空を流れる船、目指すは夜国……3
水国での戦い、雷国兵と水国兵を退けた黒雷と氷雨達は雲船に揺られながら、四日程、空の旅を続けていく。
空を移動する雲船に対して、対抗手段はおろか、追跡手段すらない雷国と水国は黒雷への追跡を断念した。
雲船は予定通りの進路を進み、四日の夜中に夜国を目前にした時、夜国の地から、雲船に向けて無数の光が誘導するように放たれる。
暗闇に出来る光の線、その先には、草原が広がり、案内に従うか否かに悩む百姫。
百姫は即座に氷雨達を操舵室に呼ぶと集まった面々に質問を投げ掛ける。
質問の内容は「夜国に連絡を取った物がいるか」と、いう物であった。
百姫は夜国との交流はない、それは黒雷の面々も同様であり、恨まれる覚えはあれど、歓迎される事はない。
夜国と繋がりがあるのは、氷雨と夜夢だが、氷雨も久しく夜国とは、連絡を取っておらず、更に夜夢は大牙の一部となっている状況だ。
そんな状況で、夜国が雷国に所属していた黒雷の雲船を歓迎するだろうか、そう百姫は考えていた。
しかし、そんな不安は不要と言わんばかりに百仮が声を出す。
「儂じゃよ。夜国に連絡用の鳥を飛ばしておいた、実にありがたい用意じゃ」
百仮はそう語ると、雲船の甲板に一人、移動する。
地上からも確認できる位置まで、進むと、月明かりに照らされながら、仮面を阿修羅の面へと付け替え、雲船の真上に円を作り出すと真っ赤に燃え上がる炎が包み込む。
まるで、真夜中を照らす太陽のような輝きを放つ。
百姫はその輝きを船内から確認すると直ぐに香南と香北に向けて指示を出す。
「聞いたし、あの輝きが見えるね! 直ぐに着陸用意、それと船内に向けて、武装確認、最低限で構わない! 何かあれば、直ぐに動けるようにしときな!」
雲船内部に指示通りの声がパイプから響き渡る。
大空から降りた雲船の周辺を夜国の者達が囲むようにして整列する。
そんな緊迫した空気の中、雲船の甲板から、百仮が地上に飛び降りる。
地上に足をつけた百仮に、一人の老人が頭を下げる。
「百仮様、よくぞ、御越しくださいました。我等、夜城の梟、心より歓迎致します」
夜城の梟と名乗る集団は雲船から降りてくる大牙達にも、頭を下げる。




