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空を流れる船、目指すは夜国……1

 水国での戦闘が終わり、大空を進む雲船、本来の目的地、夜国を目指して進んでいく。


 水国の港から船で移動しようと考えていた氷雨であったが、黒雷を仲間としたことにより、大空を自由に飛べる雲船での移動が可能となったのであった。


 そんな氷雨達を乗せた雲船では、小さな言い争いが起きていた。


 水国の兵士であった、慶水を信用できないと言うないようであり、黒雷の中で意見が割れていたのだ。


 そうなることは予想の範囲であり、百姫と五郎がまとめようとする。


 だが、更に裏切った馬黄をどうするかと言う内容で揉め事が少なからず起きていたのだ。


 すべてが保留とされる最中、慶水も馬黄も与えられた互いの部屋で項垂れていた。


「流石に待遇が良すぎる、捕虜でなく、本当に仲間にと考えてくれているのか……」


 部屋の外に見張りこそいるが、そこそこに広い室内で自由に出来る慶水は戸惑いを露にしていた。


 そんな慶水に与えられた部屋の壁から微かだが、“コン、コン”と、壁を叩くような音が聞こえてくる。


 好奇心だったのだろう、慶水は音のする方に向けて、ノックを返してみる。


 しかし、反応は返ってこない。


「やはり、気のせいですかね?」


 そう口にすると、慶水は壁から離れようとする。


 しかし、次の瞬間、再度、壁を叩く音が隣の部屋から響いた。


「誰かいるのか!」


 少し大きめな声でそう質問を投げ掛ける慶水。


 そして、返答が返される。


「誰かじゃない、私は……」


 そう答えたのは、馬黄であった。


 本来ならば、裏切りは、処刑されていてもおかしくない行為であり、黒雷では仲間への裏切りを赦さない、としていた。


「私だ、馬黄だ……お前らに雲船の位置を教えた張本人だよ……」


「あはは、そうでしたね、私より先に貴女は、この雲船に連れ帰られたのでしたね」


 壁越しに、互いの状況を語り合う二人、長く短い時の中で馬黄と慶水は小さな安らぎを得ていた。


 馬黄は、姐様と慕っていた百姫を裏切る形になった事実に涙を流れした。


 慶水はそのまま、静かに涙と共に語られる馬黄の話を聞き続けた。


 馬黄は、百姫を思い、水国、雷国と取引に応じたのだ。


 雲船には、利用価値があると判断していた雷国も雲船の異能者である香南と香北を生け捕りにしたいと考えていた。


 その結果、黒雷を無事に捕らえた際には、生きたまま捕縛すると言う約束を取り付けたのだ。


「だが、結果は最悪だ……私はすべてを失ったんだ……」


「すべてか、それは私も一緒ですよ。選択肢など、有りはしなかったのでね」


 顔も見れない両者が壁越しに笑う。


 そして、両者の部屋を百姫の部下がノックする。


 呼び出された二人が別々の方向に連れていかれる。


 その際、慶水は馬黄に向けて、静かに頭を軽く下げる。


 慶水の連れて行かれた部屋には、氷雨が椅子に座り待ち構えていた。


「悪いな、わざわざ来てもらって、だが、必要な事でな」


 扉を開いた慶水に向けて、そう語る氷雨、その横には五郎と大牙も居り、慶水も覚悟を決めたように頭を下げた。


「どのような用で呼ばれたのですか? 水国一の傀動と呼ばれた貴女の事だ、詰まらぬ内容で呼ばれた訳ではないと覚悟をしております」


 慶水の言葉に氷雨が、微かに笑う、すると隣の部屋に繋がる扉が開かれ、百仮が姿を現す。


(いさぎよ)いな、ならば、話が早いのぉ」


 ふざけた“ひょっとこ”の面を目の当たりにした慶水は黙ったまま、膝を床につく。


「よいよい、頭を上げよ、話がしづらくて仕方ないからなぁ」


 頭を上げる慶水、その後、直ぐに話し合いが開始される。

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