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夜国の梟と巨城の王……1

 夜国の地に降り立つ黒雷の者達、夜国と雷国、両国は互いを軽視している。


 理由としては、夜国が大量の鬼に襲われた際に雷国が助ける事を拒んだ事実が存在する。


 夜国を襲ったそれは、鬼流と呼ぶには数が少なく、雷国からすれば、二百年前の雷国を襲ったそれよりも脆弱な物と判断し、自国で対応できると判断したからだ。


 その際に、雷国は難民が国内に入らないように国境を閉ざすという選択を行い、両国は、争いこそ、無かったが、完全に決別する道を歩むようになっていた。


 そんな夜国に、雷国の者達が足を踏み入れるのだから、覚悟が必要となる。


 警戒するように周囲を軽く見渡す百姫。


 最初に頭を下げた老人がゆっくりと歩みより、再度、軽く頭を下げると百姫に対して喋り掛ける。


「警戒されてますなぁ、雷国と夜国は確かに、決別の道を選択しました……しかし、傀動、鬼斬りからすれば、それは関係御座いません」


 老人はそう言うと頭を上げ、ニッコリとシワシワの肌で笑みを作り出す。


「雷国は、確かに国境を閉ざしましたが、夜国に向かう者達はすんなりと通し、頭を下げる者すらいたとか……

更に言えば支援の品を一部の方々が贈ってくださりました。すべてが悪とは、考えておりません」


 そう語ると老人は静かに再度頭を下げたのであった、


「あ、自己紹介がまだだったね、アタイは、黒雷を束ねてる百姫、落雷の百姫って呼ばれてるんだ」


「ほうほう、これは、これは、悪名高き、雷国の黒い(いかずち)を生きながらに見られるとは、本当に嬉しく思いますぞ、ささ、我等が城に御案内します」


 静かに草原から、山道に向かって歩き出す老人、その後ろをついていく百姫と黒雷の団員達、しかし、そんな老人の歩みは速い訳ではないが、不思議と追い付くのが必死になるような感覚に襲われていた。


「なんなんだい、間違いなく、普通の速度なのに、追い付けないなんて」


 百姫の言葉に皆が頷く、そんな一段の最後尾には、氷雨や大牙達が続いており、前方の様子を窺うように大牙が木に登り先頭の位置を確かめる。


 しかし、大牙が目にしたそれは、不思議な光景としか言えなかった。


 確認するように発した言葉に皆が驚きを露にする。


「百姫達が歩いてる道なんだけど、凄く歪んでるんだ、少し上がって、少し下がってを繰り返してる」


 百姫達は気づいていないが、夜城の梟のメンバーは皆、一歩に満たない上がりの際に歩く歩幅を大きく取っている。


 それが百姫達、黒雷が老人や、夜城の梟に追い付けない理由であった。


 それに気づいた大牙に対して、百仮が口を開く。


「よく気づいたな、夜国にはこのような地形が広がっている。それに気づくか、気づかないかにより、戦闘になった際に大きく戦況が変わる、覚えておけ、大牙よ」


 百仮はそう言うと、足早に先頭を歩く百姫に追い付くと、歩幅を合わせて進んでいく。


 百仮が老人に追い付くと、苛立ちを露にする馬黄が質問をする。


「なんで追い付けるわけ! おかしくない! 姐様もそう思わないですか」


「あ、ああ、だが、落ち着け馬黄、ついてくのが目的だ、追い越すのが目的じゃない」


 そんな会話を聞き、微笑む老人。


 夜城の梟の案内で城に辿り着くが、黒雷の面々は簡単な仕掛けに気づく事は無かった。


 山道を抜けた先に(そび)え立つ巨大な城、湖のような堀が存在し、高い石垣に防衛用の砲台が四方八方に無数に装備された城と言うよりも軍事要塞を思わせる作り、八メートルはあろう巨大な城門は歯車により、解錠などを行う、仕掛け扉となっている。


 門まで続く長い坂、すべてが、雷国や水国の城とは全くの別物と言えた。

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