に姿を現すと太く力強い両腕を組み、その場にいる異国の者達に視線を向ける。


「実に愉快な面子(メンツ)よな? 他国の集まり、烏合の衆、いや、未熟者の集まりと引率者と言うべきか?」


 男の言葉に空気が変わる。


 黒雷の団員達が拳を握り、必死に歯を食い縛り、男の言葉に耐えていく。


 しかし、男はその光景に対して、大きく溜め息を吐く。


「はぁ、誰一人動かぬか、拍子抜けだ。まあ、いい──」


 男が喋り続けようとする最中、銀大が前に出る。


「さっきの言葉、取り消せや? 姐さんの前だからよぉ、黙ってたが……いい加減、耳障りだ」


 銀大の言葉に男は、不敵に笑ってみせる。


 互いに睨み合う両者、誰もが一触即発の状況である事実を理解していた、が……誰一人、漆黒の集団から動こうとする者はいない。


「言うじゃないか? ならば、力を示せ……退屈させるなよ? 退屈だと感じたら直ぐに殺してしまうからな、我が名は夜島……夜国の支配者なりッ!」


 夜国の王と名乗らず、支配者を名乗る夜島、その手には既に黒く禍々しい輝きを放つ刀が握られている。


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